職場でパワハラにあっていませんか?
近年、会社における勤務中のトラブルが世間で注目されており、そのなかでも上司からのパワハラが問題になっています。精神的な嫌がらせや暴力、長時間労働など、内容も多岐にわたります。本記事ではパワハラ上司の5つの特徴と6つの行動タイプを述べ、パワハラ被害への対処法について記します。
パワハラ上司の特徴
パワハラを行ってしまう上司には、主に5つの特徴があります。どれもあらゆる職場の人間が気付かないうちに癖になる可能性を持っています。もしも以下に述べる特徴に1つでも当てはまる上司がいた場合は注意が必要です。また皆さんが昇進し、部下を指導する際も、以下のような事態を引き起こさないように気をつけることが大切です。
部下の指導が好きな熱血タイプ
職場の上司のなかには、部下を指導することに熱心な人が多く見られるでしょう。彼らを育てたい意欲が旺盛で、相手のためという意思から指導に思わず熱が入るタイプです。
テレビ番組の密着取材などでも、指導する側の熱血ぶりが度々話題を呼ぶことがありますが、こうしたやり方は度が過ぎるとパワハラになりかねません。かえって部下を追い詰め、彼らの精神を壊してしまうおそれがあるからです。
感情的でマネジメントが苦手
すぐ感情的になってしまう人も、世の中には多いようです。上司の立場にある人のなかにも、感情的に怒る人が多く、部下たちを悩ませているようです。
怒りやイライラなどの負の感情を制御することを「アンガーマネジメント」と言いますが、それが苦手なまま管理職に就いた人は、仕事における対応の仕方が分からないとき、些細なことで逆ギレすることから、部下へのパワハラ行為につながる結果になります。
一人の部下をターゲットにする
パワハラ上司のなかには、基本的に多くの部下とは紳士的に接しながら、特定の人物のみに対しては横柄にあたる人もいるようです。
この特徴をもった上司は、一人の部下をターゲットに絞り攻撃しストレスを発散します。攻撃されている相手がパワハラを訴えても、上司は自身に対する態度が違うと結論づけてしまうようです。
部下を常に監視し揚げ足を取る
ストレス解消のために部下を攻撃する動機を探すために、彼らの行動を一部始終監視する上司も存在します。この特徴に当てはまる上司は、部下の揚げ足を取るチャンスを常に伺い、ときには部下が正しいと考えられる行動に対しても粗探しをして叱りつけるケースもあります。
上記のような上司の目的は、部下たちの揚げ足を取り恥をかかせることで、自身の仕事や生活がうまくいかないことに対する憂さ晴らしをしている可能性があります。
嫉妬深く妬みから攻撃に走る
人間関係に嫉妬はつきものですが、職場でもそれは例外ではないようです。嫉妬深い上司は部下の学歴、技術、経歴などに対し、ねたみや劣等感を覚えるのです。そこから相手に対するパワハラを行うのです。
この特徴に当てはまる上司は、自身より知識や技術に長けた部下の仕事に対し、嫉妬心から邪魔をし、精神的に疲弊させることで才能を潰すことを狙うケースがあります。知識や技術のある人材を潰すことは会社にとって不利益になる可能性がありますが、それ以上に自身のメンツを優先させてしまうのが嫉妬深い上司の特徴と言えます。
パワハラの6類型の紹介
上司によるパワハラとされる行動にも複数のタイプがあります。暴言や暴力などの露骨な攻撃行為から、仲間はずれ、スキルに見合わない要求などの陰湿な嫌がらせまで、働く人なら誰でも経験する可能性があるものばかりです。上司から以下のうち1つにでも該当するような行為を受けた場合は、専門機関などへの早期の相談が必要です。以下にパワハラの6つの類型を表形式で示し、それぞれの詳細について掘り下げます。
暴力などの身体的な攻撃 | 職務上の優位的な地位を利用して、社員の体に危害を加える行為 |
暴言などの精神的な攻撃 | 脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言などの精神的な攻撃は、業務の適正な範囲を超えてパワハラに当たる |
仲間はずれなどの人間関係からの切り離し | 隔離・仲間外れ・無視など仕事を円滑に進めるためにならない行為 |
能力を超える過大な要求 | 能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事与えるもしくは仕事を与えないこと。しかし、パワハラか決める基準が、状況や継続的行われたかによっても左右されるので、職場での認識をそろえて、範囲を明確する必要がある。 |
能力以下の仕事を与えるような過小な要求 | 能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事与えるもしくは仕事を与えないこと。しかし、パワハラか決める基準が、状況や継続的行われたかによっても左右されるので、職場での認識をそろえて、範囲を明確する必要がある。 |
私的なことに立ち入る個の侵害 | 私的なことに過度に立ち入ること。私的なことに関わる不適切な発言や私的なことはパワハラになる。 |
暴力などの身体的な攻撃
