住宅ローンはどのくらい支払うのか知りたい
マイホーム購入にあたってまず考えるべきなのは、住宅ローンを含めたトータルコストです。初心者の方はついつい住宅ローンそのものの返済プランのみを考えがちですが、実際はそれ以外にも印紙代や登録免許税、事務手数料などの各種費用が必要となり、その分だけトータルコストが上乗せされることになります。
住宅ローンに付随して発生する諸費用の内訳と基本相場について具体的に見ていきましょう。
住宅ローンの諸費用について
ローンを組む際に返済額のみを計算していたのでは、長期的なスパンで必ず誤差が生じることになります。
通常はローンの契約時に手数料などの諸費用についても具体的に説明されますが、契約者本人も事前にトータルコストについて詳細にシミュレーションを行うことが重要です。コスト面で誤差が生じないようにプランをその都度修正していく必要があるからです。
相場は物件購入価格の5%から10%
住宅ローンにまつわるアンケートによると、ローン完済を経験した人のうちおよそ8割が「ローンの諸費用は購入価格の5%から10%以内におさまった」と答えています。
パーセンテージだけを見るとそれほど大きくない金額のように感じられるかもしれませんが、仮に物件の購入価格が4000万円だとすると諸費用だけで400万円を超えてしまいますから、諸費用をいかに上手にカットするか、ということが住宅ローンの負担を軽減する上でのポイントになります。
ただし、住宅ローンの返済期間が長くなると利息による負担が嵩んでしまい、諸費用のほうも上記のパーセンテージではおさまらない場合があります。また、フラット35を利用する場合は別途手数料が発生しますので、そのあたりも事前に考慮に入れておく必要があります。
諸費が発生するタイミング
住宅ローンに付随して発生する諸費用としては、印紙代、登記手数料、事務手数料、火災保険料などがあります。
印紙代は住宅ローンの契約時、事務手数料は融資実行時、火災保険料は保険会社との契約時に支払うことになります。
このように、諸費用が発生するタイミングはそれぞれの項目ごとに変わってきますので、まずは最低限支払うべき諸費用の内訳について詳細を把握し、それに基づいてトータルコストをシミュレーションしましょう。
住宅ローンの諸費用の主な内訳について
住宅ローンの諸費用には手数料や保証料などが含まれます。それぞれの費用については事業所や購入価格の規模に応じて変動しますので、シチュエーションごとに大まかな相場を把握しておく必要があります。住宅ローン諸費用の内訳について詳細を見ていきましょう。
住宅ローン 融資事務手数料
住宅ローンの融資審査に通り実際に融資契約が結ばれると、融資事務手数料が発生し原則として住宅ローンの完済後も返還されることはありません。融資事務手数料の納付方法には定額方式と定率方式があり、定率方式ではトータルの借入額の0.5%~2.5%程度を支払うのが一般的といわれています。融資事務手数料は金融機関によってばらつきがありますので、少しでも手数料が低い金融機関を選ぶことによってトータルコストを削減することにつながります。
住宅ローン保証料
住宅ローン契約時には事務手数料以外に保証料が発生します。この保証料は保証会社に対して支払うコストで、ローンの契約者本人が万が一ローンを完済できなかった場合に保証会社に肩代わりしてもらうためのお金になります。
保証会社は金融機関とローンの契約者との間に入り、ローンの完済が難しくなった場合に、金融機関は保証会社に対して「ローンを肩代わりしてください」という通達を出します。
保証料の算出方法には「外枠方式」と「内枠方式」があります。外枠方式ではローンの契約時に保証料を現金で一括払い(借入額の約2%)し、一方の内枠方式の場合は毎月の金利に対して保証料の0.2%を上乗せして分割で支払うことになります。
また、一部のネット銀行では保証料そのものが不要になっている場合もありますが、その分借入額に制限が設けられていたりと条件が付けられていることがあります。どちらがよりお得か、ということについてはまず窓口の担当者に相談してみましょう。
収入印紙代
公的な契約書を作成する場合に必要となるのが収入印紙代です。印紙代はトータルの借入額に比例して大きくなっていきます。借入額と印紙代の関係については以下の通りです。
|
登録免許税
マイホームの購入にあたっては登記申請を行う必要があります。登記申請には登録免許税が課せられ、これは物件の購入価格やローンの借入額などにかかわらず、基本相場はおおよそ4万円から9万円となっています。
登記手数料
登記手続きに付随して発生するのが登記手数料です。住宅ローンで物件を購入する場合、銀行や保証会社に対して物件の抵当権を明示する必要がありますが、それには登記申請によって抵当権を公的に記録しておく必要があります。
登記手数料の実費はおよそ5万円から10万円の範囲内ですが、仮に一連の登記手続きを司法書士などの専門家に委託した場合、さらに5万円程度の成功報酬が上乗せされますので、予算オーバーにならないように注意しましょう。
