保険を見直す
バリバリ働ける今ならなにも心配しないでいいかもしれませんが、そんな大黒柱に万が一なにか起きたらと考えるとそのための備えが必要です。死亡や入院、重度障害のための備えなら生命保険が利用できます。中でも一定期間後に解約すると、支払った保険料を上回る解約返戻金が受け取れるものならより安心できます。
解約返戻金のついた生命保険は、貯蓄と保障を兼ね備えたまさに「万全の備え」といえます。ただ解約返戻金にもさまざまなものがあるため、契約するときや契約を更新するときは見直しを含め十分検討する必要があります。
解約返戻金の基本情報
生命保険は、家計の中で大きな割合を占める支出です。なにごともなく無事な毎日だけならムダな支出と感じるかもしれませんが、万が一には欠かせないものでもあります。解約返戻金は、そんな長い間無事に過ごした人ほど多く受け取れるお金です。
解約返戻金とはどんなものか
解約返戻金とは、保険契約者が自ら契約を解約したり、保険会社から契約を解除された場合に、保険契約者に対して払い戻されるお金のことをいいます。通常契約期間が長いほど返戻率は上がり、払い込んだ保険料の合計を上回る場合もあります。
解約返戻金と満期保険金の比較
保険会社から支払われるお金には、他に「満期保険金」があります。契約を満了する日(満期)を迎えた時に戻ってくるお金のことで「満期金」とも呼ばれます。
満期保険金は無事契約期間を終えた時に支払われる生存保険金のことです。解約返戻金は満期前に自ら解約または保険会社から解約された時に、もらえる生存保険金のことです。
解約返戻金がある保険の種類
解約返戻金がある保険には、終身保険・養老保険・学資保険の3種類があります。それぞれ保険の内容に違いがあるため返戻金の性質も少しずつ異なります。
保障と貯えを兼ね備えた終身保険
終身保険は被保険者がなくなったり、重い障害を負った時に保険金を受け取ることができるタイプの、生命保険です。保証期間は一生涯というのが一般的で、契約期間中どれだけ時間が経っても保険料が変わりません。
また解約返戻金があり、一定期間保険料を支払い続けると解約返戻金が支払った保険料を上回ります。そのため非常に貯蓄性の高い保険といえます。終身保険で受け取る保険金は葬儀費用やそれまでにかかった医療費に充てられることが多いようです。
満期給付金がもらえる養老保険
養老保険も、満期までに被保険者が死亡または所定の高度障害を追った場合に備える保険です。もし満期まで生存していたら、保険金と同額の満期給付金を受け取ることができるのも魅力です。そのため保険料を支払うことが保障を確保すると同時に計画的に貯蓄することと同じになるのです。
養老保険の解約返戻金は、例えば30歳で契約し60歳まで支払うタイプだとしたら、10年後までの払込総額が240万円とすると解約返戻金は206万円(返戻率88%)です。20年後の場合は返戻金が446万円(93%)、30年後(満期)では720万円(100%)となります。契約期間が長いほど返戻率が高くなることがわかります。
子どもの教育資金のための学資保険
学資保険は、子どもの教育資金の積立を目的として加入する保険で、一定期間に祝い金や満期保険金を受け取ることができます。子どもが0歳のときに契約し、高校・大学進学時などに祝い金がもらえ、満期を22歳にしていればそのときに満期保険金が受け取れるのです。
保険金は、なにか起こった後にもらえるものが多い中、一定の時期にもらえることがわかっている学資保険は子どもの将来のために計画的に貯蓄する手段として非常に有効です。
解約返戻金の種類
生命保険の解約返戻金は、低解約返戻金型と従来型、無解約返戻金型の3種類に分けられます。
解約返戻金が徐々に増えていく従来型
従来型は、払い込む保険料とともに解約返戻金が増えていきます。保険料を払い込み終わる頃には支払った保険料と解約返戻金が同程度になり、払い込み終了時でも解約返戻金は大きく増えることはありません。