パワハラ上司の多くは、職務上の優位的な地位を利用し、社員の体に危害を加えます。殴る、蹴るはもちろん、胸ぐらや襟首を掴む、物にあたり威嚇するなどの行為も暴力行為にあたります。
学校の部活で顧問や監督がこうした行動をすると、「体罰」として問題視されるケースがあります。すなわち、会社内による上司からの暴力行為も、広義的に「体罰」と考えられ、社会的な問題となっています。
暴言などの精神的な攻撃
暴力と並び、上司からの暴言などによる精神的な攻撃もパワハラにあたります。脅迫・名誉棄損・侮辱にあたるような言葉は、業務の適正な範囲を超えてパワハラと認められることがあります。
具体的には「給料泥棒」「死んでしまえ」「存在が目障りだ」という発言や、人種差別にあたるような言葉などが暴言に当てはまります。
報道番組でもパワハラのニュースを取り扱う際、上司による暴言が録音された音声が公開され、問題になる場合があります。
仲間はずれなどの人間関係からの切り離し
上司のなかには、暴力や暴言といった証拠を残さない形での嫌がらせを行う人も存在します。そのひとつが仲間はずれです。特定の部下を隔離したり、無視をするなどして、仕事を円滑に進めさせない行為です。
会社の連絡事項をその人にだけ意図的に伝えない、重要な資料を渡さない、理不尽な理由でプロジェクトチームが外したり、プロジェクト内で孤立させるなどの嫌がらせが具体的な例です。
能力を超える過大な要求
業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことを強制したり、仕事を妨害することです。販売業などでの明らかに達成困難なノルマはこの代表例になり、多くの場合それを達成しなければ弁明の余地も与えられず厳しく叱責されます。
ノルマ達成のために、売れ残った分を自身で買い取る「自爆営業」も社会問題となり、そのために月給以上の損失をし、借金生活にまで追い込まれる社員もいるようです。
このほかにも、明らかに力量の劣る社員に対し専門的な知識や技術が求められる仕事を要求したり、一晩で大量の仕事を仕上げるよう要求することで徹夜での残業を余儀なくさせるなど、社員の立場に対する常識的な仕事量よりも著しく多い業務を課したりするケースもあります。
能力以下の仕事を与えるような過小な要求
社員の能力や経験と比べ、明らかに程度の低い仕事しか与えなかったり、仕事自体を全く与えないこともパワハラにあたります。
これまでプロジェクトに携わってきた人物に対し、一度だけのミスを理由に、長期間草むしりだけをさせる、営業職に対し、書類整理に専念させるなどが例として挙げられます。
前述の過大な要求も含め、立場に見合わない仕事量を要求される形でのパワハラは、その基準が職場の状況や継続的に行われたかなどにより左右されます。被害証明には職場での認識をそろえ、範囲を明確する必要があります。
私的なことに立ち入る個の侵害
部下のプライベートな生活をはじめとした私的領域に上司が過度に立ち入るケースもあります。同じ部署内の異性の社員をデートに誘うことの要求、上司の私的な用事への使い走り、飲み会への参加強要などが例にあたります。
上司が部下の自宅にまで上がり込んだり、GPSをつけて行動を監視するケースもあるようです。このように仕事上に直接関係ない部分に関する不適切な言動や干渉もパワハラとして訴えることができます。
上司にパワハラを受けたらどこに相談したらよいか
現在も上司からのパワハラに悩まされている人は多いことでしょう。しかし、一人で悩みを抱え込まずに、誰かに相談することが大切です。また、自身に限らず、周囲の人がパワハラを受けていると知ったときも、助けてあげたいと考える人も少なくありません。そのような人向けに、上司のパワハラを解決するための相談先を以下に示します。
まずは家族や親しい友人に相談する
家族や親しい友人は、本人にとって最も信頼のおける関係と言え、一番に相談しやすく一番親身になってくれると考えられます。実際に親身にしてもらえるほどではなくても、話を聞いてもらえるだけで、心が休まる場合もあります。
家族や現在の友人に限らず、学生時代の友人、ネットでいつもコミュニケーションをとっている人などに相談しても、心のつかえが取れるのを感じられるでしょう。
会社の同僚またはその上の上司に相談する
会社で自身によくしてくれる同僚がいるなら、まずはその人に辛いことを話してみるのもいいでしょう。また同僚に自身が受けた、または見たパワハラを話すことで、同僚が自身も同じ仕打ちを受けていると告白するケースもあります。
上司からのパワハラの相談は、さらに上の上司に相談するという手段も考えられます。他部署の上司からパワハラを受けている場合は、その部署内における、パワハラをしている本人の上司に相談します。このように、適切な人に相談することにより、職場内で解決できるケースも多いです。
会社の相談窓口に相談する
家族や友人、職場内の同僚に相談しても解決しない場合は会社の相談窓口にパワハラの事実を告げることも考えられます。
