確定拠出年金のデメリットを解説
確定拠出年金は以前、利用する条件がありそれほど注目された金融商品ではありませんでした。しかし法改正となり利用できる人が多くなったことで、老後の資金運用として興味を持つ方、加入を考える方が多くなっています。
メリットの高い方法といわれますが、デメリットがないわけではないのです。老後の資金を運用していくにあたり、後悔の内容に確定拠出年金を運用するため、確定拠出年金のデメリットについても深く理解しなければなりません。
確定拠出年金共通のデメリット
確定拠出年金は個人型と企業型があり、特に個人型の確定拠出年金「iDeCo」は節税対策にもなりメリットが多いということで注目されています。毎月積み立てていく掛金は全額控除対象となり所得税や住民税の減税効果を持っています。受け取り時にも退職所得控除、公的年金等控除を受けることができるというメリットもあるのです。
しかし全くデメリットがないということはありません。確定拠出年金にもデメリットがありその内容をよく理解して上で運用していく必要があります。
60歳までお金を引き出すことができない
確定拠出年金は老後の資金という目的を持っているため、60歳になるまでお金を引き出すことができません。そのため、5年や10年の短期に利用目的がある貯蓄、運用には向かない商品です。あくまでも老後の資金として運用するものなのだという考えが必要となります。
また通算加入期間によって引き出し可能な年齢が変わることもあります。10年以上の場合には60歳から70歳の間で受給可能です。しかし通算期間が短くなると受け取り開始の時期が繰り上がるのです。
例えば通年期間が6年以上の方は受給開始年齢が62歳から70歳となりますし、4年以上という場合には63歳からです。これも理解しておきましょう。
受け取る金額が運用次第で変化する
掛金に関してはあらかじめ決まっていますが、受け取る年金の額に関しては運用によって変動する、これも確定拠出年金のデメリットです。将来受け取る金額が確定せず、最悪元本割れする事もあり、将来の生活設計を立てにくいということも確定拠出年金の特徴です。
様々な手数料が掛かる
株式投資などに関しても手数料などがかかりますが、確定拠出年金ならではの手数料がかかるということもデメリットです。運用管理費用、買付手数料など、投資信託の運用についてかかる費用があり、プラス、年金制度加入時にかかる手数料、資産運用を実施する金融機関に支払う手数料などがかかります。
投資そのものにかかる手数料等に加えて追加費用が掛かるということもデメリットです。金融機関によってかかる費用が違うので金融機関を吟味することでコストを削減できますが、こうした費用がかかることも頭に入れておきましょう。
企業型と個人型それぞれのデメリット
確定拠出年金は個人が掛金を支払う個人型と企業が掛け金を負担する企業型があります。この個人型、企業型についてもぞれぞれにデメリットがあります。種類によって違うデメリットとなるため、それぞれについてのデメリットも理解しておくべきでしょう。
企業型のデメリット
企業型は一般的に企業が掛け金を支払う確定拠出年金です。企業が金融機関、賞品を選び掛け金を支払う分、個人型よりもデメリットが多いといわれています。
運用先を自由に選べない
企業型は企業が利用する金融機関を決定するため、運用する商品を個人で選択することができません。運用したい魅力ある商品が別の金融機関にあっても、企業が選択した物でない場合、利用できないため自由度の少ない方法です。
企業型は転職や退職時に損をする可能性
企業型DCに加入している人がその企業を退職し別の企業に転職する場合、確定拠出年金を転職先が行なっているかどうかを確認する必要があります。転職的企業が確定拠出年金を行っている場合、半年以内に移換手続きを行う必要があるのです。
転職先企業が企業型DCを行っていない時、若しくは退職というときには、自分で移換手続きを行う必要があります。この手続きをしないと確定拠出年金は現金化されてしまうので「国民年金基金連合会に自動移換さ」されます。すると資産の運用ができなくなり、資産が増えることもなく手数料だけ支払うことになるので注意が必要です。
個人型のデメリット
個人型確定拠出年金「iDeCo」は節税効果が大きいメリットの高い方法として一気に注目され、加入を考えている方も非常に多いと思います。しかし、メリットばかりではなくデメリットもあるので運用したいという人は特にデメリット部分をよく理解し加入を考えなければなりません。
口座の開設と管理に手数料が掛かる
個人型の確定拠出年金に加入する時には、金融口座を作る必要があり、この時口座開設手数料がかかります。口座を作ってからも運用の段階で管理するための手数料もかかっていくので費用が掛かるのだということを承知していなければならないのです。
個人型は企業型と違い、自身で金融機関を選ぶ必要があります。金融機関によって手数料の金額に違いがあるため、金融機関を選ぶ前に手数料がどのくらいかかるのか、理解する事も重要です。
