業種別カスハラ事例集|公務員、コールセンターなどのカスハラ実態

カスタマーハラスメント

最近メディアなどで話題のカスタマーハラスメント(通称:カスハラ)について、業種別のカスハラ事例を7つの業種に絞り、ご紹介いたします。

「カスハラってよく聞くけど、どんな事例があるんだろう?」
「自分が受けたのはカスハラに該当するの?」

という疑問や不安を抱えている方もおられるでしょう。
実際どんなカスハラが起こっているのかを知っておくのは、とても大事です。

詳しく知ることで、いざという時に適切な対応ができ、ツライ思いをしなくて済む可能性も上がるからです。
今回は実際にあったカスハラ事例を業種ごとに分けてご紹介いたします。

  1. そもそもカスハラとは?
  2. カスハラ事例集 『公務員』
    1. 実際に職員の方が被害にあったカスハラ事例
      1. 【ケース①】役所
      2. 【ケース②】電話
      3. 【ケース③】学校
      4. 【ケース④】税金
      5. 【ケース⑤】福祉行政
  3. カスハラ事例集 『コールセンター』
    1. 実際にコールセンターでカスハラ被害にあった実例
      1. 【ケース①】薬の無償要求
      2. 【ケース②】言い間違え・聞き間違え
      3. 【ケース③】度重なる電話
      4. 【ケース④】長時間の電話
  4. カスハラ事例集 『ホテル』
    1. 実際にホテルでカスハラ被害にあった実例
      1. 【ケース①】複数のスタッフへの暴言
      2. 【ケース②】言いがかり
      3. 【ケース③】宿泊キャンセル
      4. 【ケース④】過度なサービス要求
      5. 【ケース⑤】差別発言
  5. カスハラ事例集 『コンビニ』
    1. 実際にコンビニでカスハラ被害にあった実例
      1. 【ケース①】子連れの母親
      2. 【ケース②】タバコ購入の際
      3. 【ケース③】マナー違反
  6. カスハラ事例集 『スーパー』
    1. 実際にスーパーでカスハラ被害にあった実例
      1. 【ケース①】会計時のトラブル
      2. 【ケース②】売場でのトラブル
      3. 【ケース③】思い通りにならないと怒る顧客
      4. 【ケース④】嫌なことを強いられる
      5. 【ケース⑤】一歩間違えばケガをすることに
  7. カスハラ事例集 『病院』
    1. 実際に病院でカスハラ被害にあった実例
      1. 【ケース①】診察の順番
      2. 【ケース②】不合理な要求
      3. 【ケース③】差別発言
      4. 【ケース④】患者家族の不当な要求
      5. 【ケース⑤】暴力・破壊行為
  8. カスハラ事例集 『介護』
    1. 実際に介護でカスハラ被害にあった実例
      1. 【ケース①】施設の責任にされた
      2. 【ケース②】暴言・悪口
      3. 【ケース③】利用者家族の来訪
      4. 【ケース④】遅刻
      5. 【ケース⑤】暴力・破壊行為
  9. 犯罪になるカスハラ事例
    1. 【暴行罪】(刑法第208条)
    2. 【傷害罪】(刑法第204条)
    3. 【名誉毀損罪】(刑法第230条1項)
    4. 【侮辱罪】(刑法第231条)
    5. 【脅迫罪】(刑法第222条)
    6. 【強要罪】(刑法第223条)
    7. 【威力業務妨害罪】(刑法第234条)
    8. 【不退去罪】(刑法130条)
    9. 【恐喝罪】(刑法249条)
  10. お店側に原因があることも
  11. カスハラ事例を知って対策を
  12. カスタマーハラスメント研修導入を検討している方へ

そもそもカスハラとは?