多くの企業ではコンプライアンス窓口やハラスメント窓口が設けられており、社内にそうした窓口がある場合は積極的に利用するという方法もあります。これらは正社員だけでなく、派遣社員や社外の人、アルバイトも利用できる場合がありますので、入社や勤務先が決まったら、事前に確認しておくことが大切です。
会社の人事部に相談する
パワハラの相談先として会社の人事部も考えられます。しかし人事部も会社組織の一部であるため、被害者個人の救済よりも、会社全体の利益をして考える場合もあるので注意が必要です。
それでも最終的には、被害者の精神や健康状態などの損害を一つの判断基準としてもらえることが多いようです。
主なパワハラ相談窓口の紹介
パワハラの相談先には、身近な人や会社内の窓口および人事部に限らず、パワハラの相談を受け持つための専門機関があります。以下に紹介する機関は、会社と直接の関係はありませんが、相談を受け次第、一日でも早い解決に動いてくれます。以下にパワハラ相談窓口の例を示します。
労働に関する相談ができるNPO法人 労働相談センター
こちらは労働問題について労働者の相談を受け持つNPO法人です。上司からのパワハラに限らず、同僚や先輩などからのいじめや嫌がらせ、セクハラ、労働時間、給料や残業代の不払い、不当解雇、労働組合の結成方法など、多岐にわたる内容の相談が可能です。
電話、メール、センターを直接訪問しての面談ができ、その間は一切無料です。相談内容に関する秘密厳守も公言しています。電話やメールでの相談は平日午前9時から午後5時までと限りがありますが、メールの場合は24時間365日いつでも受けつけています。
厚生労働省にある総合労働相談コーナー
こちらは職場内での上司のパワハラに限らず、労働条件、いじめおよび嫌がらせ、セクシュアルハラスメント、解雇、募集や採用などの労働に関する問題に関し専門の相談員が電話または面談で応対してくれます。
電話ではフリーダイヤル・0120-601-556でつながります。事前の予約が不要であるうえ、相談料は無料です。労働相談センター同様、秘密も厳守してくれます。
相談窓口の取扱時間は、午前9時から午後5時までで、有楽町総合労働相談コーナーは、午前9時30分から午後5時30分までとなっています。土・日・祝日および12月29日から1月3日までの年末年始はお休みになっていますので注意が必要です。
法務省のみんなの人権110番
上司からのパワハラだけでなく、職場や日常生活における差別や虐待などの人権問題全般に関する相談を受け持っています。電話は最寄りの法務局または地方法務局につながり、法務局職員又は人権擁護委員が対応してくれます。
法務局・地方法務局及びその支局では,窓口での面談も可能です。受付時間は平日午前8時30分から午後5時15分までです。
パワハラ訴訟を考えている場合はどうしたらよいか
上司からのパワハラで暴力によるケガ、精神的苦痛、賃金の未払いなど損害を被った場合、訴訟を考える人が多いでしょう。しかし訴訟に対して非常に難しいイメージを持っている人もいると考えられます。そのような人に対し、パワハラに関する訴訟を行ううえで大切な手段を分かりやすく述べます。
法律に詳しい弁護士事務所に相談する
パワハラに対して明らかな損害を被った場合は、弁護士への相談が考えられます。弁護士はそうした相談を受け次第、被害者の上司に対しパワハラの中止を求めたり損害賠償を請求することができます。
パワハラに対する証明として、暴力によるケガの写真や診断書、暴言を録音したレコーダーなどの明確な証拠を弁護士事務所に示せば、弁護士が真摯に対応してくれるケースが多いです。
費用を抑えたい場合は法テラスがおすすめ
パワハラ上司を訴えたいが、なるべくコストをかけたくないと思う人も少なくないでしょう。その場合は、法テラスがおすすめです。
弁護士事務所で相談した場合は30分5,000円が相場になるのに対し、法テラスの場合は1回30分までながら、3回まで無料で相談することができ、弁護士事務所よりも安い費用で解決することが可能です。
なるべく無料で相談を解決するために、相談内容を事前にメモなどで整理し、法テラスに持ち込むことが大切です。
紛争解決手続きが可能なかいけつサポート
裁判に訴えても、話し合いのうちに時効が成立し、被害救済の権利が消滅する場合もあります。しかし「かいけつサポート」を利用することにより、一定の場合に「時効の中断」を行うことが認められるよう法律で定められています。
かいけつサポートは、法務大臣から認証を受けた民間事業者が行うサービスで、、被害者と加害者の間に入り、公正中立な立場から話し合いにより平和的な解決を図ります。
上司のパワハラを受けたら悩まず適切な窓口に相談する
上司からのパワハラを受けた場合、どうしていいか分からず一人で悩みを抱え込んでしまう人が多いようです。しかし実際には上記で示したように、相談できる人や場所は多く存在します。
職場に暴力、暴言、仲間外れ、立場に合わない理不尽な仕事の要求、プライベートへの干渉など、不条理な言動を行う上司がいた場合は、すぐに専門の窓口に相談し、一日でも早い解決を目指すことが重要です。