スクワットは注意しないと腰を痛める スクワット15回分で増える筋肉量は、腹筋の500回分に相当するといわれています。それだけ大きな筋肉を動かし、多くのエネルギーを使います。そのため、やりかたを間違えてしまうと負荷が思わぬ箇所に集中し、腰を痛めてしまうことがあります。それを避けるために注意すべきポイントを説明します。 スクワットで腰を痛める原因を把握する スクワットは、脚の筋肉が鍛えられる上に体感も整う「トレーニングの王様」です。しかし一方で、たくさんのトレーニーが腰の痛みに悩んでいます。 スクワットのときに骨盤が傾いている スクワットは非常に効果の高いエクササイズですが、体への反動が大きいという特徴があります。もし方法を間違えれば、鍛えたいものとは別の部位に負担がかかりすぎることになります。 スクワットで腰を痛める原因の多くは、負荷が骨盤に集中してしまうことです。それを避けるには、骨盤を前傾や後傾のし過ぎに注意しなければなりません。前傾し過ぎると背中が反りかえり、反った点に負荷が集中してします。後傾し過ぎると猫背になり、骨盤が不自然に傾き思うように力が入らなくなります。 腰が丸まっているかそり過ぎている 体の構造上しゃがむ動作をするスクワットは、どうしても腰は自然と丸まってしまいますが、それを意識しすぎると逆に反り過ぎてしまいます。スクワットで難しいのはその「正しいフォームを維持しながら」トレーニングしなければなならいということです。 反り過ぎてしまうところを腹筋で耐えてバランスを取れば腹筋を鍛えることになりますが、このバランスを取る動作は体幹部の筋肉を総動員しなくてはなりません。スクワットは「下半身だけ」のトレーニングではなく「胸から下は全部使う」トレーニングなのです。 スクワットの種類に問題がある 同じスクワットでも、バーベルスクワットのように大きな負荷をかけると、腰を痛める可能性が高くなります。正しいフォームで行えば適切な筋肉を刺激できます。 しかし、大きな負荷のかかる状態で深く腰を落とそうとすると、無意識に上半身が前傾してしまい上げるときに腰にダイレクトに負荷がかかり腰を痛める原因になります。スクワットの種類によっては腰に大きな負担がかかる可能性があります。どのスクワットを行うかは慎重に選ばなくてはなりません。 スクワットで腰痛にならないための予防策 スクワットでの腰痛を防ぐためには、具体的にどのような予防策を取るべきなのでしょうか。初心者向けのエクササイズから、通常のスクワットまで行う際に気をつける点を見てみましょう。 自分に合ったスクワットを選ぶ 一般的にいう正しいスクワットは、フォームの調整が難しく、続けているとだんだんフォームが崩れてしまう恐れがあります。スクワットで鍛えたいけどフォームで悩んでいる初心者には、ゴブレットスクワットがおすすめです。 ゴブレットスクワットとは、体の前で両手でバーベルを持ち、上半身を「祈る」ような姿勢で行うスクワットです。通常のスクワットに比べ深く沈み、体をまっすぐに保って行うため、大腿四頭筋や肩周辺の筋肉だけでなく体幹筋をしっかり鍛えることができます。前傾姿勢になりやすい初心者にとってフォームを確認しやすく腰を痛めにくいスクワットです。 背筋をまっすぐにしてスクワットをする スクワットで腰を痛める人のほとんどは、腰を落とすときに背筋が曲がっているため骨盤に負担がかかり過ぎています。正しくスクワット行うには、体のどこかにいつもと違う痛みを感じてはいないか、違和感がないかなど体の状態には細心の注意を払いわなくてはなりません。 基本は「背筋をまっすぐ」ですが、意識しすぎると逆に反り過ぎてしまいます。フォームを得られる感覚から判断し調整に利用するのです。 体幹をもっと鍛えてからスクワットをする 早稲田大学スポーツ科学学術院教授でオリンピック日本代表帯同ドクターでもある金岡恒治先生によると「腹横筋や多裂筋といったローカル筋と呼ばれる体幹深層筋を強化することが腰痛防止につながる」といいます。 背骨を支える役割を果たしているのが、背骨に直接くっついているローカル筋です。ローカル筋が弱くなると、体を安定させるために腰椎や骨盤に余計な負担がかかり、腰痛の原因になります。これらのローカル筋を先に鍛えてスクワットを行えば、腰から上の上半身がうまくバランスを取れるようになり、腹筋や大腿四頭筋など本来鍛えたい筋肉をしっかり鍛えることができ、しかも腰痛になりにくくなります。 スクワットをする前に準備運動をする 普段使わない筋肉を、突然フル稼働させれば筋肉を痛めてしまいます。動かす前に十分準備運動をしておけば、筋肉は温まって柔らかくなるため筋肉を痛めにくくなります。準備運動はケガの防止、パフォーマンスの向上には欠かせません。 また準備運動は今の体のコンディションを知ることができます。いつもより体が張っている気がする、痛みを感じる部位があるなど感じた違和感を踏まえて、軽めのスクワットにするか、回数を減らすなど調整することができます。 腰痛を改善するストレッチを行う 東京大学病院が発表した最新の研究によれば、腰痛が改善できるだけでなく再発を予防できるストレッチがあります。それは、仰向けに横になって腰をねじる、横になったまま両膝を両手で抱える、タオルを使って膝を伸ばしたまま脚を上げる、うつ伏せになりひじを立てて同時にひざを曲げるという4種類のストレッチです。 