保険期間中の解約返戻金が少ない低解約返戻金型
低解約返戻型は、解約返戻金の返戻率を払い込み保険料の累計額の70%程度に設定しています。保険期間中の解約返戻金は少なく、保険料の払い込みが終了した時点で解約返戻金が大きく増えるのが特徴です。
30歳男性、死亡保険金額500万円、保険期間終身で払い込み期間が60歳までとすると、5年経過時点で返戻率は69%、60歳の満期直前では77%ですが、61歳の満期後では111%と大きく増えます。
解約返戻金がない無解約返戻金型
無解約返戻金型保険は、定期保険や医療保険などによく見られ解約返戻金がごくわずかか、全くないタイプです。解約返戻金がない代わりに保険料が安いのが魅力です。保障があれば返戻金は必要ないという人にはぴったりなタイプです。
解約返戻金がある保険を契約すべき人
生命保険には解約返戻金があるものとないものがあります。それをどのようにとらえ、判断すべきなのかをタイプに分けて考えてみます。
保険を貯蓄の代わりにしたい人
解約返戻金のある生命保険では、保険料を支払うことで保障を確保し、同時に定期預金と同じような貯蓄ができます。満期近くになればそれまでに支払った保険料の合計を、解約返戻金が上回ることが多いからです。ただし、タイプによって解約返戻金がお得になるタイミングは異なりますし、解約すれば保証はなくなってしまいますから、慎重に検討することが重要です。
収入が安定している人
低解約返戻金型は、満期を迎えれば返戻金が大きく増えますが、それ以前に解約しても少ない返戻金しかありません。従来型にもいえることですが、払い込み期間中に解約するのはほとんどの場合損をします。満期か満期直前まできちんと保険料を支払うことができる、安定した収入のある人なら大いに活用できるはずです。
解約返戻金にかかる税金
満期保険金や解約返戻金にかかる税金は、契約者と受取人の関係によって異なります。基本的に、支払った保険料の総額と、受け取った満期保険金や解約返戻金の差額に対して税金はかかりますから、受け取り総額が支払った保険料の総額より少なければ税金は発生しません。
契約者が受取人の場合は所得税
受取人が契約者本人である場合は、所得税を納付しなくてはなりませんが、その受け取り方法によって扱いは変わります。
満期保険金・解約返戻金を一時金で受け取った場合は一時所得となり、それから50万円の控除額を差し引いた金額の50%の額に対して所得税が発生します。また年金として受け取った場合は雑所得となり、その年に受け取った年金の中から、その金額に対応する払い込み保険料を、差し引いた金額に所得税率をかけた金額を納付しなくてはなりません。
契約者以外が受取人の場合は贈与税
受取人が契約者以外の場合は、贈与とみなされ贈与税がかかります。よくあるのは受取人が契約者の配偶者や子ども・孫であるケースです。この場合は受け取った解約返戻金は全て課税の対象となります。
ただし、贈与税には1年間に贈与を受けた額のうち110万円までは、基礎控除とした差し引かれ非課税になります。一般的には贈与税のほうが、所得税より高くなりますので注意が必要です。
自分に合った保険を無理なく続けよう
万が一の備えとはいえ、安くても保険料を掛け捨てで支払うのは、もったいないと感じている人には解約返戻金のある生命保険がおすすめです。保険料を支払うだけでなく、場合によっては総支払額を上回る解約返戻金が受け取れるものもあり、そうなれば保障と貯蓄を同時にまかなうことができるからです。
保険料は決して安くなく、解約返戻金がつく保険ならなおさらです。しかし大切なのはいま支払うことができる保険料と、必要な保障内容、それを必要な金額を想定して各保険・特約内容に適切に割り振り、自分の実生活にぴったりなバランスのよい保険を、保障が必要なくなるまで続けられることです。