今人気の「個人向け社債」に賢く投資するための押さえるべきポイント

今人気の「個人向け社債」に賢く投資するための押さえるべきポイント

2018.07.09

都市銀行での定期預金は低金利、株式はメリットも大きいがリスクも大きい現在、特に個人向け社債は個人投資家にとって魅力的に映るかもしれません。人気の個人向け社債のメリットとデメリットを客観的に知り、賢く投資するための道しるべにしましょう。

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個人向け社債のメリットとデメリット

定期預金などの金利が歴史的な低水準となれば、個人投資家が他の投資先を模索するのは無理もありません。リスクやリターンの大きさなど考慮すべきですが、この条件下でよい投資先をみつけることは簡単ではありません。その中で個人投資家をターゲットにした社債発行「個人向け社債」は、そうしたマネーの受け皿として一定の人気があるようです。 社債の人気の理由はその高い金利です。2018年4月現在でゆうちょ銀行や三菱UFJ銀行の一年ものの定期預金の金利は0.01%、高くてもオリックス銀行の0.15%ですが、今最も人気のあるSBIホールディングスの社債の金利は0.4%、この現代において大変魅力のある投資先です。 しかし個人向け社債は、他の投資先と同様に決して安全とは言い切れません。途中解約できず、債券市場で売却することもできますが元本割れのリスクが付きまといます。また発行体がデフォルト(債務不履行)すれば利子の受け取りや元本の償還が受けられないこともあります。

個人向け社債の基礎知識

社債とは企業が発行する債券のことです。企業は資金を確保するために社債を発行し、期日になれば返済することを条件にそれまでの間債券を持つ人に対して定期的に利息を支払います。その中の一つである個人向け社債には、どのような特徴があるのでしょうか。

個人向け社債とは

個人向け社債とは、社債を個人向けに設計・販売しているもので、他と同じように企業が資金を調達したい時に活用する方法の一つです。基本的にリスクが低いものが多く、会社がつぶれなければ満期になると元本と利子が返済されます。個人向け社債は証券会社を通して手に入れることができます。 企業が資金を調達する方法は他に株式の発行がありますが、社債とはその性質が異なります。社債は利息が約束されていますが、株式の配当金は企業の儲かり具合次第であり、社債より多い場合も全くない場合もあります。 つまり「社債は定期預金より金利は高いがリスクも高く、株式よりもリスクは低めで利益も低い」という傾向があります。ただ、リスクについては社債ごとに異なるため、株式と同じくその企業についての知識や実情を知ることが重要です。

個人向け社債の特徴(SBI債とマネックス債)

個人向け社債は一年満期、6カ月満期の債券への投資であるため比較的リスクの低い投資です。もともと社債は企業の信用を担保にしていますから、中には二年満期のものや金利が高く設定されるなどそれぞれに条件は異なります。中でも人気の高いSBI債とマネックス債は、発売と同時に完売してしまうことも多いため、あらかじめ証券口座を作り発売に備えておきましょう。

代表的な個人向け社債の紹介

比較的他の投資先より安心と言える個人向け社債も、満期や金利・そのリスクの高さなど発行する企業によってさまざまです。そんな中でも人気の高い、すなわち多くの人が投資先として一定の評価をしている個人向け社債があります。そのうち三つを例にとって、個人向け社債の共通する特徴をみてみましょう。

SBI債

SBI債とは、SBIホールディングス株式会社が発行する個人向け社債です。SBIグループはSBI証券や住信SBIネット銀行・SBI損保など金融商品や関連するサービス・情報提供のほかアセットマネジメント事業やバイオ関連事業も主要事業と位置づけ、幅広い事業を展開しています。その分グループ全体へ投資しているという名誉と同時にリターンについても大いに期待されています。 SBI債は円建のため為替が円高・円安に推移しても投資元本が変動せず、さらに個人でも投資しやすい10万円からの投資で投資初心者でも買い付けしやすいのも大きな魅力です。2016年12月発行のもので年率は税引き前で0.48%、R&I(格付投資情報センター)による平均累積デフォルト率1.04%のBBBだったにも関わらず、申し込み金額に上限がないこともありあっという間に発行の200億円に達してしまいました。これは信用リスクにも関わらず倒産の可能性は低いと考える投資家が多いことを示しています。

