投資を始める前に株について学ぶ
株式は数ある投資のなかでも少額から取り組むことができるため、幅広い世代に人気があります。ただ、利益を出すだけでなくリスクもあるということをしっかり理解するために株に関する基礎知識を勉強しましょう。
今回は株式投資を始める前に知っておきたい基礎知識を中心に解説します。
そもそも株とは何なのか
株式投資を始める前にそもそも株とは何かを知る必要があります。株という言葉を聞いたことがある人はほとんどですが、その意味を説明できる人はかなり少ないのです。
資金を調達する方法
一定の株を発行している会社は株式会社と呼ばれています。会社は設備投資や商品開発をするために多額の資金が必要となります。その資金を調達する方法の1つが株の発行です。例えば製造・販売業であれば商品が売れれば利益が出ますが、そのための初期投資資金は自ら調達しなければなりません。
株は事業活動を行うための資金を投資してくれる人に発行するもので、投資者はその見返りとして利益の一部の分配を受けるなどの権利を得ます。株を発行することによって資金を調達できる株式会社は、金融機関から借り入れするのとは違って返済義務がないという大きなメリットがあります。
証券取引所で取引される
株式会社から発行された株は証券会社を通じて自由に売買することが可能となります。その取引の場となるのが証券取引所です。取引所といっても投資家が実際に足を運ぶ場所ではなく、株の売買の司令塔や監視所のような機能を果たす場所となっています。
証券取引所は証券市場とも呼ばれ、東証1部、東証2部、マザーズ、ジャスダックなどのランクがあり、それぞれの上場基準を満たした会社が取引を許可されます。具体的な取引所の種類には東京証券取引所をはじめとして、大阪、名古屋、札幌、福岡の5つがあります。国内で最も売買高が大きい東京証券取引所には3,600を超える企業が上場しています。
株を購入することで3つの権利が与えられる
株を購入した投資者は証券会社や証券取引所を介して株を自由に売買して利益をあげることができますが、それ以外にも3つの権利が与えられます。その1つが配当金をもらう権利です。株式会社は利益を出した際にその一部を分配金として株主に還元するというものです。必ず配当がもらえるとは限りませんが、株を保有するだけで利益が得られるため配当金が高い株に人気が集まる傾向があります。
2つ目は株主総会に出席して企業に意見を言ったり、重要な決議に賛成、反対の意思表示をしたりする議決権を有する権利です。株主総会は企業の経営に直接口出しできる貴重な場と言えるでしょう。3つ目は企業が解散する場合に財産の分配を受ける権利です。企業が債務整理をした後に財産が残る場合は、保有株数に応じて財産の分配を受けることができます。
株式投資で利益を得る仕組みついて
株式投資は利益を得るために行うものですが、元本保証はされないためある程度のリスクが生じることは覚悟しなくてはなりません。株式投資で利益を得る2つの方法について基礎的な内容を理解しておきましょう。
株の売買で利益を上げる
株式投資の基本は、株価が安い時に買って高くなったら売るというものです。例えば株価1,000円で100株購入すると初期投資は100,000円となります。株価が上昇して1,100円になった際に売却すると100円分の差額(100円×100株)10,000円の利益が得られます。このように株を売却して差額利益を得ることをキャピタルゲインと呼んでいます。
逆に1,000円で購入したのに株価が100円下がって900円となれば、差額分10,000円分を損するということです。大きな利益を狙うためには株数を多く購入したり、さまざまな企業の株に分散投資したりすることになります。大きな利益が期待できる一方で損する金額も大きくなる「ハイリスク、ハイリターン」が株式投資の大きな特徴と言えるでしょう。
保有することで利益を得る
株初心者でも株を保有するだけで利益を得ることができるインカムゲインがあります。株式は株主として証明されるある一定期間、保有を継続することで配当金を受け取ることができます。企業の業績が大きく伸びて1株当たりの配当金が5円となったとすると10,000株保有していれば、何もしなくても50,000円を得られるということになるのです。
また、日本特有の株式投資の特徴として株式優待制度があります。企業によって保有する株数や継続保有期間には違いがありますが、条件を満たせば株を保有しているだけで企業独自の優待サービスを受けることができます。テーマパークの無料入場券や宿泊券、食事券や企業商品など、優待内容は企業によってさまざまでこれを目的として株を購入する人も少なくありません。
株式投資の始め方
株式投資を始めるには、まず株を取り扱う証券会社に口座を開設することから始めなければなりません。また「どんな株を購入すればいいのか」「どのように注文すればいいのか」など、わからないことも多いでしょう。株初心者が株式投資を始めるためのノウハウについてまとめました。
証券会社に口座を開く
