メンタルと筋トレには大きな関係がある
「心技体」という言葉があるように、古くから肉体と精神は密接に結びついていると考えられてきました。そのエッセンスは現代にも受け継がれており、スポーツ医学では筋肉とメンタルを同時に鍛えられるメソッドが研究されています。
筋肉とメンタルの結びつきを理論的に理解することで、効果的な筋トレによってメンタルが鍛えられるメカニズムを把握し、より効率よく筋トレを行う方法について詳しくお伝えしていきます。
筋トレはメンタル強化に効果あり
筋トレ中にはさまざまな種類の脳内物質が分泌され、それらの影響により気分が高揚したり苦痛がやわらいだり、普段以上の力が発揮できたりと体にとってポジティブな効果が得られる場合があります。
筋トレ中に起こり得る体内の変化を具体的に把握することによってその時々の体の状態を細かくチェックできますし、より効果があがる筋トレのメソッドを開発する際の参考にもなります。
筋トレでメンタルがよくなる理由
筋肉のみを鍛えているうちは、筋トレの効果を100%引き出しているとは言えません。筋トレとメンタルとのつながりを医学的に把握することによって、筋トレ中も「今、体内で何が起こっているのか」ということを具体的に理解することにつながり、実際に効果をアップさせることも可能になります。
筋トレによってメンタルまで鍛えられるメカニズムについて具体的に解説していきます。
テストステロンが出る
男性ホルモンの代表であるテストステロンは、気分を高揚させたり、闘争心を高めたり、やる気をアップさせたりと、体のスイッチを入れる効果があります。
筋トレをつづけていくうちに少しずつ痛みがやわらいでいくのはテストステロンの作用によるものだと考えられており、筋トレ上級者のなかには「筋トレはやればやるほどクセになる」と語る人も少なくありません。
テストステロンは筋肉や骨格をつくる原材料でもあり、思春期から青年期にかけて分泌量がピークをむかえるとされています。
セロトニンやエンドルフィンもでる
テストステロンに気分を高揚させる作用があるのに対し、セロトニンやエンドルフィンには気分をリラックスさせる効果があります。
セロトニンは入眠物質としても知られており、体が眠りにむかっていくときに脳内に大量に分泌されて副交感神経を活性化し、心地よい睡眠へと導きます。
エンドルフィンは快感物質の一種であり、セロトニンと同じく気分をリラックスさせたり多幸感を高めたりと、心と体を安静に保つはたらきを担っています。
キヌレニンを打ち消す
うつ病のリスクを高める因子として知られる脳内物質に、キヌレニンがあります。キヌレニンが代謝される過程でトリプトファン濃度を減少させ、その影響によってうつ病の発症リスクが高まるという理論が「キヌレニン仮設」として広まっています。
効果的な筋トレをつづけることによって体内で合成されるキヌレニンの量を抑制することができ、リラックス物質とも言われるトリプトファンが増えることによってうつ病のリスクが軽減されると現代のスポーツ医学では考えられています。
ドーパミンもでる
大きな仕事を終えた時、大好きな食べ物を食べた時、憧れている人に認められた時……人として幸せだな、という感覚を味わった時に脳内で分泌されるのがドーパミンです。
ドーパミンは俗に快感物質ともよばれ、幸せな瞬間以外にも強い苦痛を感じた場合も大量に分泌され、一種の脳内麻酔として苦痛をやわらげてくれることがわかっています。
本来ならば苦痛をともなうはずの筋トレが時に快感へと変わっていくのはドーパミンやセロトニンの作用であり、脳内物質によって自分を「上手にだます」ことでトレーニングの効果をさらに高めることができます。
アドレナリンもでる
ドーパミンとならんで心と体を高揚させてくれるのがアドレナリンです。「アドレナリン分泌中!」という表現が一般的にも広まっているように、筋トレをしていない人の間でも「アドレナリン=エネルギーの源」というイメージが定着しているようです。
