日常生活に支障をきたす股関節の痛み
普段はあまり意識していないかもしれませんが、股関節は全体重をささえる重要なパーツであり、日常的に負荷がかかりやすい部位として地道に私たちの体を支えてくれています。
股関節に何らかの痛みや違和感が生じると、たとえそれが弱いものであっても日常生活に少なからず支障をきたし、長期間にわたって放置すると炎症が腰椎や頸椎などにも広がり、やがて体全体のバランスがくずれてしまいます。
股関節の痛みの原因と緩和方法を把握し、関節に極力負担をかけないような生活習慣を心がけましょう。
股関節の役割
股関節の痛みや炎症の仕組みと原因について詳しく調べる前にまず、股関節のそもそもの役割についてきちんと理解しておくことが必要です。私たちが知らないうちに体を支えてくれている股関節の機能と役割を理解し、起こり得る病気や外科的疾患について具体的に見ていきましょう。
股関節は立ったり歩くのに重要な関節
直立二足歩行を長時間維持するためには上半身の体重を分散してささえる必要があり、なおかつ上半身と下半身を無理なく曲線的につなげるためのパーツが必要となります。
このふたつの条件を満たすのが股関節であり、「骨盤から股関節」という導線を手に入れたことで、人間はより自然な直立二足歩行を実現することができ、結果として脳をさらに有効に使うことができるようになったと言われています。
股関節は適度な運動によって機能が維持されると言われていますが、現代人の生活リズムではどうしても運動不足になりがちで、なおかつデスクワークが増えた影響で股関節のゆがみが生じやすくなっているという現状があります。
股関節がゆがんでいる状態でさらに負荷をかけつづけると疲労が蓄積しやすく、年齢を重ねるにつれて骨折や脱臼などのリスクが高まっていきます。
毎日負荷をかける部位ですので、若いうちから定期的に骨盤から股関節にかけてのメンテナンスを行い、シニア世代になってもゆがみが生じにくい体にしておくことがポイントです。
股関節の主な病気や怪我
股関節の痛みや違和感が生じる外科的疾患としてはいくつかのパターンが考えられます。その典型が「変形性股関節症」があります。これは、軟骨の摩耗などによって股関節が変形してしまう病気で、進行するにつれて歩行が不自然になったり、歩くたびに痛みが生じるようになります。
変形性股関節症には一次性と二次性があり、一次性は原因が詳しくわかっておらず、二次性のほうは先天性の股関節発育不全による変形と考えられています。
歩行そのものが難しくなる病気としては、大腿骨骨頭壊死があります。股関節に栄養を送るための血管に充分な血液が流れなくなり、その結果としてその先の部位が壊死してしまうという症状が表れます。
血行障害が生じる原因ははっきりとは特定されていませんが、生まれつきの体質やアルコールの過剰摂取によってリスクが高まるとされています。
股関節の骨折の原因
股関節は重要な部位であると同時にデリケートな部位でもあり、負荷をかけすぎるとすぐにゆがみが生じ、骨折のリスクが高まってしまいます。股関節が骨折しやすくなる原因について詳しく見ていきましょう。
加齢や骨粗しょう症により骨折しやすくなる
股関節も骨の一部ですから加齢とともに密度が薄くなり、ちょっとした負荷でも骨折しやすくなります。目安として、40代後半あたりから骨密度が急激に低下していくとされており、70代以降の骨密度は20代の頃のおよそ5割以下にまで下がってしまうというデータもあります。
骨密度が急速に低下してしまう病気として骨粗しょう症が知られています。一般に、骨粗しょう症は老化現象の一種だととらえられがちですが、実際には働き盛りのうちから骨粗しょう症にかかる可能性は充分にあり、若い頃から適切な骨密度をキープしていないとかなり早い段階で骨密度が低下してしまうとされています。
その他の骨折の原因
骨折に直接つながる股関節の疾患としては、関節炎やリウマチも無視できません。いずれも股関節の動きが大幅に制約される疾患であり、進行すると最終的に寝たきりに至るリスクもあります。
関節炎はウイルス感染によっておこる病気ですが、発症後もリハビリや運動療法によって症状を緩和することが可能であり、早期治療がポイントになります。
股関節の骨折の治療について
