現代社会では、カスハラ(カスタマーハラスメント)が深刻な社会問題として広く認知されています。
「カスハラ対応マニュアルは本当に必要?」
「厚労省のカスハラ対応マニュアルって役に立つ?」
と自社に導入することを思い留まっている方はいませんか?
企業のブランドイメージの低下や従業員のメンタルヘルスへの悪影響を避けるため、カスハラへの対策が不可欠となりました。
現代社会でのカスハラによる被害規模は計り知れません。顧客対応にて一瞬の判断ミスをした結果、企業の存続を揺るがす事態にまで発展する可能性もあります。
本記事では、厚生労働省のマニュアルを参考にした『実務的なカスハラ対応マニュアル作成』の必要性と作成手順について詳しく解説しています。
厚労省の「カスハラ対応マニュアル」を参考に、企業と従業員の安心・安全を守りましょう!
カスハラ対応マニュアルの内容
適切なカスハラ対応策は企業の健全な運営に欠かせません。
まずは、カスハラ対応マニュアルが企業運営にもたらす具体的なメリットについて、厚生労働省が提唱するカスタマーハラスメントマニュアルを参考に解説していきます。
カスハラの定義と意味
厚労省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」によると、カスハラの定義を
顧客や取引先からの暴力や悪質なクレーム等の著しい迷惑行為のことを「顧客等からの著しい迷惑行為」としており、これをカスタマーハラスメントとして捉えます。
引用元:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」
と説明し、その内容は顧客から従業員に対する不当な要求や威圧的な態度と解釈できます。
例えば、顧客による過剰なクレームや従業員への人格攻撃、無理な返品や値下げ交渉の要求などが該当します。
企業がカスハラを放置しこれらの迷惑行為が繰り返されると、企業の運営に深刻な支障を来す可能性があります。
カスハラを放置するリスク
カスハラを放置すれば、企業と従業員の双方に深刻な影響が及びます。
企業はブランドイメージの低下や法的なリスクにさらされ、従業員は精神的な負担が増して、離職の危機や心身の健全さを損なう様な事態に直面します。
下記に企業と従業員(個人レベル)でのリスクを大きく3つずつ挙げます。
企業のリスク
- ブランドイメージの低下
SNSでの拡散による評判の悪化が懸念されます。 - 顧客離れ
サービス品質への不満が蓄積し、顧客の信頼を失うリスクが考えられます。 - 法的トラブル
不当な対応に対する訴訟のリスクが考えられます。
従業員(個人レベル)のリスク
- 精神的負担の増大
不当な要求によるストレスが増加します。 - 離職率の上昇
働きやすさの欠如による離職が増加します。 - 職場環境の悪化
企業全体の士気低下やパフォーマンスの低下に繋がります。
これらのリスクは密接に関係しており、企業と従業員どちらかだけへの損害にはとどまりません。
カスハラの放置は百害あって一利なしです!要求な予防と対応策を講じましょう。
カスハラへの効果的な対応方法
カスハラ問題について企業が効果的に対応する方法をご説明します。
それは、厚労省のカスハラマニュアルを基にして、自社の実務に適した独自のカスハラ対応マニュアルを導入することです。
まずはカスハラ対応マニュアルの運用を検討し、従業員が安心して働ける環境を整えてください。
そうすれば企業のリスクマネジメントが強化され、結果的に顧客対応の品質向上にも繋がるはずです。
厚生労働省が作成したカスハラ対応マニュアル
厚労省のカスタマーハラスメントマニュアルは、企業が取るべき対応策を具体的に示しています。
しかし当然のことながら、事業内容やサービス体系の違いによっては厚労省のカスハラ対応マニュアルが当てはまりにくい場合が多いです。それは、実務の違いがあるためです。
下記に
・厚労省が作成したカスハラ対応マニュアルの要点
・どの企業でも参考にできる点と実務との相違で参考にし難い点
をわかりやすく箇条書きでまとめます。
まずは、厚生労働省のカスハラ対応マニュアルの要点をご紹介します。
① 事業主の基本方針・基本姿勢の明確化、従業員への周知・啓発
② 従業員(被害者)のための相談対応体制の整備