筋トレでは負荷が大きくなってきた段階でアドレナリンの分泌量が増えていくことがわかっており、脳内のアドレナリンが増えていくにつれて苦痛が軽減され、筋肉本来のポテンシャルが充分に発揮しやすくなると言われています。
筋トレによるメンタル変化
男性と女性では筋肉や骨格の構造が異なりますから、筋トレのメニューにも変化をつける必要があります。筋トレで起こり得るメンタル面の変化について見ていきましょう。
ダイエットになるので自信が持てる
効果的な筋トレは見た目をスリムにしてくれるだけでなく全身の基礎代謝を向上させ、太りにくく痩せやすい体質の土台をつくることができます。
食事制限などよりも根本的なシェイプアップが可能になるため、筋トレをつづけることによって女性としても自分に自信を持つことができ、プライベートでも生き生きとした毎日を過ごすことができます。
心身が整うことで心が落ち着く
筋トレは、できるかぎり時間をきめてルーティンとして行ったほうがより効果があがると言われています。1日のうちできっちり時間をきめて集中して同じメニューをこなすことで日々の生活にメリハリがつき、体はもちろんのことメンタル面でも落ち着いてきます。
メンタルが落ち着けば筋トレにもよりいっそう集中することができますので、効果的な筋トレはある種のメンタルトレーニングとしても作用すると考えられます。
筋トレだけでないメンタル強化
メンタルを効率よく強化できるメソッドは筋トレばかりではありません。日常の軽い運動や趣味を通してもメンタルをととのえることができますので、自分に合った習慣を見つけましょう。
ジョギング・ランニング
ジョギングやランニングなどの有酸素運動は脳内に新鮮な酸素を供給し、規則的な呼吸リズムによってメンタル面も落ち着ける効果があるとされています。運動効果がより高いのはランニングですが、単位時間あたりの運動量が多く、心肺機能への負担も大きくなりますので、メンタル強化のほうを重視したいのであればジョギングからはじめてみるのもひとつの方法です。
本を読む
のんびり読書に興じるだけでもメンタルを落ち着かせ、疲れが溜まった心身をリラックスさせることにつながります。
読む本は基本的に自由ですが、読んでいてハラハラするサスペンスやミステリー、性的刺激の多い官能小説などはかえって心拍数を上げてしまう可能性がありますので、リラックスが主たる目的であれば短時間で読めるエッセイやほのぼのする家族小説がおすすめです。
より効果的な筋トレによるメンタル強化
筋トレによるメンタル強化の効率をさらに向上させるためには、運動としての効果にも着目し、より相性の良い組み合わせを探す必要があります。
有酸素運動と組み合わせる
スポーツ医学では、筋肉に負荷をかける筋トレは無酸素運動、ジョギングなどは有酸素運動として分類されています。
有酸素運動には体内の代謝を活性化させ、脂肪が燃えやすい体質をつくるほか、気分をリフレッシュさせる効果があると考えられています。
有酸素運動と組み合わせた筋トレを心がけることで心身ともにリラックスさせることができ、ストレスに強いメンタルをつくることにもつながります。
ヨガと組み合わせる
ヨガと筋トレはかつては別々のメソッドとして発展してきましたが、双方を組み合わせることによってメンタル強化に効果があることがわかっており、ヨガの要素を取り入れた筋トレメニューが次々に開発されています。
独特の呼吸法を基本とするヨガと筋トレを上手に組み合わせることによって筋肉だけでなくメンタルの強化にもつながり、なおかつ全身の基礎代謝を高めることもできます。
筋トレでメンタルをより強化することができる
筋トレで筋肉のみをきたえる時代はもう終わりました。現代は心と体を同時に鍛え上げることがオーソドックスなメソッドであり、メンタルを効率よく強化することがパンプアップの近道であると考えられています。筋トレに集中しながら、強靭なメンタルを一緒に鍛えましょう。