経営者たちのライフスタイルに迫る:大人の遊び方 vol.1 実業家 石崎ケンイチの場合

経営者たちのライフスタイルに迫る:大人の遊び方 vol.1 実業家 石崎ケンイチの場合

2018.09.22

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お金にも気持ちにも余裕のある成功した大人たち、「EXTRY GENTS」。さまざまな経験を経た彼らだからこそたどり着いた、大人の遊び方とは? 記念すべき連載の第1回目は、実業家として数々のビジネスを成功に導いてきた石崎ケンイチ氏にフィーチャー。普段は知ることのできない、GENTSな遊び方をのぞき見しませんか?

“損”できるのが、粋なお金の使い方

――「大人の遊び方」という連載に第1回目となります。早速ですが、石崎さんが考える大人の遊び方とは?

  遊び方の前に今の大人というか、成功者と言われる人たちに最近思うことがあるんです。仕事やプライベートで、自分より経済力がある方など、いろいろな方とおつきあいする中で、僕が男としてかっこいいなと思える人って、意外と少ないんですよ。   なぜかというと、今の人たちは“頭が回りすぎる”から、損をすることを嫌う傾向にあるんじゃないかと思うんです。自分より少し上のバブル時代の先輩方は、そうじゃなかった。例えば、その日気分がよかったら、「今日は楽しかったから、ここ全部俺が払うよ」みたいな。   “損をできる人”が多かったんです。その損の仕方がすごくかっこよかったんですよね。単なる浪費とは違う、粋なお金の使い方、男の美学という感じがしてね。

効率を重視しすぎると社会は退屈になる

――昔の成功者の方々のそうした豪快なエピソードはよく伺いますね。

  そうでしょう。僕自身感じているのは、バブル崩壊以降、お金を生まないもの=負債という考え方をする人が増えてきたなということです。   一時期、『金持ち父さん 貧乏父さん ーアメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』(ロバート・キヨサキ著)という本も流行りましたけど、周りの経営者の人たちでも影響を受けていて、お金を生むものだけが資産だ。投資を重要視するべきだといった考え方の人も多いです。   もったいないことはしないようにすると、効率が重視されます。車も今売れているのは、SUVやワンボックスカー、ハイブリットカーですよね。スポーツカーは売れない。時計もスマホで見るからいらない。ホテルなんて寝るだけだし、安いビジネスホテルでもいいでしょって。そうやって効率を求めすぎると、楽しむ余白がなくなって、社会が面白くなくなってきちゃうと思うんですよね。  

――なるほど、確かに合理的に考えるすぎるところが若い世代になればなるほど多くなる傾向があるかもしれませんね。

  そうして成功者たちが効率ばかり求めすぎると、下の世代の人たちも憧れがなくなる。だから、僕がお金をある程度手にした人たちには、自分の財産や富の最大化を目指すのではなくて、「社会にとって面白い存在になろうよ」ということを、まずは提唱したいんです。いわば、“旦那衆”になる意識を持つということですかね。  

――旦那衆とはどんな人を指すのでしょう?

  昔からいうところの富裕層ですが、彼らは粋で損を楽しむ遊び方をするんですね。例えば、町の人や自分を慕う人に、みんなが楽しめる場を提供したりね。  

みんなを楽しませる投資へとシフト

――石崎さんは、最初から旦那衆の意識があったのですか?

  いやいや、お金がある程度稼げるようになって、僕も車、食事、不動産など、いわゆるお金持ちがするひと通りの遊びは経験しましたよ。でも、そうしたいわゆる消費行動は、いつか臨界点を迎えるんです。   自分も車を6台所有していますが、実際のところは乗り切れていないです(笑)。家だって、マルチハビテーションに注目が集まっているとは言え、3つ以上となると不要になる。食事だって健康を考えたら、高級店で毎日外食するわけにはいかないでしょう?  

――お金はたくさんあっても体はひとつですからね。

  そう。だから僕は今、自分だけのために消費するような遊び方から、みんなに場を提供する遊び方へとシフトチェンジしました。   気に入った土地にみんなで楽しめるスペースを作っているんです。具体的に例を挙げると、地元の鈴鹿には海の目の前にガレージハウスを作りました。お気に入りの車やバイクをそこにいれて、それを見ながらお酒を楽しんだりできるスペース。   60坪くらいあるから、20人くらいの規模のバーベキューも開ける。豪邸をイメージするかもしれないけど、そうではなくて、建物代だけで言えば、1,000万円くらいのものなんです。   1,000万円を投資にまわすこともできるけど、そうした空間を作れば、たくさんの仲間を楽しませることができる。   三重県・鈴鹿にあるガレージハウス。休日に仲間を集めて楽しむ、そんな時間が過ごせるのも幸せな時間なのだとか。  

――海を眺めながらのバーベキュー! 素敵ですね。他にもあるんですか?

  月島のマンションの一室には「健康ハウス」なるものを作りました。治療に関する仕事を手がけたことがあって、その関係で機械を導入して、来てくれたら健康になれるよっていうね。   一流の先生とも仲がいいから、呼んで施術をしてもらったりして。それを作ったのも自分のためでもあり、仲間のためでもある。   クルーザーあるよとか、軽井沢に別荘持っているよっていう人は結構いるけど、「俺、健康ハウス持っているよ」って人は、なかなかいないはず(笑)。  

――確かに、「健康ハウス」は石崎さんしかいない気がしますね(笑)。

 