③ 対応方法、手順の策定
④ 社内対応ルールの従業員等への教育・研修
⑤ 事実関係の正確な確認と事案への対応
⑥ 従業員への配慮の措置
⑦ 再発防止のための取組
⑧ ①~⑦までの措置と併せて講ずべき措置
引用:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」
このように、カスハラに対する基本的な知識や対応方法を広範囲の業種へ向けた内容となっています。
つづいて、どの企業でも参考にできる点と、実務との相違で参考にし難い点に分けて整理してみましょう。
どの企業でも参考にできる点
・明確な対応指針
対応策が具体的に記載されているため、基本的な対策が取りやすいです。
・予防策の提示
カスハラの予防策が網羅されており、未然に防ぐ意識が高まります。
・公式な信頼性
厚生労働省が発行しているため、企業の遵守姿勢を示す材料になります。
実務との相違で参考にし難い点
・包括的すぎる内容
一般的な内容が多く、企業ごとの実務に合わせたカスタマイズが必要です。
・具体例の不足
職種別の具体例が少なく、体系的でないため適用しにくい部分があります。
・抽象的な表現
一部の指針は抽象的で、現場の従業員が具体的な行動に移しにくいと考えられます。
このように、今すぐ自社に取り入れることができる部分と、参考となるが当てはまらない部分もあります。この参考にし難い部分をベースとして、自社の実務に見合った内容へと昇華し、オリジナルのカスハラ対応マニュアルを作成することを企業の目標としてください。
厚労省が作成したマニュアルの効果的な活用方法の流れは、
①厚労省が策定したカスハラ対応マニュアルに
②自社のカスハラ被害体験と他社のマニュアル導入事例を盛込み、
③カスハラの予防策や対応フローを自社風にアレンジする
この様なイメージです。
自社の実務に適した独自のカスハラ対応マニュアルを作成することが、カスハラへの効果的な対応方法の実現につながります。
カスハラ対応マニュアルは必要か
実務上の問題が発生する場合には、企業内の統一された行動基準が企業運営の安定に直結します。
ここではカスハラ対応マニュアルの必要性を解説し、その導入がどのような効果をもたらすかを詳しく説明します。
カスハラ対応マニュアルの必要性
カスハラ対応マニュアルが効果的に活用されていれば、従業員も安心して働くことができます。その結果、企業全体のパフォーマンスに一貫性が保たれ、高品質かつ健全な職場環境の実現が期待できます。
また、企業の実務に沿ったカスハラ対応マニュアルの存在は、企業と従業員それぞれに恩恵をもたらします。
企業としての必要性
- リスク管理
予防策を明確にすることで、訴訟リスクを回避します。 - 企業イメージの向上
適切な対応が信頼性向上に寄与すると期待できます。 - 法令遵守の徹底
規範意識の向上によりコンプライアンスが確立されます。
従業員(個人レベル)としての必要性
- 対応の一貫性確保
統一された基準で対応することで、現場の混乱を回避します。 - 精神的な安心感の向上
対応手順が明確なため、従業員が安心して業務に取り組めます。 - トラブル発生時の迅速な対応
明確な手順により、迅速かつ適切な問題解決が可能です。
企業としても従業員としても、明確なルールやマニュアルを基に行動することで、安心して業務を遂行することができます。実務に見合ったマニュアルで、対応方針を統一することで従業員の心理的負担を軽減するのです。
自社専用カスハラ対応マニュアル作成の必要性
厚労省のマニュアルは基本的な指針を示している一方で、企業の業種や実務に応じた対応までは想定していません。
そのため、業務内容や現場の実務に適した自社専用のカスハラ対応マニュアルを作成することで、より実効性の高い対応が可能となります。
企業の特性を反映した実務的な手順や事例を組み込み、従業員が即座に対応できる環境を整えることが重要です。
カスハラ対応マニュアルの作成手順
カスハラ問題への対応は、企業の規模や業種によって異なります。
そのため、厚労省の標準的なカスハラマニュアルに基づきつつ、自社の実務に応じたオリジナルのカスハラ対応マニュアルが必要です。