事例集をご紹介する前にカスハラについて説明をします。

厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策マニュアル」ではこのように記されています。
顧客などからのクレーム・言動のうち、当該行為・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの
引用:厚生労働省”カスタマーハラスメント対策マニュアル”

言い回しが難しいですが、分かりやすく説明すると

・顧客から理不尽なクレームを言われる
・身に覚えのない言いがかりや、暴言暴力、過剰なサービスの要求など

そういった行いをし、正常な業務を妨げることをカスハラと言います。
しかし、顧客が文句を言ってきたからと言って必ずしもカスハラになる訳ではありません。

理不尽な言動を行うカスハラと正当なクレームは全くの別物です。
クレームとは、商品やサービスに対する顧客からの正当な改善要求を指します。

これには商品の品質向上やサービスの改善を求める建設的な意見が含まれ、企業側も積極的に対応する必要があります。
適切なクレームへの対応は顧客満足度を高め、企業の信頼性向上に寄与するので必要なことですよね。

対して、カスハラとは顧客からの不当な要求や迷惑行為です。

発生するきっかけはクレームと似た部分からなのですが、顧客が企業や従業員に対して暴行や脅迫、ひどい暴言、不当な要求などの著しい迷惑行為をはたらいた場合はカスハラと判断されます。

クレームとカスハラはしっかりと見極め、カスハラに対しては相応の対応を行い、クレームは貴重な意見として受け止める必要があります。

カスハラ事例集 『公務員』

全日本自治団体労働組合が2020年10月に1万4213名の組合員に対して調査を行ったところ、過去3年間にカスハラを受けた職員は46%にもなり、約半数の職員がカスハラを受けたことがあるという結果になりました。

さらに職場でカスハラされている人を見たというケースを含めると 76%にもなり非常に高い数値で公務員の方の苦労が伝わってきます。

内容としては「暴言や説教が約64%」「長時間のクレームや居座りが約60%」
「複数回に及ぶクレームが約59%」などが最も多く、
さらには「暴力行為」や「金品の要求」などのカスハラも発生しています。

参考:全日本自治団体労働組合『カスタマーハラスメントのない良好な職場をめざして カスタマーハラスメント予防・対応マニュアル』

調査機関:全日本自治団体労働組合
調査対象:全日本自治団体労働組合 組合員
期間:2020 年 10 月調査開始2021 年 8 月に発表(n数 1万4213)
引用:全日本自治団体労働組合『カスタマーハラスメントのない良好な職場をめざして カスタマーハラスメント予防・対応マニュアル』

上記のように公務員の方がカスハラ被害にあう確率は非常に高い傾向にあります。
一方で、まだ対策のできていない自治体も多いのが現状です。

こういったカスハラが多発する背景には、公務員は国民に対して奉仕する「職務専念義務」があることや、国の機関が税金で成り立っていることをはき違えた人が「自分達が収めた税金で食わしてやっている」とういう横暴な考えに発展してしまうためと考えられています。

実際に職員の方が被害にあったカスハラ事例

【ケース①】役所

住民票・戸籍・印鑑証明の請求書を記入するところから「いちいち記入させるのか」とク レームが始まり、自分の思うとおりの受け答えをしないと「お前はバカか!」と悪態をつき、 証明書を交付する時も小バカにしたような態度でいちいち文句を言われた。とにかく早く 帰っていただくことだけを念頭に対応した。 

引用:全日本自治団体労働組合『「職場における迷惑行為、悪質クレームに関する調査」報告書 2020 年 10 月実施 』

【ケース②】電話

毎日のように電話をかけてきて過剰な要求。電話口で文句を30分以上続け、職場では3 年以上、自分が対応するようになってからも1年以上続き、現在も続いている。

引用:全日本自治団体労働組合『「職場における迷惑行為、悪質クレームに関する調査」報告書 2020 年 10 月実施 』

【ケース③】学校

「娘がいじめられて帰ってきた」と子どもが通う小学校の教員2人に対し松葉杖で殴りつけるなどの暴行を加え、土下座を強要する。

引用:弁護士法人 咲くやこの花法律事務所 企業法務の法律相談サービス『カスハラの事例!実際にあったカスタマーハラスメントの例を詳しく解説』

【ケース④】税金

税金を過去にさかのぼって下げるように要求された。1年程1日中居座ったりしたが、あ きらめて来なくなった。

引用:全日本自治団体労働組合『「職場における迷惑行為、悪質クレームに関する調査」報告書 2020 年 10 月実施 』

【ケース⑤】福祉行政

虐待措置したケースで、加害者であった家族から逆うらみされ、「お前を殺してやる」「家 をつきとめて家族を殺してやる」などの電話を何度も職場にかけてこられた。上司が警察に 相談してくれた。加害者の家族(他県に住む兄妹)も状況を把握され、家族が介入する形で 終息した。 

