住宅ローン金利の仕組みから推移を知る
住宅ローン金利はわかりにくいものですが、今後関わる可能性がある人は特に知っておいた方がよいです。そこで、今回は住宅ローン金利の仕組みから推移をたどってみます。
基礎知識、金利の推移、銀行別の金利の推移、変動の要因、推移予想、リスク対策を一つ一つ解説していきます。
住宅ローン金利の基礎知識
まずは、住宅ローンの基礎知識です。なぜ金利が重要なのか、金融機関で使われる言葉の意味、低金利の時にメリットになることについてお伝えします。
住宅ローンでなぜ金利が重要なのか
金利という言葉に馴染みはあっても、どういうものなのかわからないという人も多いと思います。簡単に言いうと、金利とは借りている金額に応じて払う利息のことです。つまり、借りているお金にプラスして払うお金になります。
借りている期間が長いほどにトータルで支払う金額は増えるので、利息もそれだけ多く支払うということになります。そして、金利が高くなると元金の返済額も少なくなってしまうので、返済のスピードが遅くなるのです。つまり、払っても払ってもまだ借金は残っているという状態になります。このようなことから、金利次第で月々の支払額も変りますし、返済金の減り方も変わっていきます。住宅ローンにおいて、金利は重要なポジションにあります。
金融機関で使われる言葉の意味
まずは店頭金利ですが、金融機関により呼び方が違います。店頭表示金利、基準金利などという場合もあります。
次に金利引き下げ幅ですが、これは金融機関によって異なる本来の金利を何%~何%引き下げるという幅のことです。
最近の住宅ローンは本来の店頭金利より低く表示されます。その引き下げ幅は金融機関の審査や交渉で決まります。
そして、適用金利は実際に支払う金利のことを言います。店頭金利から引き下げ幅を差し引いたのもで、実際に払う金額に関係のある金額です。
特約期間終了後の金利引き下げ幅は固定金利選択型の場合、特約期間が終了しますと金利が変わるという事がです。たとえば、10年間は店頭金利より2.1%の引き下げが11年目から1.5%の引き下げに変更するといったことになります。
ライフプランが作りやすい固定金利
固定金利はその名のとおり金利の額が固定されていますので、今後の生活を考える上でわかりやすいです。全期間固定、段階金利型、固定金利選択型の3種類があり、それぞれにメリット、デメリットがあります。下記の表でご確認ください。
メリット | デメリット | |
全期間固定 | 全期間、金利が固定なので返済額が変わらないため、低金利時に借りるとその低い金利が維持できる。一定の金額の支払いなので、資金計画が楽。 | 金利次第で支払が大変になることがある。 |
段階金利型 | たとえば10年間は同じ金利で11年目に金利が変わるが、低金利の時に借りれば決められた年数は低金利の支払いで済む。比較的、資金計画はたてやすい。 | 途中で金利が一気に上がってしまうリスクがある。 |
固定金利選択型 | 固定金利期間があり、終了後に固定金利にするか変動金利にするか選べるので、金利状況を見極めることができる。 | もしも金利上昇が続くのであれば、固定金利の方が支払が楽ということもある。また、逆に金利下降が続く場合は変動金利にして置いた方が支払が楽になる。 |
低金利のときにメリットがある変動金利
次に低金利の時にメリットを感じられる変動金利を変動金利型と上限金利特約付変動金利の2種類を紹介します。それぞれメリットとデメリットがありますので、ご覧ください。
メリット | デメリット | |
変動金利型 | 年2回の見直しはあるのですが、5年間は金利が同じなので低金利の時に借りると有利。 | 5年間の間に急激な金利上昇があると元金に未収分の利息がくみこまれてしまうことがある。また、適用金利が上がると5年ごとに返済額が増えてしまう。 |
上限金利特約付変動金利 | 上限があるので、年2回金利の見直しがあってもさほど上がらない。低金利の時や金利下降の時は低金利のままでいられる。 | 設定した期間ごとに返済額が変わり、適用金利が上がると返済額も高くなる。また、変動型よりも金利が高い。 |
これまでの住宅ローン金利の推移
では、これまでの住宅ローン金利がどのように推移したのか、紹介します。フラット35、10年の固定金利、バブル以降の3%未満の変動金利と言った興味深い事柄です。参考になさってください。