金融機関を選ぶための知識と情報が必要
個人型は企業型とは違い誰かが金融機関を選んでくれるということがないので、金融機関に関する情報、知識を持って選ぶことが必要です。金融機関は経済の動きに深く関係しているため、経済に関してあまり知識を持っていないという人は、ある程度の知識と情報つかみその上で金融機関を選ぶ必要があります。
手数料などはすぐに確認できると思いますが、その他の情報などについてもよく確認する事が重要なのです。金融機関の選択は将来受け取る時に資産が増えているかどうかに深くかかわります。慎重に選ぶためにも知識や情報は必要となります。
受給時税金が発生する可能性
個人型の確定拠出年金の場合、人によって受給時税金が発生する事もあります。退職の際には退職所得控除が適用される、これも個人型確定拠出年金の大きなメリットです。しかし会社の退職金、公的年金等控除については公的年金と合算して計算されるため、人によっては退職金が多くなり受給時に税金が発生する事もあるのです。
大企業の職員の方、公務員で勤続年数が長いという人は退職金が多くなることが予想できるので、退職金受け取り時に税金を支払う可能性も出てきます。
個人型 | 企業型 | |
確定拠出年金のデメリット | ・自分で金融機関、運用の金融商品を選ぶ必要がある ・運用には経済、金融商品の情報、知識が必要 ・手数料のリスクを考える必要がある ・退職金が多い人は税金を払う可能性がある | ・金融機関、運用先が企業決定となるため自由度が低い ・転職時、退職時に損をする可能性がある(手続きを自分で行う必要がある) |
確定拠出年金を上手に運用する目標の立て方
メリットもあるけれどデメリットもある、確定拠出根金を上手く運用していくためにはしっかりと目標を立てることが必要です。目標を立てることでどのように運用するか方向性が決まります。運用の最終目標が決まらないままに運用していると自分が考えていた結果に結びつかないこともあるのです。
将来受け取れる年金の額から考える
確定拠出年金の運用目的は、老後の資産形成です。そのため、将来受け取ることができる年金額の目標を立てておくことが重要です。受け取る年金額が多いという場合には、ハイリターン商品を狙う計画を立てる方もいます。もちろんハイリターン商品はハイリスク商品なので、経済に関する深い知識を持っている事も重要です。
年金額が少ない方はリスクが少ない安定の金融商品を選ぶ方が多いです。ハイリターン商品に手を出して元本割れでも起こせば、さらに年金額が少なくなるのですから、見返りが少なくても安定した商品の方が安心です。
60歳までにいくら準備したいか決める
現在は60歳以降も今まで通り働いているという人も多く、企業によっては定年引上げを行っているところもあります。60歳はまだまだ元気ですが、60歳、定年になったらのんびり余生を過ごしたい、趣味を謳歌したいという方もいます。そのため、確定拠出年金の目標として60歳までにどのくらいの費用を準備しておけばいいか考え、その額を目標額とする方もいます。
定年後の生活費、公的年金や貯蓄分を差し引き、確定拠出年金分でどのくらいの額を持っていたいのか試算しておけば、そこを目指して運用する事もできます。
目標達成に必要な利回りを考える
実際に目標額を決めたら今度はその目標を達成する利回りを計算してみます。例えば月に1万を30年積み立てて、運用利回りが4%の場合、利回り4%の運用期間30年の遠近終価係数は58.3283です。月1万だと年間で12万、これに係数をかけると700万近くになります。
この利回りが2年となると年金終価係数は41.3794となるため、最終的な額は500万くらいです。つまり200万くらいの差が出てくるということになります。目標達成額をいくらにするか考える事で、利回りがどのくらい必要なのか、それもわかってきます。
運用商品を選ぶ際のポイント
確定拠出年金に関しては利回りを重視するほうがいいといわれます。現在の日本は不景気・デフレ時代ですがこの先経済が安定しインフレとなるかもしれません。インフレとなると物価が高くなり、貨幣価値が下落という状態になります。
インフレになると物価が値上がりするので、こうした状況で確定拠出年金の運用の中で利回りを意識した運用が必要となるのです。
確定拠出年金では金融商品に投資する形で資産を増やすというものですが、想定していた利回りよりも運用する実際の利回りが低くなるとマイナスになってしまう仕組みになっているのです。だからこそ、確定拠出年金は利回りを重視して運用しなければならないといわれています。
商品のリスクとリターンを把握する
確定拠出年金運用の価格変動の理由は金利です。通常定期預金などの金融商品も満期になると元本が戻ります。しかし満期がない商品、企業の業績などによって値動きも変化するので、ハイリスク、ハイリターン商品と呼ばれます。