次は、カスハラ対応マニュアルを作成するための基本的なステップや、具体的な運用方法について解説します。マニュアル作成の全体フローは下記のとおりです。
STEP1. カスハラ対応マニュアルの基本方針の決定
STEP2. 対応フローの明確化
STEP3. カスハラ対応の記録と共有体制の構築に向けて
STEP4. 法的対応への備え
STEP5. 社内教育制度の計画立案
できる限り現場で実践しやすい、実務的なカスハラ対応マニュアルの作成を意識しましょう。
STEP1. カスハラ対応マニュアルの基本方針の決定
実務的かつ効果的なカスハラ対応マニュアルを作成するためには、その基本方針が重要です。
①基礎知識の共有
②被害事例の明示
③基本構成の整備
これら3つを明確にすることで、従業員が実践可能なカスハラ対応体制を構築します。
カスハラの基礎知識の共有
カスハラとは顧客から従業員に対する不当な要求や威圧的な行為を指し、業務運営に深刻な影響を与える可能性があるリスクのことです。
組織内でこの基本的な概念を共有し、企業が直面するリスクを従業員に理解させることが、カスハラ対応マニュアル作成の重要な第一歩です。
具体例を交えた情報共有により、従業員のリスク認識を高め、組織全体で一貫した対応体制を構築することを意識して徹底してください。
「カスハラ」について、「「【カスハラ】とは何ですか?」意味と事例、防止対策をわかりやすく解説」の記事で詳しく解説しているのでぜひご覧ください。
カスハラによる具体的な被害事例
実際の参考事例を基に、企業が経験し得るリスクを事前に共有することで、従業員の理解を深めます。
以下は被害の事例です。
- 小売業での過剰な要求
従来の「お客様の声に何でも答える」という対応では従業員を十分に守れず、生産性も維持できないと判断されたケース。
参考:あかるい職場応援団「従業員が本来の業務に専念できる職場環境を目指して」
「カスハラの事例」について、「業種別カスハラ事例集|公務員、コールセンターなどのカスハラ実態」の記事で詳しく解説しているのでぜひご覧ください。
カスハラ対応マニュアルの基本構成
カスハラ対応マニュアルの基本構成は、企業がカスハラ被害等の問題に対処するための全体像を明確にし、「従業員を守ります!」という姿勢を宣言するものであるべきです。
以下の重要な要素を含めることで、統一されたカスハラ対応体制を構築できます。
- 基本方針 「カスハラ対策の全体的な方向性と企業の姿勢を示します。」
- 対応フロー 「問題発生時の具体的な手順と各担当者の役割を明確化します。」
- 報告・共有方法「発生した問題を速やかに報告・蓄積・共有する仕組みを作ります。」
- 法的対応 「必要に応じた法的措置や専門家への相談体制の確立します。」
- アフターケア 「事後の従業員のメンタルケアを約束しましょう。」
STEP2. 対応フローの明確化
対応フローを明確にし、従業員が迷うことなく適切なカスハラ対応を実行できるように教育しましょう。
いざとなった時にその先が見えているかどうかで、カスハラ対応の質が各段に変わり、リスクがぐっと減るハズです。
カスハラ被害の事例を基にした具体的な手順や、初期対応からアフターケア、従業員のメンタルケアまでを網羅することで、企業全体の対応力を強化し、トラブルの再発防止にもつながります。
事例に基づく対応フロー
具体的な被害事例毎にどのようなカスハラ対応が適切かを明確にし、迅速な対応を可能にします。カスハラのジャンル分けの様な作業です。
たとえば、顧客からの不当な要求がエスカレートした場合でも、企業側が対応マニュアルに基づいて冷静な対処を徹底することで、被害の拡大を防ぐことができます。
各ケースに適した行動手順を明示することで、従業員は「こう対応すれば良いのだな。」と迷わずに、自信を持った適切な対応が期待できます。その毅然としたカスハラ対応がトラブルの早期解決につながります。
この積み重ねによって組織全体の対応力が向上し、いずれは内外からの企業の信頼性も確保されることでしょう。
初期対応からアフターケアまで
トラブル発生時の初期対応からフォローアップまで、段階的な対応手順を従業員に明示しましょう。
まずは初期対応の手順です。
初期対応の手順
- 冷静な対応