直近では上昇傾向のフラット35
2017年からじわじわと上昇傾向にあるのがフラット35です。人気の理由は最大35年まで固定金利で借りられることです。2018年現在の金利は約1.4%なので、今融資を受けたとしたら最大35年間1.4%の金利になります。このように、長期間金利が変わらないことの他にも保証人や保証料不要、月々の返済額がわかりやすい、繰り上げ返済の手数料なしといったメリットがあるフラット35です。
また、フラット35は融資率で金利が変わるという特徴があります。どのようなものかといいますと9割以下の融資であれば、金利が大きく下がるのです。つまり、住宅の代金の1割り以上の自己資金が必要ということになります。たとえば、3000万円の住宅ならば自己資金は300万円必要ですが、それに加え諸経費が300万とすると合わせて600万円必要ということになります。こういった資金が用意できれば、フラット35は低い金利で利用できるのです。
最低と最高の差が開く10年の固定金利
2018年現在の金利は昨年度の2017年同様、最低と最高の金利差が約0.3%ほど開いています。最高金利、最低金利を別々にして見てみますと最高金利は上昇傾向にあり、最低金利は下降傾向です。
10年の固定金利が影響を受けるのは、10年国債の金利の動きです。2018年1月以降は10年国債の利回りに変化がなかったため、ネット銀行では最低と最高の差は特に開きませんでした。しかし、4月以降の金利の引き下げにより、主要都市銀行の金利の最低金利、平均金利ともに下がり、最高との差が開いたのです。このように常に金利の推移がありますので、ローンを組む際はこういった金利の動きのみでなく、国債の金利などにも目を向けることが大事です。特に10年の固定金利となると、同じく10年というところで10年国債と影響しあうようになるのかもしれません。
バブル期以降は落ち着き3%未満の変動金利
バブル期は8%超えでもバブル期以降になると、金利は落ち着き3%未満の変動金利になっています。しかし、金融機関による引き下げがありますので、実質でいうと0.5~1%程度でしょう。どちらかというと、主要都市の銀行よりもネット銀行の方が金利は安い傾向にあります。
主要都市銀行の変動金利は2018年1月以降、最高金利は落ち着きました。それに比べて平均金利と最低金利は4月以降に少々下がったのです。というのも、主要都市銀行のキャンペーン金利によるところが大きかったのでしょう。なんと0.5%を下回る金利を出しましたので、今後はこのように変動金利に競争がでてくるかもしれません。最近はネット銀行が金利の安さから人気が高いです。もうバブルのころのような8%超えはないでしょうし、仮にそのようなことになれば困るという人は多いでしょう。
銀行別の住宅ローン金利の推移
次は具体的に銀行別で住宅ローンの金利の推移を紹介しますので、今後の参考にしましょう。メガバンクの住宅ローン金利、地方銀行の住宅ローン金利、ネット銀行の住宅ローン金利について考えてみます。
メガバンクの住宅ローン金利
では、ここではメガバンクの住宅ローン金利として、三菱UFJやみずほフィナンシャル、三井住友などのメガバンクの金利推移を表で紹介します。2018年の11月のものです。その推移をご覧ください。
変動金利 | 10年固定金利 | |
三菱UFJ | 年0.625%~年0.775% | 年0.950% |
みずほフィナンシャル | 年0.625%~年1.075% | 年1.350% |
三井住友 | 年0.625%~0.775% | 年1.250% |
地方銀行の住宅ローン金利
次は地方銀行の住宅ローン金利の推移です。北陸銀行、広島銀行、中国銀行の金利推移を表で紹介します。こちらは2018年11月で見てみます。
変動金利 | 10年固定金利 | |
北陸銀行 | 0.975% | 1.150% |
広島銀行 | 取り扱いなし | 1.200% |
中国銀行 | 0.775% | 0.850% |
ネット銀行の住宅ローン金利
次はネット銀行です。2018年11月のじぶん銀行や楽天銀行などのネット銀行の金利推移を表で紹介します。上記のメガバンクや地方銀行と比べてみましょう。
変動金利 | 10年固定金利 | |
じぶん銀行 | 0.457% | 0.680% |
