股関節の外転運動時に使われる筋肉について|分かりやすく徹底解説

股関節の外転運動時に使われる筋肉について|分かりやすく徹底解説

2019.03.04

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股関節の外転運動に関わる筋肉について

股関節の外転運動は、筋肉トレーニングのときはもちろん、スポーツをする前のウォーミングアップ時や、ダウン時にも取り入れられることが多いです。今回は、外転運動の際に、どの部分の筋肉が使われていて、鍛えられることによってどのような効果があるのかについて、具体的に分かりやすく解説していきます。

片脚を外側に開く運動

股関節の外転運動とは、上を向いて寝た状態で脚を揃え、骨盤を固定した状態で、片脚を外側に開く運動のことを指します。脚を真っ直ぐに伸ばして外に開く方法と、股関節と膝関節を90度に屈曲させて、外に開く方法があります。

また、関節の運動を計測したり、表示したりするための共通の基準を「関節可動域」といいますが、関節可動域は角度で表すことになっています。外転運動の際の関節可動域は、右脚45度、左脚45度。計90度の運動性があれば、正常であるといわれています。

外転は外側に脚を開く運動ですが、内側に動かす運動を内転といいます。こちらも、脚を真っ直ぐに伸ばして内側に動かす方法と、股関節と膝関節を90度に屈曲させて、内側に動かす方法があります。脚を真っ直ぐに伸ばして行う場合は、反対側の下肢を屈曲させて上にあげ、その下を通して内転させます。

外転運動時に使われる筋肉

股関節の外転運動に関わる代表的な筋肉として、中殿筋、小殿筋、大殿筋、大腿筋膜張筋、縫工筋があげられます。これら外転に関わる筋肉は、まとめて「外転筋群」と呼ばれることもあります。

一番使う中殿筋

中殿筋は、股関節の外転に一番使われる筋肉です。股関節の外側を覆うように、骨盤の外側上部から外側の脚の付け根まで、扇状に広がっています。筋殿群としては、大殿筋より深層に位置し、小殿筋より表層に位置する筋肉です。

中殿筋は、立っているときに骨盤を支える筋肉です。また歩行時に片脚立ちになった際に、骨盤が横に傾かないように保持する役割も持っています。さらに、横に脚を踏み出す動作、例えばバスケットボールにおけるサイドステップなどに、大きく貢献します。

補助的な小殿筋

小殿筋は外転運動時に、中殿筋と同じように使われる補助的な筋肉です。殿筋群の中では最も小さい筋肉で、中殿筋の深層に位置しています。形状も中殿筋と似た扇状をしていて、骨盤の外側中ほどから、外側の脚の付け根まで広がっています。

小殿筋も中殿筋と同様に、直立のときに中殿筋とともに骨盤を支える筋肉です。また、歩行中に体重が片脚にかかったとき、逆側に骨盤が傾かないように、保持する股関節外転筋でもあります。中殿筋と似た作用を持つ筋肉ですが、小さい筋肉であるため作用する力が少なくなります。

また小殿筋と中殿筋は、一般的に加齢とともにその機能が低下するといわれています。歩行中に、何もないところで脚が引っかかって転びそうになることがある人は、小殿筋・中殿筋の筋力低下を疑ったほうがよいかもしれません。 

重要視される大殿筋

大殿筋の上部は、外転運動時において、中殿筋の次に重要視される筋肉です。大殿筋は、殿筋群の中で最も大きく、お尻の表層を走行していて、骨盤全体から外側の股関節を覆うように位置しています。単体では、体の中で一番大きい筋肉になります。

全体の働きとしては、股関節の曲げ伸ばしに大きく関わっています。股関節の外転に関しては、腸骨あたりから起こる上部の繊維が、補助的に作用する形になります。

大殿筋・中殿筋・小殿筋などの殿筋群は、人が進化する過程において発達したとされています。歩く際に、股関節を伸展させることにより、体幹を直立位に保つことができるようになっています。

太腿の外側にある大腿筋膜張筋

大腿筋膜張筋は、骨盤の前上から太腿の外側に位置している短い筋肉で、股関節の外転に補助的に働きます。股関節の曲げ伸ばしや内旋、外転に複合的に働くため、外転との関りは小さくなります。大腿筋膜張筋は収縮することにより、外転に作用します。

大腿筋膜張筋は、股関節が外旋するのを防ぎ、大腿骨を真っ直ぐに保ちます。股関節を安定させながら、歩行・走行の際に足を前方に真っ直ぐ出るようにします。また、股関節が外れることを防ぐという重要な働きも担っています。

長居筋肉の縫工筋

縫工筋は、骨盤の前上あたりから、膝下にかけて斜めに位置する二関節筋であり、人体の中で最も長い筋肉です。股関節の曲げ伸ばしや外転、外旋、また下腿の内旋に複合的に働くため、外転との関わりは小さくなります。