持ち物には自分だけの“アイデンティティ”を宿す

――時計やお財布など、お持ちのアイテムが個性的だなと感じるのですが、ご自身のこだわりを教えてください。

  車や時計、アタッシュケースなど、モノに対してこだわっていることをあげるなら、自分なりにカスタマイズすることですね。自分の波長や嗜好にモノを合わせるという感じです。   例えば、時計のベルト部分などは基本的に自分好みのものに取り替えますね。レザーベルトや留め金部分を海外から輸入したり、場合によっては革職人にオーダーもします。逆に、使いたいレザーベルトがあるから、それに合わせることができるフェイスの時計を買うこともあります。ブランドも「セイコー」から、「ジラール・ペルゴ」、「ジャケ・ドロー」「ピエール クンツ」「パネライ」など幅広く持っています。   アタッシュケースは、ビジネスとしても手がけたことがあるアルミニウムケースカンパニーのものをカスタムオーダー。取っ手のレザーは栃木レザーのものを自ら見つけてカスタムを依頼するなど、こだわりポイントがぎっしり。   左から、ムーブメントの名機ゼニスのエル・プリメロが搭載されているところに魅力を感じたという「パネライ」の時計は、爽やかな白のレザーベルトにチェンジ。フェイスの色に合わせてウミヘビ革のオリジナルベルトに変更した「ジラール・ペルゴ」。カラバリが豊富なところが好きだという「セイコー」の2つの時計もそれぞれベルト部分を自分好みにカスタム。  

――使いたいベルトから、腕時計のフェイスを選ぶ! 逆転の発想ですね。

  お財布などの小物は、弟分の後輩が手がけているブランド「BAHARI」(バハリ)のものを愛用しています。1,000匹に1匹くらいしか取れない貴重なエイの皮を使っていて、存在感のあるところが好きですね。   例えば、革小物を全てハイブランドで揃えれば、お金をかけているというメッセージは伝わるかもしれないし、自己満足できるかもしれないけれど、僕はそれだけだとつまらない。好きな世界観で揃えたり、カスタムして自分好みにアレンジしたり、そういうほうがずっと楽しいと思えます。   お財布や名刺ケースなどは、海の宝石とよばれるガルーシャ(エイ革)を中心とした小物を扱う「バハリ」のもの。中央の時計もガルーシャの革ベルトを使いたくて、その幅に合うフェイスを持つ「パネライ」のものをセレクト。  

――確かに持ち物全体から石崎さんの世界観が伝わって来る気がします。車もユニークにカスタムされていましたよね?

  そうですね、高級車だけでなく、ジムニーなどの手頃な車をアレンジして乗りつぶすのも好きです。熱海にも基地があるのですが、熱海は狭くて林道なども多いので、移動用に。お気に入りのステッカーを貼ってカスタムしたりするのも楽しいですね。   熱海の狭い林道などには小回りが効くスモールカーをセレクト。さらに機動力をあげるべく車体をあげてホイールもチェンジ。   ホイールを変えて車高を上げることで、パワフルなクルマへと変身。石が多い川べりにも乗り付けやすいので、釣り道具を積んで、釣りに出かけることもあるそう。   お気に入りのステッカーでクルマをさらに自分らしくアレンジ。ステッカーは海外から購入することがほとんどだそう。  

思い切り遊びきることが大切

――石崎さんを見ていると仕事に遊びに人生を謳歌していると感じるのですが、忙しい中どうやって時間を作っているのですか?

  10代の時から、漠然と「二人か三人分生きてやろう」と思っていましたね。時間も無理やりこじあける(笑)。疲れたなと思っていても、憧れていたり、尊敬したりしている人からのお誘いは断らないようにはしていました。誰と一緒に遊ぶかにもこだわっていました。

――10代の時から! パワフルな理由がわかりました(笑)。趣味がなかなか見つからないという読者も多いと思うんですが、どうやって見つけたらいいかなど、アドバイスはありますか?

  日本人って遊び方が下手だと思うんです。ある程度成功すると、みんな揃って趣味はゴルフみたいな。でも、例えば、女の子が「明日、クレー射撃に連れて行かれるの」って話していたら、「おっ! その男どんなやつ!? 面白いやつだな」ってなるじゃないですか。   海外へ行くといろんな遊び方があるし、いろんな大人がいる。見えているものや周りの人たちだけの狭い世界じゃなくて、自分から動いて面白い人たちに会いに行ったほうがいいと思う。    

――確かに面白い遊び方ができる人は魅力的ですよね。

  30代はフルマックス、6速全開で遊ぶべき! いずれ歳をとるし、趣味も変わるんです。自分も昔はヴィンテージカーが好きだったけど、今はすっかり快適重視ですから(笑)。   その歳でしかできない遊びってあるから、そのときの年代ごとに遊びきったほうがいい。そうするとその時代に戻りたいと思わなくなるしね。  

自分のサイズで人生を遊び尽くす

 

――遊び切ってきたと断言する石崎さんの言葉には説得力がありますね。最後に読者に先輩としてのメッセージをお願いします。

  みんなサイズも使命も違うから、人と比べるんじゃなくて、自分が心から楽しいと思えることをして遊びましょう。   ビジネスのことも言えば「誠実な人間が勝つ」。そして逃げない、やりきる、筋を通すということを大切にする人は成功すると思います。あとは、目先の利益を取ろうとしすぎないことも必要かな。   人生って、仕事も恋愛も家族生活も遊びだと思うので、自分のサイズで遊び尽くしましょう。    

プロフィール:

石崎ケンイチ 1968年三重県生まれ、リクルート、外資系金融機関エージェント、上場コンサルティング会社などを経て、27歳で独立。現在、新規事業立ち上げ支援、コインランドリー、エステサロンなど複数のビジネスオーナー、会社役員、協会理事などの仕事で国内や海外を飛び回る生活を送る。著書も『起業を成功させる 潰れないビジネスの教科書』(KADOKAWA出版)など多数を出筆。   撮影/山田和伸 取材・文/上野彩子 企画/二俣愛子 協力/カフェ&レストラン ナギサ

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