ストレッチは無理のない範囲でリラックスした状態で行うことが大事で、入浴後や就寝前といった「夜」に行うようにし、1カ月以上継続すると効果が現れてくるようです。これらのストレッチはローカル筋に直接働きかけます。十分にストレッチした後にスクワットを行えば体のバランスが取りやすくなり、腰痛にはなりにくくなります。 スクワットに似た効果が得られる体操を行う 正しいフォームでスクワットを行うのは簡単ではなく、一定の筋肉量がなければ行うことさえ難しいものです。筋力が低下した人が無理にスクワットを行うと、腰を痛めるばかりか転倒・骨折してしまって入院しかえって足腰を弱めてしまうことにもなりかねません。 そんなときは椅子を使った「よみがえり体操」を試してみましょう。スクワットに比べると動きが小さく、椅子に浅く座った姿勢から腰を浮かせるだけで立ち上がることもありません。もともと椅子に座っているため動きが小さく転倒する心配がありませんし、ひざに体重がかからないので痛めることもありません。状態によって回数や速さを調整する必要があります。 スクワットをするときに腰にトレーニングベルトをする 腰椎は構造上とても不安定な部位です。それをサポートするのがローカル筋ですが、ローカル筋の筋力をサポートするのがウェイトトレーニングベルトです。これを締めると腹圧が上がり、腹筋や背筋に力を入れればお腹はもちろん腰に筋が入ったように安定しやすくなります。 腰から上のバランスを取ることが容易になり、スクワットでも狙った筋肉に負荷がかかるよう調整しやすくなります。腰への負担を心配することなくスクワットに集中できるため、ケガの予防にもなります。 腰痛の根本的な原因も把握しておこう 腰痛はその85%の原因が特定できないといわれています。特定できる腰痛の大半は腰椎の異常によるもので、10代から40代では椎間板ヘルニア、50代から70代では腰部脊柱管狭窄症がおおいです。一般の腰痛は、慢性筋肉性腰痛症とよばれ、ローカル筋に疲労がたまることで起こります。 軽ければすぐに回復しますが疲労が重なると血行が悪くなり鈍い痛みを常に感じ、腰痛になるのです。また十分に筋肉を温めないで突然激しい運動をするとぎっくり腰になることがあります。ぎっくり腰は腰痛位周辺の椎間関節や靭帯・筋肉・椎間板などを損傷するなどして起こるため痛みが激しく、損傷の程度によっては回復に時間がかかかることもあります。 腰はまさに体の「要」。心配してもしすぎることはありません。痛みが続いたり激痛をおぼえたときはすぐに医師の診察を受けてください。 腰だけでなくひざも痛めないように注意 スクワットで痛めやすいのは腰だけではありません。動作の中で重心の移動や脚の向き、しゃがみかたを誤るとひざも痛めることがあります。ひざを痛める人の多くは、スクワットでフォームが崩れ、重心がつま先寄りにかかっています。それは前かがみになってバランスが崩れるのを、つま先やひざで踏んばり上がる時にひざとその周りの筋肉の力だけで体を上げるためです。 それを避けるには、上半身の傾きをうまく調整することです。重心が両足の裏でしっかり支えられるポジションを維持して、「しゃがんだ時にひざがつま先より前に出過ぎない」を基準にフォームをチェックしながら行えばひざの痛みは防げるでしょう。 スクワットの正しいフォームのおさらい スクワットを正しい姿勢で行うのは簡単ではありません。しかし、以下の2つのポイントをしっかり抑えれば、難易度は下がります。 まず「背筋を伸ばし、椅子に腰掛けるようにしゃがむ」こと。これは重心をうまく調整するためです。重心が安定しないと狙った筋肉にうまく負荷がかからず思うようにトレーニング効果が得られません。また「足先はやや外側に向け、しゃがんだ時にひざがつま先より前に出ない」ようにするのは「前傾しすぎない」ためのポイントです。 しゃがんで立つ、実に簡単な動作ですが、そのためには重心がしっかり安定していなくてはなりません。動作と同時に重心を安定させる調整をする、それがスクワットの難しさです。なん度も練習することで自分にとってのベストなポイントが体でわかるようになれば初心者は卒業です。 スクワットは腰痛予防策をとってから行う 足腰が弱くなれば、生活自体が大きく変わってしまいます。買い物や楽しみの外出も敬遠し、引きこもりがちになり気持ちも落ち込んでしまう人もたくさんいます。それを避けるためにスクワットは非常に適したエクササイズですが、気をつけなければ腰痛など逆に体を痛める原因になります。 準備運動をしたり、フォームと重心の移動に注意し、それを確認するようにゆっくり動作しましょう。慣れるまでは速さは求めず、狙った筋肉にしっかり負荷がかかっているかを感じられるくらいのスピードが理想です。腰痛とその予防にはどんな点に注意することが必要なのか、しっかり対策してからスクワットを行うようにしてください。 RELATED POSTS 関連記事一覧 筋トレ効果が出始める期間を知ろう|筋トレの目的別効果も大公開 | 2020.04.06 人気の「ダンベルスクワット」で鍛えよう。正しいフォームや効果とは | 2020.04.06 男性用の白髪染め初めての方は必見|どこから見ても隙のない男へ | 2019.09.05