状況を迅速に確認し、顧客の要求内容を明確化しましょう。 - 安全の確保
暴力行為や危険がある場合は直ちに上司や警察に連絡しましょう。 - 記録の徹底
応対内容を詳細にデータ収集し、証拠・体験談を蓄積しましょう。
つづいて従業員のアフターケアです。
従業員のメンタルケアとフォローアップ:
- 心理的サポートの提供
必要に応じて専門カウンセラーによる相談窓口を設置します。 - 定期的な面談
従業員との個別面談を実施し、心身の状態を確認します。 - 復帰支援プログラム
心理的負担を軽減するため、段階的な業務復帰支援を行います。
実際に従業員がカスハラ被害に遭遇した場合に、どの程度の影響を受けてしまったかでアフターケアの応対が変わります。従って、従業員へ直接の聞き込みと確認が重要となります。
STEP3. カスハラ対応の記録と共有体制の構築に向けて
カスハラ対応の記録と共有は、問題の全容を把握し、効果的な再発防止策を講じるための非常に重要な基盤となります。
企業の商売と同様に、カスハラ対応もデータ収集が肝要というわけです。
これにより、企業全体でカスハラ対応力を向上させるだけでなく、従業員からの企業に対する信頼と安心感を確保できます。
実際のトラブル発生時の記録例
トラブル発生時の記録は事実確認と今後の対策に役立ちます。
また、従業員がカスハラ被害を受けた際の重要な証拠となります。
どの様な形であれ、次に繋がる大事なデータです。必ず記録を残すようにしましょう。
社内での報告・共有方法まで
問題の再発防止のためには、実際にあった出来事を直ちに正確に報告できる体制がなくてはなりません。そして、その報告を社内で素早く展開する情報共有体制も必要です。
社内での報告・共有方法は最低でも下記3つを盛り込みましょう。
社内での報告・共有方法
- 報告体制の明確化
トラブル発生時に担当者がすぐに報告できる体制を整備します。 - 共有会の定期実施
全社的な会議や部署内ミーティングでの事例共有を行います。 - ナレッジベースの構築
対応事例や解決策をデータベース化し、従業員がいつでも参照できる環境を構築します。
社内相談窓口の設置
従業員が安心して相談できる窓口の設置は、企業文化の改善にもつながります。
カスハラ被害者専用の社内相談窓口は、従業員の心身の健全さを守るための重要な対応方法です。従業員が問題を抱え込まず、安心して支援を受けられるようにしてあげてください。
窓口となる担当部署は、人事部もしくは総務部が適任であり、一般的です。
また、業務上の問題解決に加えて、外部の専門カウンセラーやメンタルヘルスサポートとの提携も検討してみてください。相談内容は厳重に管理され、プライバシーが保護される仕組みを整えることで、信頼性のある相談環境を構築できます。
効果的な社内共有体制を整備することは、企業の透明性と信頼性を高めると同時に、従業員の不安を軽減します。報告・共有体制や相談窓口があること事態が従業員にとっての安心材料となります。
カスハラ被害に限らず、従業員が「何かあっても、守ってもらえるから頑張れる!」と感じて前向きに働くための環境整備を進めましょう。
「カスハラの相談窓口」について、「カスハラの相談窓口とは?相談先6選と社内の設置についても解説!」の記事で詳しく解説しているのでぜひご覧ください。
STEP4. 法的対応への備え
カスハラ対応において、弁護士等の専門家からの法的な助言は非常に強力です。
企業は、トラブル発生時に迅速に対応できるよう、弁護士や法務専門家との連携体制を構築し、カスハラ対応マニュアルに組み込んでおきましょう。
弁護士等の専門家との連携体制
定期的な相談や契約書の見直しも視野に入れておいてください。従業員へのサポートを、法的な力で助力することで、より盤石なカスハラ対応マニュアルの作成が可能になります。
警察対応を必要とする場合について
顧客によるカスハラが従業員に対する暴力行為や脅迫に発展した場合、警察への通報が必要になる場合もあります。
このような状況では、まず従業員の安全確保を最優先してください。事故やケガに発展しては取り返しがつきません。
そして記録や証拠をしっかりと保存しておく機転も必要です。突発的な状況に遭遇した場合に、如何に冷静に対応し、こちらの有利を作るかがポイントです!