住信SBIネット銀行 | 0.428% | 0.860% |
住宅ローン金利は4つの要因で変動
次は住宅ローン金利が4つの要因で変動することについて、紹介します。10年物国債の推移に固定金利は連動すること、短期プライムレートで変動金利が決まること、変動金利の低下には限界があること、好景気になると金利が上昇することについて考えてみましょう。
10年物国債の推移に固定金利は連動
固定金利は10年物の国債の流通利回りを指標に決められています。この償還期間10年の国債の流通利回りを「新発10年国債利回り」といい、長期金利の基準になっているのです。住宅ローンの固定金利の利率はこの長期金利を重要指標にしていますので、10年物国債と固定金利は切っても切れない関係になります。
流通市場では銀行側がマイナスになってしまう国債を買っても日銀が引き取ってくれることになっているため、銀行は損しません。このように、銀行は国債の推移があっても大きな被害はないので国債で経営悪化はないはずです。「店頭基準金利」や「店頭表示金利」とも呼ばれる店頭金利を基に銀行が適応金利を決める際も、無理な取引で最悪なことにならないようによく見据えて決めます。このように連動される国債や金利によって銀行は守られ、住宅ローン金利の変動の要因にもなっているのです。
短期プライムレートで変動金利が決まる
短期プライムレートとは、銀行が企業に融資する際に適応する最優遇の貸出金利のことです。一般的に短期プライムレートの基準の一つはメガバンクのレートになります。その他に、各都道府県の有力な地方銀行のレートも基準の一つになっているのです。そして、本レートをもとに各企業や個人向け変動金利型の住宅ローンや教育ローンなどの貸出金利が決められ、半年ごとに見直しが行われます。
店頭金利は短期プライムレートに1%上乗せした水準なので、短期プライムレートは住宅ローンにも影響を与えます。特に、上記にも書きました変動金利型の住宅ローンは短期プライムレートによって変動金利が決まりますので、その影響は大きいです。
変動金利の低下には限界がある
最近、ネット銀行が人気なのはネットで手軽に操作できることもありますが、その金利の安さも大きいでしょう。このようにネット銀行などが台頭し銀行間の競争が激しくなるにつれて、変動金利は下がります。しかし、こういった変動金利の低下にも限界はあるものです。
現状の金利はコスト割れ寸前です。2017年の時点で銀行の変動金利はすでに0.5%前後というコスト割れ寸前状態ですから、これ以上下がることは考えられません。それに、住宅ローンにはさまざまなコストがかかっています。経営努力で下げられるものもあれば、団信特約料のように保険会社に支払うものもありますから、すべてを下げることはできないのです。このようなことから考えても変動金利の低下には限界があるのでしょう。
好景気になると金利は上昇
世界的に金利が上昇するのは、世の中にお金が出回る好景気のときです。金利を決めるのは銀行ですから、日銀が政策金利を変えなくても、世の中が景気よく回っているとなると銀行は今後の期待から金利を上げます。
住宅ローンを組む場合金利は安い方がよいでしょうから、景気の良い時は考えものです。できれば、少しでも金利が安い時に固定金利で借りるとよいかもしれません。なぜならば今後景気がよくなり、金利上昇の気配があるからです。固定金利であれば、途中で金利上昇があっても借りた時の金利で済みます。このように、景気によっても金利が変動することを知っておくと今後のためによいです。
住宅ローン金利の推移予想
今度は、住宅ローン金利の推移予想です。人口の減少によって金利の上昇にブレーキがあるか、短期ならば金利の水準に変化なしなのか、長期なら金利上昇はあるかについて、わかりやすくお届けします。
人口の減少によって金利の上昇にブレーキ
人口が減少すると、金利の上昇にはブレーキがかかります。つまり、もしも人口減少時に金利を上げてしまうとするとお金を借りる人が減ってしまうことが考えられますから、銀行は金利を上げないのです。
2030年の時点で日本の人口は減っていますし、今後も少子高齢化で増えることは考えられません。ですから、これから先は急激な金利上昇は行われないでしょう。つまり、金利上昇の背景にはお金を借りたい人の増加がみられるのですが、高齢者が増える世の中ではそのようなことは考えにくいものです。