縫工筋は、主に椅子に座って脚を組んだり、あぐらをかいたりするときなどに関与します。また平泳ぎのキックなど、股を閉じるすべてのスポーツに大きく貢献します。さらに、卓球やバスケットのような、左右の動きを繰り返すスポーツで受傷しやすく、仕事では立ち座りを繰り返す動作が、負担の原因になります。

外転筋郡のトレーニング効果

大殿筋や中殿筋、小殿筋などから構成される、外転筋群トレーニングの効果とは、どのようなものなのでしょうか。

中殿筋のトレーニング効果

中殿筋はお尻の中で最大の筋肉で、大殿筋よりも外側の高い位置にあります。そのため、中殿筋を鍛えると、よりお尻の位置が高く見えるという効果があります。

大殿金を鍛えて、お尻のボリュームをアップしたあとに、もう一押し、最後のアクセントとして中殿筋を鍛えましょう。ヒップラインのトップを、キュッと上げることができます。

また中殿筋は、骨盤と大腿骨をつなげ、股関節を安定して支えるための鍵になる筋肉です。歩行時に骨盤を安定させ、骨盤の左右の揺れを予防します。片脚で立ったときにバランスを保っていられるのは、この筋肉がしっかりと働いているためです。

小殿筋のトレーニング効果

小殿筋は、お尻上部側面の一番深いところに存在しているインナーマッスルです。アウターマッスルとして関与する中殿筋と小殿筋は、基本的にほぼ同じ作用を持つとされています。ゆえに、片脚立ちの際の安定化を共にはかります。筋肉の深層にある小殿筋を鍛えることにより、骨盤の左右の揺れをしっかりと予防します。 

そして、骨盤を安定させるということは、日常生活を送る際によい姿勢となって現れてきます。側面から骨盤を安定させることにより、中心に線が通っているような、非常に美しい立ち姿を維持できるようになります。そのため、立ち姿や歩き方の影響が大きい見た目年齢を、若々しく保つことにつながります。 

大殿筋のトレーニング効果

大殿筋をトレーニングすることで、お尻回りが引き締められることが大きなメリットになります。お尻の大半を形成する大殿筋を、トレーニングで肥大させることにより、ヒップアップして脚が長く見えるようになります。

お尻は第三者から見た場合、非常に目立つ部位です。ゆえに、後ろ姿の印象をカッコ良くすることは、全体的な見た目年齢を、若々しく見せることにもつながります。

また、単一筋として最も大きい大殿筋を鍛えることは、大幅な代謝の向上につながります。消費されるエネルギー量は、筋肉の大きさに比例して大きくなります。

そのため、最大の大きさを誇る大殿筋を鍛えることで、最短距離で代謝を向上させ、脂肪を燃焼させます。結果、基礎代謝があがり、ウエスト回りの引き締め効果も期待できます。

大腿筋膜張筋のトレーニング効果

大腿筋膜張筋のトレーニングは、下半身全体の筋トレの質を高めるため、すっきりとした綺麗なボディラインを手に入れる近道になるでしょう。また、ランナー膝(腸脛靭帯炎)の予防に役立つともいわれています。

ランナー膝は、ランニングやジョギングによって発症しやすい、膝の障害の代表格です。腸脛靭帯が、大腿骨と膝部外側で摩擦することで炎症が起こり、それによって痛みが出る症状です。

その原因の一つとして、大腿筋膜張筋が疲労して、硬くなってしまうことがあげられます。ランニング中に、脚を繰り返し前に出し、そのたびに脚を安定させようと腿筋膜張筋が働くためです。

ゆえに、大腿筋膜張筋を意識して筋トレやストレッチを行うことは、ランニングやウォーキング時の動きが改善されるメリットも持っています。   

縫工筋のトレーニング効果

縫工筋は、股関節と膝をまたぐ筋肉なので、股関節と膝の動きに大きく関与しています。ゆえに、縫工筋を鍛えることによって骨盤の位置が安定し、О脚を解消して美脚効果が現れます。また縫工筋は、肉離れになりやすい筋肉なので、鍛えることによって、頻繁に起こる肉離れの予防になります。

鵞足炎(内膝下部の痛み)の原因は、硬くなった縫工筋だといわれていて、縫工筋をたくさん使うサッカーやバスケ選手に多く見られます。ゆえに、縫工筋をストレッチして柔軟性を持たせ、さらに強く鍛えていくことは鵞足炎の予防につながります。  

鍛えている筋肉を意識して筋トレ効果アップ

外転運動の方法として、シングルレッグ・スクワットやシングルレッグサークル、ヒップ・アブダクション、マシンアブダクション、ケーブルアブダクションなどがあげられます。またブリッジングや四股踏みも、外転筋を鍛える効果が高いようです。

外転運動は膝痛の痛みを軽減してくれたり、外転筋まわりの関節の痛みを予防してくれたりといった、加齢に伴って発生する悩みを、解消してくれる効果をも発揮します。今後は、外転筋のトレーニング中に、どの部分に負荷がかかっているのかを意識して、筋トレ効果を上げていきましょう。引き締まった下半身で颯爽と歩く姿は、今よりもずっと若返って見えるはずです。

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