引用:全日本自治団体労働組合『「職場における迷惑行為、悪質クレームに関する調査」報告書 2020 年 10 月実施 』

カスハラ事例集 『コールセンター』

ニュースで取り上げられるのは、実店舗のケースが多いですが、コールセンターでもカスハラは数多く発生しております。

特に、コールセンターは、

・相手に顔が分からない
・匿名で電話をかけられる
・対応される方が女性であることが多い

そのため相手がヒートアップしてしまうケースが多いと言われます。
中には数時間にもわたって苦情を言い続けるケースなどもあります。

参考:IVRy  『カスハラの具体的な事例とは?電話のカスタマーハラスメント対策も紹介!』

調査実施会社:トビラシステムズ株式会社
実施期間:2024年7月8日〜7月11日
対象:全国の25~60歳の男女で、過去3年以内に電話によるカスタマーハラスメントを受けたことがあると回答した人
有効回答数:729
引用:PR TIMES  トビラシステムズ株式会社『電話によるカスタマーハラスメントに関する調査レポート 暴言や長時間の電話、被害時に「カスハラ対策導入されていなかった」が6割』

コールセンターの方も非常に多くのカスハラ被害を受けております。
対策を行っている企業もありますが、まだまだカスハラ件数は多いのが現状です。
中には、コールセンターで働くのが怖くなり、1年以上コールセンター業務に戻れなくなった方や、離職される方も多数おられます。

実際にコールセンターでカスハラ被害にあった実例

【ケース①】薬の無償要求

治療した箇所に違和感があるので薬をタダで郵送してくれというクレームがありました。来院する時間はないという理由でしたが、診療せずに薬を処方することはできないと伝えても納得せず、この押し問答が2時間も続いたとのことです。

引用:OKIソフトウェア 『第84回:理不尽なカスタマーハラスメントにコールセンターはどう対応すべきか』

【ケース②】言い間違え・聞き間違え

顧客との電話のやり取りでどちらかの言い間違い・聞き間違いによって起きた業務ミスで過度の謝罪や、値引きなどを罵倒されながら要求された。

引用:PR TIMES  トビラシステムズ株式会社『電話によるカスタマーハラスメントに関する調査レポート 暴言や長時間の電話、被害時に「カスハラ対策導入されていなかった」が6割』

【ケース③】度重なる電話

毎朝毎夕電話をかけてこられ、自分勝手な要望やそれが通らない時に怒涛のクレームをつけてくる。電話1回あたりの時間は1時間以上。

引用:PR TIMES  トビラシステムズ株式会社『電話によるカスタマーハラスメントに関する調査レポート 暴言や長時間の電話、被害時に「カスハラ対策導入されていなかった」が6割』

【ケース④】長時間の電話

4時間にわたるクレーム電話で叱責される。

引用:PR TIMES  トビラシステムズ株式会社『電話によるカスタマーハラスメントに関する調査レポート 暴言や長時間の電話、被害時に「カスハラ対策導入されていなかった」が6割』

カスハラ事例集 『ホテル』

ホテル業界も多くのカスハラ被害が発生しています。
ホテルは宿泊を前提としているため、カスハラを行う顧客でも、1日接客する必要があります。

その場合、その顧客が翌日のチェックアウト時まで、不安な時間を過ごすこともあり、大変な対応を強いられることが考えられます。

実際に土下座での謝罪要求、過剰なサービスの要求、執拗な暴言、泥酔状態での長時間介抱の要求など様々なカスハラ被害が発生しているのが現状です。
その他にも次のようなカスハラ被害が発生しています。

・理不尽な理由で、宿泊料の割引や返金要求をする
・部屋や施設の備品を汚したり・破壊したりする
・不当に部屋のアップグレードを要求する
・宿泊する部屋の上下左右に客を入れないよう要求する