短期なら金利の水準に変化はなし
2018年の住宅ローンの金利は最低の水準です。というのも、来年10月の消費税の増税もありますし、経済や物価も不透明ですから、このような時にいきなりの金利の上昇は考えられません。
日銀は当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持することを想定するという旨を発表していますので、ここ2~3年という短期で見ますと金利の水準に変化はないと見てよいでしょう。もしも、このような状態で2%や3%と金利が急上昇してしまえば、住宅ローンを組む人は減少することが考えられます。金利上昇は返済額に大きく影響しますから、生活に直結するものなのです。そう考えますと、金利上昇の傾向が見られればローンを組むのを躊躇するのも無理のない事でしょう。
長期なら金利は上昇する
日本は今はまだ、経済成長をしているとは言えない段階ですが、国は施策で経済成長を目指しています。もしかしたら、それが実現して世の中が好景気になり、金利がこの先上昇する可能性もあるのです。つまり、長期で考えるとこのままの状態が維持できるわけではないということになります。
逆に国の施策が失敗に終わったら、財政リスクになることもあるでしょう。そうなるとツケは国民に回ってきます。国の財政確保のための金利上昇も考えられるのです。そう考えますと、変動金利で住宅ローンを借りると将来的に負担が増すという危険性があります。住宅ローンを組む前にあらゆることを想定して考える事が大事です。
住宅ローン金利のリスク対策
最後に住宅ローン金利のリスク対策を紹介します。ローンの期間を短くする、上昇リスクを下げるための早めの固定金利、借り換えについて考えてみましょう。
ローンの期間を短くしてしまう
ローンを払う期間を短くすれば、変動金利にしていた場合は支払額の増加を抑えられます。その上、返済期間が短いために利子の総額も少なくなるでしょう。
変動金利の場合、低金利の時であれば返済額が少なくて済みます。もしも、資金に余裕があれば、少々支払額を多目にして早めにローンを終えるです。そうすれば、将来金利が上がっても安心できます。ただし、家庭の状況にもよりますので、家族と相談して無理のないようにした方がよいです。今後は消費税が上がり、生活に支障が出る可能性もあります。成長期の子どもがいる家庭であれば、食費を極端に抑えて子どもの成長を妨げることになってしまっては大変ですから、よく考えましょう。
上昇リスクを下げるなら早めの固定金利
長期ローンの場合は変動金利で借りていると金利上昇のリスクが伴いますから、思い切って金利の低いうちに固定金利で契約してしまうということです。固定金利であれば、この先金利上昇が起こっても借りた時の低い金利で返済できます。
5年後、10年後となると、もしかしたら今よりも高い金利になっている可能性があります。なぜなら、今が最低の金利でコスト割れ状態なので、これよりも安くなることは考えにくいです。ただ、ここ2~3年ならば急上昇はないでしょうが、もっと先だとどうなるか分かりません。それを見据えての固定金利ということです。
変動金利で契約しているなら借り換えを検討
変動金利で契約しているのであれば、借り換えも金利対策になります。なぜならば、金利の低下や減税政策による、固定金利に借り換えした方が、返済総額が安くなる場合があるからです。このあたりを誤解している人も多いので、シミュレーションでよく考えましょう。
新たに借りている人はゼロ金利の恩恵を受けていますが、すでに借りているという人は高い金利で借りている場合もあります。今一度、金利がどうなっているのか見直すとよいです。そして、もしも借り換えをしたらどうなるかということを家族でよく話し合ってください。
情勢を見極め住宅ローン金利を決定
金利のしくみはかなり複雑ですが、世の中の情勢が多く関係しているのです。こういったことをよく見極めて、住宅ローンを組む場合どうすればよいか考えるとよいでしょう。その際、どのような借り方があるのかも、しっかりと把握しておくと間違いはないです。
住宅は一生に一度の大きな買い物ですから、慎重に動いた方が得策です。何も考えずに、住宅ローンを決めるということはしないようにしましょう。じっくり考えると良い考えも浮かぶものです。