会社に負担をかけずに辞められるかがポイント
管理職の場合、会社の中で責務ある立場です。一般の職員が退職するのとは違い、会社の中での影響も外での影響も考えなければなりません。管理職となっているという事は会社でのポジションや抱えている仕事の重要度なども含めて退職までのやらなければいけないことがたくさんあります。特に仕事の引継ぎなど会社内の自分の仕事をうまく伝達できるかが重要になってきます。
管理職の退職によって会社に与える影響
管理職という立場の人が会社を辞めることになれば、企業はそれなりの準備が必要となります。管理職という立場になれば会社の仕事内容はもちろん、内部事情にも精通している人が多いです。勿論指導する立場にある人ですから、退職する事によって仕事の効率がぐっと落ちることも考えられます。
従業員にとって頼りにしてきた、また指標としてきた人がいなくなるというのは、残された人材にも影響を与えてしまうことはあります。
また企業の外、取引先や顧客にとっても「この人がいたから取引してきた」「この人がいたから購入した」という人もいるはずです。こうした取引先や顧客に対して自分がいなくなった後の担当の紹介などをおこないましょう。
管理職が辞めるという事は会社の内部、外部ともに与える影響が多いという事を理解し、慎重に退職まで進めていく必要があります。
退職の意思を伝えるタイミング
退職の意思に関しては就業規則等企業によって違いがあるとしても、通常、1ヵ月くらい前に退職願を出すのが良いといわれています。自分の退職の意思が決まったら早めに自分の上司に報告、相談をしましょう。しかし管理職の退職は会社にとって大きな影響を与えることもあるため、意思の決定からなるべく早く伝えておく必要があります。
退職日のどれくらい前に言うべきか
労働基準法をみると退職については退職日の2週間くらい前までに告げることが決められています。しかしそれぞれの企業に就業規則があり、そこで期日が決められていることもあるので確認が必要です。
管理職の場合には引継ぎ等も通常の社員とは違い、数多くの仕事の引継ぎが必要となり時間もかかることが予想されます。そのため、一般社員よりも早めに意思を伝え自分も会社側も退職の準備を早めに始めることが必要でしょう。
退職時期は繁忙期などを考慮して
これは管理職以外、ほかの一般職の方にもいえることですが、繁忙期などに退職届を出すのはやはり企業の中の一員としてマナー違反です。繁忙期はどこも人手不足なので自分が退職の規定通りに退職願を出して退職したとしても、新しい人材の雇用が間に合わないこともあります。
今回の場合、管理職の退職なので繁忙期に退職となれば会社に大きく影響します。一般の社員が辞めることでも大きな痛手となる時期なので、退職の時期は可能であれば繁忙期をずらした方が良いです。
有給消化を考慮した退職日設定を
企業によっては有給休暇を消化して退職する事が決まっていることもあります。この場合、残りの有給日数がどのくらいあるのかを確認し、引継ぎに影響しないように有給を消化し、その上で退職日を決めることが必要です。
会社側と相談し有給をうまく消化しつつ、困ることがないように引継ぎできるスケジュールを決めていきましょう。会社のことをしっかり考えて退職スケジュールを組む事は円満退社に欠かせない事です。
伝え方にも配慮の気持ちを持とう
退職するにあたってしっかりと理由を伝える必要があります。環境が違っても別の形でつながる可能性は大いにあるので今後自分がどうするのかなどちゃんと伝えましょう。
会社への不平不満は口にしない
管理職であっても会社に大きな不満がありそれが理由となって退職する事もあります。どんなに会社のことで嫌な思いをしてきたとしても、嫌な人がいたとしても、会社の悪口を言う事だけは避けましょう。長く会社にいた人の言葉は影響力が強く、社員がこの不平をきいてしまったらそれと同じような気持ちをもち、仕事がうまくいかなくなる恐れもあります。
退職理由としてしっかり自分の意思を伝える
管理職を失うのは企業にとって大きな痛手です。今まであまりいい評価をせず嫌な思いをさせてきたと感じた企業側が給料をもっと上げるとか、待遇をよくするからとどまるようにと引き留めに入ることもあります。管理職が一人いなくなることでこなせる仕事の量はかなり減りますし、後輩の指導もほかの人が行わなくてはならなくなります。
こうした会社の引き留めに合わない用意するためにも、退職理由ははっきりと伝えておく必要があります。自分の意思をしっかり伝え、退職する意思が揺るがないものだと知らせることができれば会社も無理に引き留めることをしないはずです。
引き継ぎは余裕をもってしっかりと
管理職の退職は引継ぎ事項も非常に多くなるので、余裕をもったスケジュールで行う事が大切です。時間が思ったよりもかかり過ぎて引継ぎが中途半端になることもあります。そうならないように、余裕を持ってしっかり後輩たちに仕事を引き継げ様に準備しておきましょう。