マネックス債

マネックス債は、マネックスグループ株式会社およびその関係会社における運転資金・設備資金および投融資資金を貸し付けるマネックスファイナンス株式会社の発行する個人向け社債です。親会社のマネックスグループ株式会社の保証があるため、より投資について安心感があります。 マネックス債も円建てのため為替の影響を受けず、申し込み単位が額面で10,000円単位と個人にとって非常に投資しやすくなっています。2018年1月発行のもので年率は税引き前で0.2%でした。

ソフトバンク債

ソフトバンク債もSBI債と同じように、R&Iによる格付けはBBBですが非常に人気の高い個人向け社債です。2017年3月に発行したのは愛称「福岡ソフトバンクホークスボンド」と呼ばれ発行総額は4,000億円、年二回配当で年率2.03%、仮に1,000万円投資すれば年間で20万3,000円の利子がつき、7年の利子だけで142万1,000円と非常に魅力的で、為替リスクもありません。 金利が高いということはリスクが高いということ、それが投資の原則です。しかしそれを加味してもソフトバンクグループは企業として多くの投資家の信頼を得ているといえます。その証拠に、この第51回無担保社債は、ネット上で「瞬間蒸発」と呼ばれるほど早くに募集は締め切られました。 一つ他と異なることといえば、社債の多くが6カ月から2年満期という中で、ソフトバンク債の満期は7年と長いということです。元本は償還まで引き出しできませんが、3月と9月の年二回は利子を引き出しできます。

個人向け社債の注意点

金利が高く非常に魅力的な個人向け社債ですが、注意しなくてはならないこともあります。メリットだけにとらわれることなく、デメリットについてもしっかり理解しておきましょう。

リスクの大きさが判断しにくい

社債のリスクは、主にR&I(格付投資情報センター)による企業のデフォルトリスクが引き合いに出されますが、SBI債やソフトバンク債をみても分かる通りR&Iの格付けはBBBであっても、実際には人気も高くソフトバンクに至っては50回以上も募集して依然として高い人気がありますから格付けをもとにすれば投資することはできないかもしれません。またどんなに格付けが高くても、短期間に見直されて倒産してしまうこともないとはいえません。 また企業の業績や運営の実際を正確に知ることは個人にとって非常に難しく、総合的・客観的にリスクの大きさは判断しにくいのが現状です。格付けも含め多くの情報に関心を持ちそれぞれを参考にして、最終的には自分の判断で投資を決めなくてはなりません。

大企業だから安心とは限らない

それでは大企業であればいくらなんでも倒産はしない、そう考えて社債に投資すればよいのでしょうか。しかし昨今、大企業でも倒産の憂き目に会うニュースにあふれています。もし大企業が倒産すれば社債でも株式でもそれに投資する投資家は大きな負担がかかります。 今までも、マイカルやJALなど「まさか倒産するなんて」と思われていた企業がデフォルトしました。誰もが知っている大企業だからといってそれが信用にはならないよい例です。

すぐに完売してしまう

SBI債やマネックス債などの人気社債は人気が高く、発売と同時に完売してしまうことがほとんどです。SBI債は抽選ですがその受付時間は非常に短く、やはりあっという間に締め切られてしまいます。発売になってから証券口座を開いていてはとても間に合いません。あらかじめ口座を開設しておき、発売に備えましょう。

個人向け社債のリスク

個人向けとはいえ、社債は企業に対してのリスクのある投資です。漠然とリスクがあると考えるのではなく、その種類や性質をしっかり知っておく必要があります。

信用リスク

最も考えるべきなのはその企業に対しての信用、つまり業績と倒産するリスクです。事業内容や顧客の種類と数・分布をはじめ細かく経営状態を知るために財務諸表を確認しておきましょう。それに加える形でR&Iの格付けも参考にし、あまりにかけ離れている際はその差がどんな原因によるものかを探れば、より正確な評価を知ることができるでしょう。

価格変動リスク

社債は、満期まで元本を引き出すことはできませんが、売却することができます。しかし債券価格は金利が上がれば下がり、金利が下がれば上がるという関係があり、それは日々変動しています。そのため市場の状況によっては個人向け社債を売却する際に元本割れする恐れもあります。

流動性リスク

また、満期前に社債を売却したくても、買う人がいなければ売ることはできません。市場の評価や債券の状態によってはこのような流動性リスクがあることも知っておく必要があります。

堅実な投資をしよう

個人向け社債は、確かに他の投資方法に比べると比較的リスクの低いものかもしれませんが、リスクがないわけでは決してありません。大切なのはその性質とメリット・デメリットを知り尽くし、賢く利用することです。そのための情報収集能力や判断力を養い、実益のある堅実な投資をしたいものです。

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