参考:弁護士法人 咲くやこの花法律事務所 企業法務の法律相談サービス『カスハラの事例!実際にあったカスタマーハラスメントの例を詳しく解説』

実際にホテルでカスハラ被害にあった実例

【ケース①】複数のスタッフへの暴言

栃木県の旅館では、利用時間外に大浴場で入浴していた男性客に、清掃スタッフが時間外であることを丁寧に説明したところ、激しいけんまくでどなりつけられたということです。

この客は、繰り返し宿泊してほかの接客係にもどなるなどの同様の行為を行ったため、従業員が退職してしまったり、配置転換が必要になったりしたということです。

引用:NHK首都圏ナビ『厚生労働省 カスハラでの宿泊拒否の事例示す 適正判断されるのか不安の声も』

【ケース②】言いがかり

兵庫県の宿泊施設では、家族で泊まっていた客から「部屋の畳がほこりだらけだから掃除をしろ」とクレームを受けたということです。このため、施設側は再度清掃を行いましたが、その直後に「ごみがある」と苦情を言われたということです。

施設によりますと、清掃した際にはなかったごみだったといい、客が宿泊代の返金と交通費を施設で負担するよう求めてきたため、施設側がやむなく「部屋代は返金するが、交通費は支払えない」と伝えると「口コミに書くぞ」と脅されたということです。

引用:NHK首都圏ナビ『厚生労働省 カスハラでの宿泊拒否の事例示す 適正判断されるのか不安の声も』

【ケース③】宿泊キャンセル

滋賀県の旅館では、ある男性客が複数の宿を同時に予約し、宿泊の直前になって一緒に利用する女性が選んだ宿以外はキャンセルするという迷惑行為を繰り返していたということす。

引用:NHK首都圏ナビ『厚生労働省 カスハラでの宿泊拒否の事例示す 適正判断されるのか不安の声も』

【ケース④】過度なサービス要求

 過度の要求: 顧客が連日、異常に多くの特別サービス(例えば数時間ごとの部屋の清掃)を要求し、それが拒否されると従業員に対して攻撃的な態度を取る。

引用:弁護士法人BRIGHT『ホテルでのカスタマーハラスメント事例と宿泊拒否のガイドライン』

【ケース⑤】差別発言

人種差別的な発言: 特定の人種や民族背景を持つ従業員に対して、侮辱的または差別的なコメントを行う顧客。

引用:弁護士法人BRIGHT『ホテルでのカスタマーハラスメント事例と宿泊拒否のガイドライン』

カスハラ事例集 『コンビニ』

24時間365日営業しているコンビニは非常に便利ですが、様々な顧客が日々来店されるコンビニはカスハラの被害を受けることが多いのが現状です。

コンビニオーナーは顧客からのクレームが本部に入ると、お店側が過失がない場合でも叱責を受けるため、顧客のカスハラに対しては、過失がなくても誠心誠意、謝罪する必要があります。

酷いカスハラ被害も多々ありますので、ご紹介していきます。

参考:弁護士ドットコムニュース『コンビニの「カスハラ」あるある 「年齢確認」「タバコ注文」でブチ切れ』

実際にコンビニでカスハラ被害にあった実例

地方都市で、大手コンビニのフランチャイズ(FC)加盟店を経営する50代の男性は、暴言のカスハラ体験を話してくれました。

【ケース①】子連れの母親

「お母さんが目を離したすきに、小さなお子さんが売り物の酒びんを割ってしまったんです。そしたら、お母さんは『なんで、子どもの手の届く所に酒を並べているんだ』と怒り出しました」

事故が起きたとき、男性は自宅にいましたが、スタッフから呼びされ、慌てて店舗に向かいました。母親は「子どもの安全を考える気がないのか」「今すぐ売り場を変えろ」とカンカンです。

謝罪しつつも、売り場のレイアウトは変えられないことを説明しましたが、「客に向かって何ほざいてるんだ」「本部に言って、お前をクビにしてやろうか」などの暴言を浴びせられ続けました。

引用:弁護士ドットコムニュース『コンビニの「カスハラ」あるある 「年齢確認」「タバコ注文」でブチ切れ』

【ケース②】タバコ購入の際

『客のタバコも覚えられないのか』と絡んで、新人の女性バイトを泣かせた男性客がいました。番号で言ってくれないと分からないでしょう。何のために番号があると思っているのか。