引き継ぐ内容や量を把握することが大事
まず、引継ぎすべき事項を漏れなく書き出し、その上で仕事を引き継ぐ人にわかりやすく伝えていくことが必要です。
そのためにも普段から自分が行っている主な業務を改めて整理する必要があります。今抱えている業務を理解していれば、誰に何を引き継ぎすればいいのか、引継ぎする人材についても考えておくことができます。自分自身で引継書などを作り、自分が持っている仕事をきれいに引き継げるようにスケジュールを組んでおくと安心です。
マニュアルや業務引継書の作成
自分が行ってきた仕事でほかの人が触ったことがない業務があることもあります。管理職になると企業の主軸に関わる仕事も行う事があるため、その仕事はほかの社員が知らないこともあるわけです。こうした仕事を引き継ぐ時、しっかりとマニュアル化した仕組みを作り、全体で仕事を管理する必要があります。
業務引継書を作りそれに沿って引継ぎしていくことで仕事の漏れもなくなりますし、マニュアルなどを作成しておけば、後任者の負担を少しでも減らすことができるのです。
ミスを抑える引き継ぎのコツ
引継ぎする時には仕事のミスも出てきますし、最初は慣れないのでわからないことも多く一気に引継ぎするというのは不可能です。そのため、自分の仕事を後任する人とまず一緒に作業する、その後、今度は後任者に一人でさせてみてその中で問題点や疑問点を解決していくといいでしょう。
こうした方法をとるためにも、引継ぎの時間は余裕を持つことが必要ですし、後任者の選定も重要となるのです。
取引先の担当者に後任者を紹介する
管理職の退職となると仕事の中で取引先に後任者を紹介する数も多くなります。持っている仕事が多かった、また取引先が多いという場合にはこの作業も時間がかかります。
顧客、取引先で引継ぎが必要なところをチェックし、直接紹介できるように取引先、顧客を巡ることもスケジュールに入れておきます。退職する人が直接次の担当者を連れていくこと、またその担当者がどういう人なのかを説明しておくことで取引先も顧客も安心できます。
顧客や取引先への挨拶
顧客、取引先については自分も退職の挨拶を丁寧に行うべきです。これまで管理職まで上り詰めてこれたのは取引先、顧客あってのことです。お世話になった方々に、自身が感謝の気持ちを伝えるため、メール、手紙、直接お会いするなど相手の方に合わせた調整を行いましょう。
直接伺えない相手へはメールで連絡する
取引先でも海外だったり国内でも挨拶に行ける距離にない場合、最近はメールで退職挨拶とすることが多くなっています。ただし、出来る限り直接挨拶に行くことがマナーです。遠方でも退職までに出張で行く機会があればその時直接伝える方がいいでしょう。
退職の挨拶メールを送る際の注意点
退職の挨拶メールを送る際にも注意点があります。取引先も顧客も担当の方が退職となれば困る事や不安に思うこともあるわけです。ある程度余裕を持って退職の挨拶メールを送っておくことで、聞いておきたい事を伝えることもできますし、次の担当者の紹介を行い、取引先や顧客の心配、不安を無くすことができるでしょう。
退職日の2~4週間前に送る
管理職の場合、取引先も顧客も多いことが予想されますので、早めに退職についてお知らせした方が相手にとっても安心でしょう。引継ぎの関係もあり、後任者を釣れて挨拶に行く前に退職の報告をしておく必要があります。そのため、少なくとも退職日2週間前、余裕を持って通常は4週間程度前にメールを送っておきます。
2週間から4週間くらい前に退職する事を伝えておけば、取引先としても新しい後任者を知ることもでき、また取引先としての仕事の引継ぎなど余裕を持って行う事ができます。顧客についても今まで何もかも任せていたという場合、その人がいる間にしておきたいことなどがあるはずです。
事前に退職する事を伝えていなかったことでトラブルとなることもあります。挨拶すべき顧客、取引先をすべてチェックしメールをおくる人、直接挨拶に行く人、また直接行く場合には相手の都合も確認し、時間をとってもらうことが必要です。
退職日と後任者は必ず明記する
メールには必ず退職する日、後任者が誰になるのか、その後任者はどういう立場なのかなど明記するようにします。顧客や取引先に退職の挨拶をしないで退職する日が近づいてしまうと、後任となるのが誰なのか、相手はまったくわからず誰に連絡すればいいのか戸惑います。
そのため、早めにメールしその中に退職日、後任者を明記しておくのです。退職日までは自分に連絡をもらって後任に説明してもいいですし、何回か退職前に後任の担当と一緒にやり取りできる方が安心という人も多いです。
退職後の連絡先を明記している人もいますが、これは通常明記しません。そこに連絡をもらっても退職してからはその企業に関する業務はできませんし、その方の相談に乗ることもできないのですから、退職後の連絡先をのせておく必要はありません。