また、登記手数料は一連の登記手続きを専門家に委託せず、自分自身で行うことで節約することができます。
登記手続きそのものはシステム化されているため、個人でも手続きを行うことは可能です。ただし登記において必要な手続きは多岐にわたり、全てを自分で行おうとすると時間と労力がかかりますので、時間的コストも考慮したうえでどちらにするか選択しましょう。
団体信用生命保険料
団体信用生命保険は、住宅ローン専用の生命保険のことです。ほとんどの銀行系住宅ローンは、団体信用生命保険への加入を条件としています。団対信用生命保険に加入していれば、住宅ローンの契約者本人が死亡したり高度障害状態になる等万が一の場合でも、住宅ローンの残金の分の保険金が金融機関に支払われ、住宅ローンの残高を清算することが出来ます。
残りの住宅ローンを弁済する、という意味では保証料によく似ていますが、団体信用生命保険はあくまでもローンの契約者と保険会社との間で結ばれる契約であり、保証料とは違い、契約者本人の死亡や事故といったやむを得ぬアクシデントが弁済要件として挙げられています。
火災保険料
ほとんどの金融機関は、個人が住宅ローンを借り入れる際に火災保険への加入を義務付けています。保険料は物件の構造によって比例し、火災に比較的強い鉄筋コンクリート造りなどは保険料が安く、逆にリスクが高いと見られる木造住宅では保険料が引き上げられるのが通常です。
火災保険に関して、かつては35年以上におよぶ長期契約が認められていましたが、法改正によって10年以上の保険契約が認められなくなり、この点では節税が難しくなってきています。
特に関東地方の都市部では将来的に発生するとされている直下型地震などを考慮し、火災保険や地震保険のコストが高めに設定されています。保険料の地域差についても把握しておくと、マンション経営のランニングコストを正確にシミュレーションすることができます。
融資事務手数料 | 5万円~30万円 | 引渡しまで |
保証料 | 0~70万円 | 契約時 |
印紙代 | 1万円~3万円 | 契約時 |
登録免許税 | 4万円~9万円 | 登記申請時 |
登記手数料 | 5万円~10万円 | 委託契約時 |
団体信用保険料 | 10万円~12万円 | 保険加入時 |
火災保険料 | 12万円~46万円 | 保険加入時 |
住宅ローンの諸費用を安くする方法
何の対策も取らなかった場合、住宅ローンの諸費用は物件購入価格の5%から10%程度になります。住宅自体の購入価格が大きいため、諸費用も決して安くない金額になってしまいます。
しかし事前に住宅ローンの契約条件を見直せば、手数料などの諸費用をいくらか削減し、負担を軽減することが出来ます。諸費用の内訳を見直し、住宅ローンをスリム化するためのポイントについてお伝えしていきます。
各金融機関の諸費用を確認する
住宅ローンの返済にあたってどのような諸費用が必要になるかは、金融機関の種別によって異なります。
三菱東京UFJ銀行や三井住友銀行など、大手金融機関では原則として住宅ローン借入時に保証金を設定していますが、ネット銀行では保証金が無料になっているケースがあり、その種の金融機関を利用することで住宅ローンのトータルコストを削減することができます。
ネット銀行の利用には、振込手数料や休日手数料が格安になる、わざわざ店舗に行く必要がない、カードローンなどの利用が第三者に知られにくい、といったメリットがあります。しかし一方で、ネット銀行ならではのデメリットあるので、きちんと把握しておかなくてはなりません。
ネット銀行の大きなデメリットとして、「公共料金などの引き落とし口座として設定できない」ということが挙げられます。電気代やガス代、水道光熱費など公共料金の支払いを銀行口座から引き落としで納付されるという方も多いでしょう。しかし現状ではまだまだネット銀行を引き落とし口座に指定できない場合が多く、結局は一般的な金融機関でメインの口座を作ることになる、というパターンが増えているようです。
ただ、日本国内でもネット銀行の認知度が急速に高まりつつあり、利便性も格段に向上していますので、ネット銀行に対応する住宅ローンが今後主流になっていく可能性は充分に考えられます。ネット銀行のメリットとデメリットをまとめました。
(メリット)
- 振込手数料、ATM手数料が安くなる
- 定期預金の金利が高い
- 住宅ローンの金利が低い
- 24時間取引可能
- 窓口に行く必要がない
(デメリット)
- 店舗がない
- セキュリティが脆弱
- 引き落とし口座に指定できないことがある
団体信用生命保険が無料の住宅ローンを選ぶ
住宅ローン契約時に加入が義務付けられている団体信用生命保険ですが、その特約内容は保険会社によって異なります。住宅ローンの負担を軽減するためには、保険料や金利が無料になる保険商品を選ぶのがポイントです。