引用:弁護士ドットコムニュース『コンビニの「カスハラ」あるある 「年齢確認」「タバコ注文」でブチ切れ』

【ケース③】マナー違反

近所で工事をやっていたんですが、作業員が泥だらけのままウチに来て、トイレで手や顔を洗うんです。おかげで掃除が大変でした。何か買っていってくれるならまだ良いのですが、ただ用を足すだけです。

引用:弁護士ドットコムニュース『コンビニの「カスハラ」あるある 「年齢確認」「タバコ注文」でブチ切れ』   

カスハラ事例集 『スーパー』

スーパーもコンビニ同様、大勢の顧客が来店するため、カスハラ被害が後を絶ちません。
スーパーに限らず、食品を扱う業種は証拠品が残らないため対応が難しいことが多いです。
本来不良品が出た際は、その不良品を預かって確認しますが、食品は食べた後で、「味がおかしかった」や、「食べたら体調を崩した」などのクレームを受けることが多いため、確認できないのが現状です。

参考:カスハラ対策相談ナビ  香川総合法律事務所『【カスハラ・クレームの事例】スーパーや飲食店などの食品業界におけるケーススタディ』

産業別労働組合UAゼンセンは 2024年に所属組合に対して、カスハラについてのアンケート調査を行い、33,133件の回答を得ています。

直近2年以内にカスハラの被害にあった人は46.8%になり、前回2020年に行った調査結果から10%程、減少傾向にあります。
しかし、カスハラの発生件数は依然として高いので注意が必要です。

内容としては「暴言 39.8%」「威嚇・脅迫 14.7%」「同じ内容を繰り返すクレーム 13.8%」の順に多く、上記の3点でカスハラ迷惑行為全体の半数以上を占めています。

参考:UAゼンセン『「カスタマーハラスメント対策アンケート調査結果」記者レクチャー資料』

調査対象 サービス業に従事しているUAゼンセン所属組合員
調査期間 2024年1月18日~3月18日
回答組合数 210組合 回答件数 33,133件

引用:UAゼンセン『「カスタマーハラスメント対策アンケート調査結果」記者レクチャー資料』

実際にスーパーでカスハラ被害にあった実例

【ケース①】会計時のトラブル

セルフレジで会計が終わっていないのに帰ろうとしたので声をかけたら、クレジットカードを投げつけられ、「何様のつもりだ」と暴言を吐かれた。

引用:UAゼンセン『「カスタマーハラスメント対策アンケート調査結果」記者レクチャー資料』

【ケース②】売場でのトラブル

店舗売場へ自転車で乗り入れられ注意した所、自転車を倒して足にぶつけられ、暴言を吐かれた。

引用:UAゼンセン『「カスタマーハラスメント対策アンケート調査結果」記者レクチャー資料』

【ケース③】思い通りにならないと怒る顧客

お会計を終了した後、自分で床にペットボトルを落とし、特に汚れや破損もない状態であるのに交換を要求された。

できないことを伝えると、罵詈雑言を浴びせられ、名札を見て店内で名前を叫び貶める発言をくり返された。

後日来店の際は、〇〇を出せ、今日は金属バットで〇〇をぶっ叩きにきた、殺してやるなどの暴言を吐かれた。

引用:UAゼンセン『「カスタマーハラスメント対策アンケート調査結果」記者レクチャー資料』

【ケース④】嫌なことを強いられる

鍋具材を購入したお客様から不良品連絡が入り、料理をしていた際に作っていた鍋料理が台無しになったため、同じ鍋で調理していた具材を全て返金するよう要求される。

そこまでの対応はできない旨を伝えたが、納得されないため、お客様宅へ不良品の交換へ行った。

その際、交換商品はすでに排水溝に捨ててあり、「具材に問題ないから食べてみろ」と言われ水切りネットから取り出し食べて問題ないことを証明させられた。

引用:UAゼンセン『「カスタマーハラスメント対策アンケート調査結果」記者レクチャー資料』

【ケース⑤】一歩間違えばケガをすることに

お客様が購入した包丁の切れ味が悪いとの事で返品対応した際、『高い商品買ったのに研いでも切れない』と、その包丁をむきだしでこちらの顔まで近づけてきました.