お詫びと御礼の気持ちを伝える
通常はお世話になった挨拶、感謝の気持を伝えに行くわけですから、直接伺うのが筋です。しかし遠方だったりどうしても時間が合わないなどから直接いけない時もあり、その場合にメールを利用します。直接いけない事へのお詫びとこれまでお世話になった感謝の気持ちなどを込めてメールしましょう。
退職の挨拶メールの例文
退社日の明記 | 後任者の紹介と御礼 | 退職後の連絡先は書かない | |
社外への挨拶メール例文 | 件名:退職のご挨拶(××株式会社 鈴木) 本文: 私事で大変恐縮ですが、一身上の都合により3月31日を持って退社することになりました。 | ●●様にはこれまで何かとお力添えをいただき、心より感謝しております。 ××部長には入社当初から目をかけて育てていただき、大変多くのことを学ばせていただきました。 後任は同じ部署の◎◎が務めさせていただきます。 | 最後になりましたが、貴社のご発展と●●様のますますのご活躍を心よりお祈り申し上げます。 |
相手によってはハガキや手紙で
年配の方などの場合、メールが苦手だったり、メールなんて失礼だと感じる人もいるので、その場合、はがきや手紙を書くといいでしょう。年配の方は特に直筆の手紙やはがきが来ると丁寧と感じますし、何より自筆の手紙は気持ちを強く感じさせることができます。
顧客の中には古くからお世話になってきた方もいると思いますし、取引先の方の中には育ててもらったと感じる方もいるでしょう。そういった方にはより気持ちが伝わりやすいように手紙を丁寧に書き、本来直接行くべきところが行けずに申し訳ないという謝罪と、これまでお世話になったことへの感謝を伝えます。
字が綺麗だといけないことはなく、字が下手でも気持ちはしっかり相手に伝わります。一言一句丁寧に書くことで相手に気持ちがしっかり伝わるはずです。
知っておきたい退職後の競業避止義務について
退職する事が決まり引継ぎ等も円滑に進んでいるとしても、必ず理解しておくべき重要なことがあります。それは退職後の競業避止義務のことです。あまり聞きなれない言葉ですが、サラリーマン、管理職は知っておくべき重要なこととなります。
通常退職した後は関係ないと考えられますが、就業規則に競業避止義務がうたわれていた場合や、雇用契約に期間が書かれていた場合、退職後も義務が継続する事があります。すると最悪、退職金の返還を求められたり、かなり高額な損害賠償請求をされることもあります。
競業避止義務とは
競業避止義務というのは退職前の会社の業務と競合する企業に再就職する事、また同業種の会社を立ち上げ手はいけないことを言います。今までの会社で培ってきたノウハウを別の企業の利益に利用する事を阻止する、また新しい企業でそれを活かすことを防止するために作られた義務です。
在任している際には取締役会の承認泣く、会社の営業部類と同じ業務行う事を禁止されています。退職後にもこの義務を課したいというばあいには、就業規則などにうたっておく必要があります。これがある場合、競業避止義務に従いそういった競業企業に就職する事は出来ませんし、新しく競業する新会社を設立する事は出来ないのです。
就業規定などを確認しておこう
退職後の競業避止義務に関して管理職であってもよく知らないという人が結構多いのです。就業規則に書かれているかどうかという事がポイントになりますが、就業規則関係なくこうしたことはいけないのだと思っている方もいますし、競業避止義務事態を知らないという人もいます。
しかしその後の勤め先によっては違反したと損害賠償請求されたり退職金の返還を求められるという事もあるので、競業避止義務のことを理解しておくこと、また就業規則を必ず確認しておくことが重要です。就業規則に合わせて雇用契約書を確認し、「存続期間の明記」などがないかどうかも合わせて確認しましょう。
立つ鳥跡を濁さずで新しいスタートを切ろう
管理職が退職するというのはそれ程簡単なことではなく、企業にとっても関係会社、また取引先や顧客にとっても大きな出来事です。一般の従業員が退職する事でも、取引等に精通していた社員なら影響が出てきます。しかし管理職の退職は企業そのものに打撃となることも多いのです。
そのため、引き留めに合うことも多くなかなかやめることができないと悩む管理職も多いといいます。そうなることがないように、管理職が退職する時にはタイミング、引継ぎのことなどをしっかり考慮し周囲の方と円満な形で退職する事が重要です。
もう無理と思って退職する会社でも自分がこの地位になるまでお世話になり、時に育ててもらった会社です。その恩義を忘れることなく飛ぶ鳥跡を濁さずの精神を持って、しっかり円満退職に持っていくことが必要です。気持ちよく退職し感謝の気持ちを持って次のスタートを切ることができるかどうか、それは自分の行動にかかっています。