股関節の骨折はできればさけたいところですが、万が一骨折してしまった場合でも適切に治療をすることによってその後の回復を大幅に早めることができます。
早期の手術が必要
股関節は負荷に弱い一方で、非常に我慢強い部位でもあります。多少のゆがみがある状態でも日常動作は可能であり、骨密度が限界まで薄くなったとしてもそれだけで寝たきりにつながるわけではありません。
ただ、痛みがないからといってゆがみを放置していると負荷がさらに大きくなり、最終的には外科手術ではゆがみが矯正できないところまで症状が進行してしまいます。
シニア世代になったら定期的にマッサージを受けることが理想で、ゆがみが小さいうちであれば簡単な手術によって股関節を正常な状態に戻すことができます。
股関節骨折の手術方法
股関節のゆがみが軽症のうちは保存療法による対処が主流になっていますが、より重症の変形性股関節症になると外科的手術によるアプローチが選択されます。
外科的アプローチにはさらに、骨切り術と人工関節置換術があり、ゆがみの状態によって手術のパターンが選択されます。骨切り術はゆがみが比較的ひどい部位だけを切り取り股関節のかたちをととのえる手術、人工関節置換術は変形した股関節ごと人工関節に置き換える手術を表します。
手術後にかかる入院期間と費用
関節の手術や入院にかかる期間は、年齢や骨折の重症度によって変わってきます。
手術範囲が比較的狭い軽度の骨折であれば手術後のリハビリも必要なく、早ければ数日間から数週間の入院治療によって完治が可能になります。ただ、股関節を人工関節に置き換えるなど、大がかりな手術の場合にはリハビリも長期間におよぶため、数カ月間から半年以上の治療期間が必要になる場合があります。
入院となれば費用のほうも気になります。所得区分と自己負担額の関係について以下を参考にしてみてください。
(70歳未満)
- 住民税非課税の方:35,400円
- 〜年収約370万円:57,600円
- 年収約370万円〜約770万円:80,100円+(10割分の医療費−267,000)×1%
- 年収約770万円〜約1,160万円:167,400円+(10割分の医療費−558,000)×1%
- 年収約1,160万円〜:252,600円+(10割分の医療費−842,000)×1%
(70歳以上)
- 年収156万円〜約370万円:57,600円
- 年収約370万円〜約770万円:80,100円+(10割分の医療費−267,000円)×1%
- 年収約770万円〜約1,160万円:167,400円+(10割分の医療費−558,000円)×1%
- 年収約1,160万円以上:252,600円+(10割分の医療費−842,000円)×1%
股関節の怪我を予防する方法
いざとなった時の対処法を具体的にシミュレーションしておくことも重要ですが、そもそもの怪我を予防する方法について考えておくことはさらに重要です。股関節を健康に保つ生活習慣について見ていきましょう。
ストレッチを行う
筋肉や関節が炎症を起こすのは、柔軟性を失っていくからです。若いうちから適切なストレッチを行い、関節の柔軟性をキープすることでゆがみがその都度矯正され、年齢を重ねてからも炎症を起こしにくい股関節になります。
股関節ストレッチではひねる動作を取り入れることが重要で、普段の動きにはない動作をストレッチに組み込むことによって関節の可動域を広げることができ、怪我をしにくい体をつくることができます。
股関節の周りの筋肉を鍛える
股関節を集中してケアしても、怪我や炎症をふせぐことはできません。重要なのは体全体のバランスをととのえることで、股関節周辺の筋肉をまんべんなく鍛えることによってはじめて「怪我しにくい骨格」を手に入れることができるのです。
股関節周囲筋を鍛えるためにはバランスボールなどのアイテムが有用ですし、スクワットなどのシンプルな運動だけでもかなり筋肉の強度が上がりますので、まずはライフスタイルに合ったトレーニング法を見つけましょう。
しっかり予防を行って股関節の怪我には気を付けよう
股関節のゆがみは決して、加齢による現象ではありません。健康なうちからストレッチやマッサージなどを行うことによって骨盤のゆがみを修正することができ、関節の変形を予防することにつながります。