引用:DIAMOND online『5万人の調査でわかった「ありえないクレーム」5選と店舗閉鎖の悲劇的事例

カスハラ事例集 『病院』

近年、病院や診療所でのペイシェント(=患者・病人)ハラスメント(ペイハラ)が急増しております。

ペイハラとは、カスハラの一種として医療現場に特化したハラスメントです。
患者またはその家族が医療従事者に対して、不当な要求や暴力的な行動、過剰な期待などがペイハラにあたります。

ペイハラの背景には、患者の健康や治療に対する不安やストレスが大きく関与しており、精神的な不安定さが引き金となることが多いと言われています。

しかしペイハラは、医療サービスの質の低下や人材流出のみならず、他の患者への対応が遅れるなど、病院全体の運営にも悪影響を及ぼす深刻な問題です。

医療関係のカスハラとして多いものは、暴言・暴力や不当な要求、差別的発言、執拗なクレームなどです。

参考:with『病院でのカスハラ事例|医療現場でのリスク対策と研修の必要性』

実際に病院でカスハラ被害にあった実例

【ケース①】診察の順番

ある病院で、救急外来にやってきた患者の家族が医師に対して激しい暴言を浴びせまた。患者は救急車で運ばれてきたため、他の患者よりも優先的に診察されるべきだと主張し、順番を待たずに診療を求めました。

医師が他の緊急性の高い患者の診察を優先し、患者の家族に待機をお願いしたところ、家族は怒り出し、「お前は医者失格だ」「今すぐ診ろ」といった暴言を吐き続けました。

この一連の行動は、医師と看護師の精神的ストレスを増大させました。

引用:弁護士法人BRIGHT『医療現場でのカスタマーハラスメント対策とは?病院が取るべき具体策を解説』

【ケース②】不合理な要求

あるクリニックで、患者が診察後に医師に対して、不合理なサービスを強要しました。

具体的には、処方薬の変更を求める際に、医師の専門的判断を無視して「これじゃダメだ」「この薬に変えろ」と強く要求しました。

医師が医学的根拠に基づいて説明をしても納得せず、さらに他の患者の前で声を荒らげて要求を続けました。結果として、医師はその日の診療に支障をきたし、他の患者への対応にも影響が出ました。

引用:弁護士法人BRIGHT『医療現場でのカスタマーハラスメント対策とは?病院が取るべき具体策を解説』

【ケース③】差別発言

都内の病院で、外国人看護師が患者のケアを担当していた際に、患者の家族から差別的な発言を受けました。「日本語が下手だから、他の看護師に代われ」といった発言や、「外国人に世話をされたくい」といった言葉が繰り返されました。

このような差別的な発言は、看護師の士気を低下させ、病院全体の雰囲気を悪化させました。

引用:弁護士法人BRIGHT『医療現場でのカスタマーハラスメント対策とは?病院が取るべき具体策を解説』

【ケース④】患者家族の不当な要求

ある総合病院で、患者が手術後の経過観察のために入院していました。術後の経過は順調であり、医師からの説明でも問題がないとされていました。

しかし、患者の家族は「治療が不十分だ」と感情的になり、何度も医師や看護師に対して執拗にクレームをつけました。

家族は、「もっと頻繁に医師が様子を見に来るべきだ」「他の患者よりも優先的に手厚いケアを受けさせるべきだ」といった不当な要求を繰り返し、さらに病室で医療スタッフに対して怒鳴り声を上げることもありました。

この行動は、患者本人にも不安を与え、他の入院患者にも影響を及ぼしました。

引用:弁護士法人BRIGHT『医療現場でのカスタマーハラスメント対策とは?病院が取るべき具体策を解説』

【ケース⑤】暴力・破壊行為

利用者が看護師をたたく、つねる、唾をはく、看護師にものを投げる、看護に必要な物品を破損する等した。 

引用:厚生労働省『カスタマーハラスメント事例集 』

カスハラ事例集 『介護』

介護業界でも、カスハラは多いです。

サービス利用者は、生活を維持するため、介護サービスを利用しています。
そのため、介護業界のカスハラは、サービス利用者の生活を考慮すると、簡単に利用を中止できない場合が多いのが現状です。