企業内で事前に通報の仕方から、状況の伝え方など、警察沙汰も想定したカスハラ対応マニュアルを整備し、迅速な行動が取れる体制を整えることが求められます。
STEP5. 社内教育制度の計画立案
社内での教育制度まで計画立案してカスハラ対応マニュアルの完成となります。作成したマニュアルをどの様に活用していくのか、マニュアル内容を効果的に身につけるにはどの様にすべきかを考えてみましょう。
カスハラ研修プログラムの立案
従業員には実務的なスキルを早期に正しく習得してもらわなくてはなりません。そのためには、体系的なカスハラ研修プログラムが効果的です。
また、適切にカスハラ対応するためには、新入社員から管理職までの異なる立場での想定も必要となります。
さらには通常業務の負担の度合いも加味しなくてはなりません。
例えば、まだ実務に慣れていない新入社員がカスハラ被害を受けるのと、ベテランの管理職がカスハラ被害に遭遇するのとではダメージが異なります。
この様に、企業だけでのプログラム立案は難しいという実態があります。
実務に応じた体系的なカスハラ研修プログラムとして、多角的な対応の仕方が受講できるような、段階的なカリキュラムを構築したものを推奨します。
ロールプレイングとシミュレーション訓練
カスハラ対応マニュアルとして実務的なスキルを磨くためには、ロールプレイングやシミュレーション訓練が効果的です。
カスハラ報告事例を基に、従業員に実際のトラブルを想定しながら対応する練習をしてもらいます。
この訓練により、現場での即応力の向上が期待できます。また、複数回の訓練を通じて数パターンの対応フローを体験し、緊急時でも冷静に対応できる自信を培います。
カスハラ対応マニュアルの効果的な運用方法
マニュアルを作成した時点でようやくスタートラインです!作成したカスハラ対応マニュアルを社内に浸透させましょう。マニュアルを従業員一人ひとりに定着させるにはどうすればよいのか。効果的な運用方法について考えてみましょう。
定期的な見直しと更新
カスハラ対応マニュアルは、企業環境や社会情勢に応じて定期的に見直す必要があります。最新のカスハラ被害事例や法改正を反映させることで、現場での実効性が高まります。また、見直しの際には従業員のフィードバックを活用し、より自社の実務に即した内容に更新してください。
従業員からのフィードバック体制の構築
従業員からの意見や、現場での課題を反映する体制を整えることが効果的にマニュアルを運用するポイントです。
カスハラを予防したこと、対応したことをフィードバックします。
常に課題を明確化し、柔軟な改善を繰り返すことで、顧客にカスハラをさせないだけでなく、従業員の信頼を得ることに注力することをオススメします。
カスハラ対応における企業の基本方針と社風の醸成
カスハラ問題に対する基本方針を掲げることは、企業文化の一環として重要です。
従業員が安心して働ける職場環境を整えることで、企業全体の士気が向上し、その結果が顧客満足度の向上に寄与します。
企業として「カスハラに屈しない!」、「従業員には指一本触れさせない!」という気概を方針に含め、従業員にその姿勢を示すことが社風の醸成へと繋がります。
カスハラ対応マニュアルの導入事例
カスハラ対応マニュアルを実際に導入した企業の事例を確認してみてください。また、導入していないままカスハラ被害に遭遇するとどの様なリスクに直面するのでしょうか?厚労省の事例を参考に考えてみましょう。
他企業の成功事例から学ぶ
厚労省のHPからカスハラ対応マニュアル導入の成功事例を知ることができます。
いくつかの事例を抜粋し、引用しました。(下記、CASE1~3まで)
CASE1. 運送業
【 企業名 】 : ヤマト運輸株式会社
【 従業員数 】 : 約18万人
【 導入成功例 】 : 参考ポイント以下3点
1.実務で体験した「カスハラ発言リスト」や「文言集」を対応マニュアルに盛り込み、従業員に周知している。
2.専用相談窓口連絡先をいつでも社員の目に入るような形をつくっている。
3.カスハラ対応後に必ずレポートを作成し、社内データベースに登録している。
CASE2. 医療・福祉
【 企業名 】 : A病院
【 従業員数 】 : 約1千人
【 導入成功例 】 : 参考ポイント以下3点
1.カスハラ事例を主体的にデータ収集し、社外へ積極的に情報発信している。
2.医療現場関係と患者相談関係の部門分けが可能となり、管理者間の情報共有の整理ができた。
3.カスハラ対応から品質向上意識が芽生え、結果的にクレーム減少までを視野にいれた運営が可能となった。
CASE3. 小売業
【 企業名 】 : 株式会社イトーヨーカ堂
【 従業員数 】 : 約2万6千人
【 導入成功例 】 : 参考ポイント以下3点
1.カスハラ対応マニュアルの整備を経て、今ではマニュアルだけに頼らない現場対応力の育成にまで到達している。
2.警察組織との関係づくりが良好となり、再発防止策が効果的になった。
3.カスハラ対応マニュアルの存在により、有事の際でも従業員が「会社の方針です!」と 毅然とした対応の一言でトラブル解決に至りやすくなっている。
他にもいくつかの業種の事例がありますのでご参考になれば幸いです!