株式投資を始めるためには、株式を購入したり利益を得たりするために証券会社に口座を開設しなければなりません。証券会社には店舗型とネット型の2つがあります。店舗型は足を運んだり電話連絡したりして株の売買を行う必要がありますが、ネット型であれば自分の好きなときにオンラインで自由に売買ができます。
株式投資に必要となる口座は、一般口座、特定口座源泉徴収あり・なしの3種類です。特定口座で源泉徴収ありを選択すると株の売買で得た利益について自分で確定申告する必要はなく、特定口座の源泉徴収なしは、確定申告を行うために必要となる年間取引報告書を作成してもらえます。一般口座は確定申告だけでなく、そのために必要となる資料作成も全て自力で行わなければなりません。
口座にお金を振り込む
株の売買では株の購入金額だけでなく売買の都度発生する手数料を証券会社に支払うことになります。口座への入金方法には一般の銀行口座のようにATMや振替などの方法がありますが、なかでも便利なのがインターネットによる即時入金です。ネットを介しての入金となるため、24時間対応でいつでも入金が可能、即時反映されるため売買のタイミングを逃すこともありません。
ネット証券会社によっては入金手数料がかからないことも多く、それまでに使用している銀行口座からの振込入金なども簡単に行うことができます。現金口座と株式口座がリンクしていて、株式口座のお金が不足すると自動的に現金口座から移行されるサービスも便利です。
購入する株を選ぶ
株初心者でどの銘柄の株を購入すればいいかよくわからない場合は、身近で日頃から気になっている企業を選ぶのもおすすめです。普段の生活はさまざまな企業の商品やサービスで支えられています。気に入っていて長く使っている商品を製造・販売している企業を選ぶのも1つの方法と言えるでしょう。
1単位株の価格が高いものは避け安価な株を選ぶようにしましょう。配当利回りが高いもの、将来的に成長が期待できるものの現時点では株価が安いものを見極めることも大切です。
株が決まったら証券会社に注文をする
購入する株が決まったら証券会社に注文して株式を取得します。株の注文方法には指値、成行、逆指値の3つの方法があります。指値注文はあらかじめ値段を設定して買うものです。例えば現在105円の株があり割高であると考えて100円で指値注文すると101円以上で購入することはありません。ただ、株価が100円まで下がらないと売買が成立しないことになります。
成行注文は、現時点ですぐに買いたい場合の注文方法で、買いが集中して株価が大きく値を上げるときなどに急いで購入するときに向いています。株の売買が成立することを約定といいますが、実際に約定しないといくらで買えたかはわかりません。指値注文と違って必ず買えますが、思いもよらぬ高値で買ってしまうこともあります。逆指値注文は、100円以下になったら買う、売るなど条件を設定して注文をするものです。
株式投資を始める流れ | 選択の基準や種類 |
1 証券会社に口座開設 | 一般口座・特定口座源泉徴収あり・特定口座源泉徴収なし |
2 口座への振込 | ATM・振替入金・ネット入金 |
3 購入する株を決定 | 一単位株が高くない・将来性があり割安・配当利回りが高い |
4 株の注文 | 指値注文・成行注文・逆指値注文(一部の証券会社のみ) |
株式投資を成功させるコツ
株初心者が株の売買で初めから大きな利益を得ることは難しく、欲張ると大きな損をする可能性も高くなります。リスクをできるだけ抑えて確実に株式投資を成功させるために必要なコツやポイントについてまとめました。
最初は少額から始める
株式投資の利益は株価の上昇だけでなく保有株数にも大きく関係します。しかし、多くの株を保有するためには多額の資金が必要となるだけでなく、適切なタイミングを逃して売却することにより大きな損を抱えてしまうことになります。
株式投資には余裕資金を当てるのが一般的であり、生計を圧迫させてしまっては意味がありません。株に関する知識が浅いうちは無理をせず、少額投資から始めることが重要です。得られる利益は少なくなりますが、同時に大損してしまうリスクを抑えることもできます。勉強のつもりで少しずつ投資しましょう。
一つの銘柄だけに投資することは避ける
初めて株式投資する場合は1つの銘柄しか購入しないということもあるでしょうが、少し慣れてきたらなるべく一株集中投資は避けるようにしましょう。複数の銘柄を購入するにはそれなりの資金が必要となりますが、これによってリスク回避が可能となります。
例えば円高の影響を受ける場合は輸出関連株だけを保有していると損することになります。しかし、円高とは無縁の国内流通関連株を別に保有していれば、輸出関連株の下落分を補填することも可能となるでしょう。
相談窓口を利用する
株初心者は「どの銘柄を選べばいいのか」「どのタイミングで売買すればいいのか」など、さまざまな疑問があります。そんなときは、株式投資に対する知識や経験が豊富なプロにアドバイスしてもらえる相談窓口を利用するのも1つの方法です。
相談窓口には利害関係がない相手を選ぶことが重要なポイントです。銀行などの金融機関や証券会社は株式の売買で生じる手数料を利益にしています。したがって、企業にとって都合のいい銘柄を勧めたり、株価がある程度上昇しているのに売却させずに保有継続させたりすることもあるので注意が必要です。