その結果、カスハラが発生した場合、長期化しやすいという特徴があります。

職員は利用者や親族との間で継続的な人間関係を築いていくため、利用者や親族の生活に深く関与し、親密な関係になりやすいです。

その結果、職員に対する甘えが発生し、心理的なストッパーが外れた結果、利用者や親族の欲求や不満が表に出てくるため、自己中心的な言動が増えます。

サービス利用者が孤独を感じている場合に恋愛の対象にされることや、欲求によってセクシャルハラスメントの言動や行動が発生することもあります。

さらに、職員の中には、利用者や利用者家族からのカスハラを我慢しなければならないと考えている方も多く、その結果、カスハラ行為がエスカレートし、職員が疲弊してしまうまで、介護事業所として認知さえできない場合もあります。

また利用者の中には、職員の説明やサービス提供の方法を理解できなかったり、コミュニケーションがうまく取れない方もおられ、誤解や摩擦が生じやすいのも現状です。

参考:カスハラ対策相談ナビ  香川総合法律事務所『【カスハラ・クレームの事例】介護業界におけるケーススタディ』

実際に介護でカスハラ被害にあった実例

【ケース①】施設の責任にされた

利用者に褥瘡ができ、これが悪化したことについて、医師から施設の責任が否定されているにも関わらず、施設のせいだと主張して説明に聞く耳を持たず、各職員を責め続けていた。

引用:かなめ介護研究会『カスハラ事例!よくある介護現場のカスタマーハラスメント例を解説』

【ケース②】暴言・悪口

「変な顔」「早く帰れ」などの暴言を、ケアの度にどのヘルパーにも言う。

ヘルパーの容姿をけなしたり悪口を言う。

気に入らないことがあれば、「介護士ごときが」などと暴言を吐きながら説教をする。

引用:かなめ介護研究会『カスハラ事例!よくある介護現場のカスタマーハラスメント例を解説』

【ケース③】利用者家族の来訪

利用者家族が、突然事業所にやってきては、怒鳴ったり、文句を言い続けて帰らないことがあり、職員が恐怖を覚えている。

引用:かなめ介護研究会『カスハラ事例!よくある介護現場のカスタマーハラスメント例を解説』

【ケース④】遅刻

訪問介護サービスにおいて、訪問時間に遅刻したことを理由にビンやコップを投げつけられる。

引用:かなめ介護研究会『カスハラ事例!よくある介護現場のカスタマーハラスメント例を解説』

【ケース⑤】暴力・破壊行為

介助中に腕をつねったり髪を引っ張るなどする。

職員の眼鏡を壊したり、服を破ったりする。

引用:かなめ介護研究会『カスハラ事例!よくある介護現場のカスタマーハラスメント例を解説』

犯罪になるカスハラ事例

ここまで様々なカスハラ事例をご紹介しましたが、「そんな酷いことをしているのに犯罪にならないのか?」「被害を受けた方は泣き寝入りするしかないのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。

そこで、カスハラによって適用される法律についてもご紹介します。

【暴行罪】(刑法第208条)

2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料

暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかった場合

具体例
対応した従業員などに暴力を振るう、羽交い絞め、髪を引っ張る、胸や肩を押す、胸倉を掴む、唾や水などをかける、物を投げつけるなど。

【傷害罪】(刑法第204条)

15年以下の懲役または50万円以下の罰金

人の身体を傷害した者

具体例
相手に「傷害」、つまり負傷させてしまった場合には暴行罪ではなく傷害罪が適用される可能性が高いでしょう。相手にケガを負わせるなど。

【名誉毀損罪】(刑法第230条1項)

3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金

公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず

具体例
人前やSNS、ネットなどで、人をけなし、その人の名誉(社会的評価)を傷つける行為など。
事実の有無に関係なく名誉棄損罪に問われます。

【侮辱罪】(刑法第231条)

1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料

事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者

具体例
人前やSNS、ネットなどで、人をけなし、侮辱することなど。

【脅迫罪】(刑法第222条)

2年以下の懲役刑または30万円以下の罰金刑

生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫

具体例
痛い目にあわせてやる等の身体に対する脅迫、生命を脅かす脅迫、SNSで拡散してやる等の名誉に対する脅迫など。

【強要罪】(刑法第223条)