参考:厚生労働省「あかるい職場応援団」
カスハラ対応マニュアルを導入していない場合のリスク
カスハラ対応マニュアルを導入していないとどの様なリスクが想定されるかと思いますか?
企業と従業員に対して以下のようなリスクが懸念されます。
企業が直面するリスク
- ブランドイメージの低下。
- SNSでの炎上による顧客離れ。
- 訴訟問題の発生。
- トラブル対応にかかるコストの増加。
- 離職率の上昇による人材不足。
- サービス品質の低下。
- 従業員の士気低下。
- 業務効率の悪化。
- 規制当局からの指導や罰則。
- 競合他社との差別化が困難になる。
個人が直面するリスク
- 精神的なストレス増加。
- 身体的な健康被害。
- トラウマの形成。
- 職場での孤立感。
- 離職を余儀なくされる。
- 自信喪失やモチベーション低下。
- 家庭やプライベートへの悪影響。
- 法的トラブルに巻き込まれる可能性。
- 仕事のパフォーマンス低下。
- 次の就職先での適応が困難になる。
一番の損害は思い切りのよい、毅然とした態度でサービスを提供することができなくなるということです。企業と従業員のどちらにも共通することですが、ポジティブでアグレッシブな営業ができなくなってしまえば、思うような業績も残せず、従業員は疲弊するばかりです。
悪循環に陥ってしまう前にカスハラ対応マニュアルを作成しましょう!
カスハラ対応マニュアルまとめ
企業がカスハラの被害問題に取り組むためには、適切なカスハラ対応マニュアルの作成が不可欠です。
本記事では、カスハラ対応マニュアルの重要性から作成手順、導入事例、そして効果的な運用方法までを詳しく解説しました。
カスハラ対応マニュアルの重要性
カスハラ対応マニュアルは、企業のリスクマネジメントと従業員の安心・安全を守るために最も重要な手段です。
企業が直面する様々なトラブルに対し、迅速かつ適切な対応が求められる中においては明確な行動指針や基本方針が必要です。
組織全体で統一された対応方針を確立することで、リスクの低減、顧客対応の質向上、従業員の安心感の醸成が期待できます。
企業と従業員を守るために
企業と従業員の双方を守るためには、従業員ファーストの企業文化を築くことが不可欠です。
従業員が安心して働ける環境を整えることで、結果的に顧客満足度も向上し、企業の更なる発展へと帰結します。
従って、企業は働きやすい職場づくりを通じて従業員のストレスを軽減し、離職率の低下や生産性の向上を図るべきです。
これらの取り組みを実践することで、企業のリスクマネジメントが強化され、従業員が安心して働ける職場環境の実現が可能となります。
このためには、カスハラ対応マニュアルを全従業員が効果的に活用できるよう、体系的なカスハラ研修の実施が重要です。
定期的な社内教育プログラムやシミュレーション訓練を導入し、全員が共通認識を持つことで、組織全体の対応力が強化されていくことでしょう。
参考:厚生労働省「「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」等を作成しました!」
参考:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」
カスタマーハラスメント研修導入を検討している方へ
心理学の学校「Tree」では、カスハラ対策を中心とした企業研修やセミナーを実施しています。以下のようなニーズにお応えします。
- 従業員向けのメンタルヘルスケアを含むカスハラ対応研修
- クレームとカスハラの見分け方と柔軟な対応方法
- 未然防止策を取り入れた顧客対応マニュアルの策定支援
心理的な側面から顧客対応を見直し、従業員と顧客の両方が安心できる環境を一緒に構築していきましょう。
カスタマーハラスメント研修の導入をご検討されている方は
以下のフォームよりお問い合わせください。