保障内容が充実している保険は一見すると魅力的に映りますが、そのような保険商品は「上乗せ金利」といって、住宅ローンそのものの金利に更に0.3%程度の金利がプラスされている可能性があります。負担軽減を考えるなら補償内容ではなく保険料のコストで選ぶようにしましょう。
諸費用は総額で考える
初めて住宅ローンを組む方は、手数料が安い、金利が安い等の面だけに注目しがちですが、重要なのは総合的な視点です。一部の費用だけでなく、諸費用を加味した上でトータルどの程度のコストになるか、ということを考えることが返済コストをより効率的にカットするために重要となります。
住宅ローンに諸費用を組み込むのは可能か
住宅ローンに諸費用を組み入れることでトータルの返済コストをカットすることができ、金利の面でも恩恵が受けられる場合があります。諸費用の組み入れが認められるケースと認められないケースについて具体的に解説していきます。
大手銀行は認めていないところもある
現時点では、三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行などの大手金融機関は原則として住宅ローンへの諸費用の組み入れを認めていません。
ただし大手金融機関でも、銀行によっては諸費用の組み入れを条件付きで認めている場合もありますので、詳しい借入条件などはそれぞれの金融機関の窓口などで直接調べておきましょう。
ネット銀行なら借りられる
今のところ、日本国内で諸費用を含めた住宅ローンの借入を希望するのであればネット銀行を利用したほうが得策といえます。
大手金融機関では諸費用込みの住宅ローン借入には消極的ですが、比較的柔軟性のあるネット銀行では諸費用を含めて貸してくれる可能性が高いです。「住宅ローンを組みたいけれど手元に現金がない」という方でも比較的ローリスクで住宅ローンを申し込むことが出来るようになっています。
ただし、諸費用を組み入れることで住宅ローンの金利が引き上げられる可能性もありますので、借入時には必ず金利について入念にシミュレーションしておきましょう。
諸費用込みの住宅ローンを選ぶときの注意点
住宅ローンの契約時に諸費用まで借りることができれば、契約の時点でキャッシュが少なかったとしても長期的な返済プランを立てることができ、契約できる住宅ローンのバリエーションが広がります。
ただ、諸費用込みの住宅ローンには金利などの面でいくつかの注意点がありますので、目先のメリットにこだわり過ぎてトータルで大きな損をする、ということにならないようにチェックポイントをしっかりと把握しておきましょう。
変動金利型の場合金利が高くなることがある
住宅ローンの金利には、変動金利型と固定金利型の2つのパターンがあります。変動金利型は、その時々の経済情勢や返済能力の変化などの要因によって金利が変動するシステムです。金利が相場より安くなる可能性がある反面、審査基準によっては平均よりも高金利に設定されてしまう可能性があります。そうしたデメリットを意識しつつ、変動金利型か固定金利型を選ぶようにしましょう。
特に楽天銀行など一部のネット銀行は審査基準がきびしく、金利が高くなる可能性が大きいため注意が必要です。
月々の返済額が多くなる
諸費用まで一括で借りられるというのは、住宅ローン契約時点ではメリットの大きいシステムのように感じられます。しかし冷静に考えるとトータルの借入額がその分だけ増えているのですから、結果として返済の負担は大きくなり、完済までの期間も長くなってしまうということになります。
諸費用込みの住宅ローンを選ぶ場合、後々繰上げ返済ができる目処が立っている方、つまり現在は手元のキャッシュが少ないけれどすぐにまとまった資金が手に入る、というケースではメリットが大きいと言えます。住宅ローンは借入期間が長くなるほど返済の負担が重くなっていくものですから、ある程度まとまった資金が入手できた時点ですみやかに繰上返済をすれば負担を軽減することができます。
返済の負担を最小限に止めたいのであれば、事前に諸費用の内訳と金額を把握しておき、諸費用分の予算がきちんと用意できた時点で住宅ローンの契約に踏み切ったほうが安全と言えるかもしれません。
住宅ローンの諸費用シミュレーションサイトの活用
住宅ローンの契約においては、あらかじめトータルコストを把握しておくことが重要です。そもそも、物件の購入価格が非常に大きいため事務手数料だけでも十数万円を超える可能性があり、見通しを立てなければ大幅な予算オーバーにつながりかねません。
将来的に住宅ローンの契約を検討している方は、住宅ローンの金利と返済期間、物件の購入価格などを入力するだけで諸費用を細かく予測できるシミュレーションサイトでチェックしてみましょう。
住宅ローンの諸費用はかなりの金額になる
手数料や印紙税というと数千円単位で済むだろうと思われるかもしれませんが、実は諸費用だけで数十万円以上かかる可能性があります。
事前の見直し無しに住宅ローンを組んでは、あとあと後悔することになりかねません。住宅ローンの契約にあたっては必ず事前にトータルコストを綿密にシミュレーションし、無理のない返済プランを組み立てるようにしましょう。