3年以下の懲役

生命、身体、自由、名誉もしくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、または暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、または権利の行使を妨害した

具体例
土下座での謝罪の要求など。

【威力業務妨害罪】(刑法第234条)

3年以下の懲役又は50万円以下の罰金

虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者

威力を用いて人の業務を妨害した者

具体例
暴行や脅迫など、業務を行う人に働きかけて業務を妨害すること。
店の看板の破壊、必要な物を捨てたり、隠したりなど、人が業務に用いる物に働きかけて業務を妨害することなど。

【不退去罪】(刑法130条)

3年以下の懲役又は10万円以下の罰金

正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者

具体例
店側から退去の要求をされたにもかかわらず、居座って業務の邪魔をした場合など。

【恐喝罪】(刑法249条)

10年以下の懲役

人を恐喝して財物を交付させた者

具体例
暴力や脅迫により人に恐怖を感じさせ、金銭やその他の財物を脅し取るなど。

上記の刑法がカスハラに当てはまる事例になります。

あまりにも酷くしつこいカスハラの場合は、各種専門家と連携しながら、法律に準じた対策を考えてみてもいいでしょう。

参考:KEIYAKU-WATCH『カスタマーハラスメント(カスハラ)とは?関連する法令・クレームとの違い・具体例・判断基準・対処法などを分かりやすく解説!』
参考:insource『知っているだけで心が落ち着くカスハラ対策~悪質クレーム対応』

お店側に原因があることも

ここまでカスハラに該当する事例をお伝えしてきましたが、される側(=お店側)が原因で、起こったクレームもあるという事例をお伝えしていきます。

冒頭でもお話ししたように、正当なクレームというものは物凄く大事です。
しかし中には、そういったクレームに対し、キチンとした対応をしないケースも見られます。

・ダルそうな対応
・怒った様な対応をする
・クレームを上司に報告せず、対応もしない
・来店しても案内がない
・不愛想
・店員を呼んでもなかなか来ない
・声が小さく聞こえない
・商品やサービスの提供が遅い
・店員に聞いても、対応してくれない

細かく挙げればキリがないですが、お店側の対応が原因で顧客側にストレスを貯めてしまった結果、カスハラに繋がることも少なくありません。

顧客側の背景も様々なため、最低限のキチンとした対策や対応が必要になります。

カスハラは絶対にやってはいけないことですが、どのようにして対策・対応するかは、しっかりと考えておきたいですね。

カスハラ事例を知って対策を

カスハラとは、顧客が理不尽な要求や暴言・暴力などを行い、正常な業務遂行を妨げる行為です。
様々な業種で多くのカスハラが発生しており、被害者は不安や苦しみを抱えながら、日々の業務に取り組んでおります。

しかし顧客の言動がすべてカスハラとなる訳ではなく、正当なクレームもありますので、見極めが大事になります。
見極めを誤ると、品質向上やサービス改善の機会をなくすだけではなく、大事な顧客を失うことにもなりかねませんので、注意が必要です。

また、従業員の対応の悪さによってカスハラに繋がるケースも少なくないので、従業員の教育なども必要になります。
カスハラが発生した際の対応策や発生を防ぐ予防対策もしっかりと行う必要があります。

今回は、公務員、コールセンター、ホテル、コンビニ、スーパー、病院、介護の7業種に絞り、カスハラ事例をご紹介いたしました。

事例を知って、ご自身の企業や生活に活かしていただけると幸いです。

カスタマーハラスメント研修導入を検討している方へ

心理学の学校「Tree」では、カスハラ対策を中心とした企業研修やセミナーを実施しています。以下のようなニーズにお応えします。

  • 従業員向けのメンタルヘルスケアを含むカスハラ対応研修
  • クレームとカスハラの見分け方と柔軟な対応方法
  • 未然防止策を取り入れた顧客対応マニュアルの策定支援

心理的な側面から顧客対応を見直し、従業員と顧客の両方が安心できる環境を一緒に構築していきましょう。

カスタマーハラスメント研修の導入をご検討されている方は
以下のフォームよりお問い合わせください。