フィナンシャルプランナーに相談する
ファイナンシャルプランナー(FP)は、資産運用や保険、貯蓄などのお金のことに関するプロです。金融機関や証券会社などに勤務するFPは、自社の利益を得るために商品を勧めることがあります。しかし、独立系のFPの場合は中立的な立場で意見を聞くことができます。
FPへの相談は有料であることが一般的であるため投資資金以外の費用が必要です。まれに無料で相談に乗ってくれるFPもいます。しかし、何らかの企業や金融機関と契約していることが多く、顧客の利益よりも契約会社の利益を優先することもあるため注意が必要です。
コミュニティに参加し投資家と交流を図る
株式投資を成功させるためのチャートの見方など、株の理論に関する書籍やネット情報は数多くあります。しかし、ノウハウやテクニックだけを習得しても利益を得られるとは限りません。実際に株式投資をしている人の生の声を聞きたいのであればコミュニティに参加することをおすすめします。
コミュニティでは例えば同じ銘柄で利益を得たいという共通の目的で、自分が持っている情報を惜しみなく出し合うことができます。直接的な利害関係がないため本音で語り合うことができるでしょう。なかには株価操作を目的とする悪質コミュニティもあるため、コミュニティの良し悪しを見抜く力も必要となります。
投資セミナーに参加する
国内には無料で参加することができるさまざまな投資セミナーがあり、金融機関や証券会社が主催して行われることが多いのが特徴です。自社が関係する金融商品のPRを兼ねていたり新規口座開設を促したりするなど、企業としての利益も関連していることから懇切丁寧なセミナーが実施されています。
投資信託の選び方や積立NISA、分散投資の仕方など、投資者のニーズに合わせてさまざまなセミナーが開催されています。金融商品のPRであることを十分に理解しながら、ノウハウなどを学ぶ場として活用するといいでしょう。
株式投資をするときの注意点
株式投資は必ず利益が出ることが保証されるものでなく、場合によっては投入資金を失うリスクもあります。また、利益が出た場合は確定申告をする必要もあります。投資詐欺の注意も含めて株初心者が株式投資をするときの注意点についてまとめました。
株式投資はハイリスク・ハイリターン
株式投資には数週間~1、2ヵ月で利益を得ようとする短期投資のほか、数ヵ月~1年、数年にわたって株を保有する中長期投資があります。短期で大きな利益を追求することは可能ですが、その分損失の可能性も大きくなります。これが株式投資はハイリスク・ハイリターンだと言われる所以です。
また、自己資金内で投資する現物取引のほか、証券会社から株式を借りて投資を行う信用取引があり、100万円の自己資金しかないのに500万円ほどの投資も可能です。大きな利益を得る可能性もありますが、下落すれば自己資金をはるかに超える損失を生むことになります。
確定申告が必要
株式で得られた利益には給与所得とは別に申告分離課税が課せられるため、確定申告をする必要があります。サラリーマンなどは企業が源泉徴収しているため個人で確定申告することはほとんどないでしょう。株式投資のために開設した口座が特定口座で源泉徴収ありの場合は、利益が出た場合は証券会社が代わって納税してくれるため確定申告の必要はありません。
特定口座で源泉徴収なしの場合や一般口座の場合は、個人で確定申告をする必要があります。税率は20.315%(所得税15.315%、住民税5%)であり、特定口座で源泉徴収ありの場合は利益が口座に振り込まれる段階で税金が引かれています。
投資詐欺にあわないように注意する
ニュースでも頻繁に流れているように投資詐欺による被害は後を絶ちません。元本保証や高利回り、毎月の配当金などを謳って全国規模で資金を回収する悪徳業者や詐欺師は数多くいます。コツコツと溜めてきた貯金や退職金などをつぎ込み、全て失ってからでは手遅れになります。
株式投資に詳しいアナリストを語って株式の知識の浅い投資者をだます手口も横行しています。実在しない未公開株の紹介や自動売買システムソフトの購入勧誘などもその1つです。リスクを伴う株式投資なのにあまりもうますぎる話の場合は、決して乗らないようにしましょう。
初心者におすすめの株に関する本の紹介
株式投資に関する書籍はさまざまな種類があります。しかし、あまりにも専門的過ぎて1ページ理解するのに何分もかかっていたら実用的とは言えません。そこで、株初心者でもわかりやすいと評判のおすすめの株に関する本を紹介します。
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株式投資を始める前にある程度の基礎知識は身につけよう
株式投資は資産運用のなかでも比較的取り組みやすいため、学生や主婦にも人気があります。ただ、株式投資はハイリスク・ハイリターンとなるため、大きな利益が得られる可能性がある一方で資産を失うリスクも伴います。
株初心者であっても、株式投資の流れやリスク回避のための方法など、ある程度の知識が必要です。最低限の基礎知識やノウハウを身につけてから株式投資を始めるようにしましょう。