債権を選ぶなら変動要因が金利となるのである程度、値動きの変動をつかめますし、満期になると元金が通常戻ってくるので安心です。しかし株式などの場合は経済、世界情勢によって変わっていくため、リスクをつかみきれないともいわれています。
金利をつかみ安定した商品を選択するのか、それとも値動きを読みハイリターンを狙うのか、リスクとリターンを理解して商品を選択すべきです。
資産配分を決める
個人型の確定拠出年金の場合は、自分で金融機関を選び運用することができます。商品の選択も自分で行うため、どのように資産を配分し運用していくかよく考える必要があります。
短期の商品ではなく確定拠出年金は長期運用となるので投資するタイミングを計る事よりも、どのような商品を選ぶか、バランスをよく考える事が重要です。リスクがあるけれどハイリターンを望める商品、リターンが少なくても安定している商品をバランスよく組み合わせます。
確定拠出年金の資産配分はリスクをよく考慮した配分が必要なのです。リスクがあっても魅力ある商品をどこまで許容できるか、金融商品をよく理解し配分していくことで最終的な目標に近づけることができるでしょう。
手数料を意識する
金融機関によって確定拠出年金運用商品の手数料が変わります。短期間の運用なら手数料もそれほど大きく影響しませんが、確定拠出年金は長期運用となるため、手数料が高いとその分コストが継続的にかかっていきます。
コストをなるべく少なくできるように商品を選ぶことが大切です。常に運用を管理しかかっている手数料などを計算しておくことでコストが安い商品を選択できます。それによってリターンを改善することができるのです。手数料は確定拠出年金にとって重要な費用だということを意識し、なるべく安いコストになるよう、見直しなども行っていく必要があります。
確定拠出年金の運用内容の見直しのコツ
確定拠出年金は老後の資金として運用していくため、5年や10年という短期の商品とは違います。運用していく中でコストがかかりすぎていると感じたり、リターンが得られていないと感じる時、運用内容を見直す必要があるのです。その運用内容の見直しのコツ、タイミングなどを理解する事も運用を上手く行っていくポイントといわれています。
運用していく中で変化を感じられればいいのですが、見直しを忘れてしまうという方も多いようです。しかし確定拠出年金は長期運用するものなので、見直しは必須となります。
運用内容を見直すタイミング
老後の資金を少しでも多くするための確定拠出年金です。ずっと同じ商品の組み合わせで理想的な運用にはなりません。運用していく中で実績によって保有資産のバランスが崩れる事もあるのです。確定拠出年金は自分で運用するというシステムなので、運用商品の選択、変更も自分で行います。
運用変更のタイミングは運用状況のお知らせが来た時、また誕生月など必ず行う見直すタイミングを自分で決めておくと、バランスのいい状態を保ちやすくなります。
状況に応じて配分変更を行う
確定拠出年金を運用している時、ずっと同じ実績になっているということはありません。時間が経過したり、環境の変化などによって運用を見直すことも必要です。運用の見直しによって運用を変更する場合には「配分変更」と「スイッチング」という方法があります。
配分変更というのは自分が掛け金で購入する運用商品の種類、また配分などを変更することです。年齢によってそろそろ安定した商品に変えていきたいと思う時や、運用成績が悪く商品を変えてリターンを狙いたい時などに行います。
資産配分がどうもうまくいかないという場合には配分をプロに行ってもらうことができる商品などもあります。例えば運用機関が短くなる際に積極的なハイリスクハイリターンの商品から安定性のある資産配分に変えるといった商品です。このほかにも、市場の変化によって投資先、資産割合をプロが変更してくれるという商品もあります。
スイッチングで運用商品を買い換える
運用変更のもう一つの方法として「スイッチング」という方法があります。スイッチングというのは、今まで積み立ててきた資産の商品について、組み合わせを変更することを言います。例えば一つの商品を全部売却し別の商品を購入するなどの変更がスイッチングです。
スイッチングの場合には変更といっても拠出金の配分変更にはなりません。スイッチングを行った時、商品に対する資産残高は変化します。
スイッチングはリバランスを行う時にも利用します。株価が下がりA、Bの資産前たの割合が減少し、別の商品割合が増えたとき、そのままにしてもいいのですが、ここでスイッチングを行い資産配分の割合をもとに戻しておきます。こうすることで後にA、Bの株価が上昇したときに大きいリターンが見込めるのです。これが資産配分割合の調整、リバランスです。
デメリットをしっかり理解して加入を検討しよう
確定拠出年金は節税効果もありしっかり運用できればメリットのある魅力的な運用になります。しかし運用の仕方によっては元金我を起こす可能性があるなどデメリットが全くないというものでもないのです。
確定拠出年金は短期で運用し資産を増やすというものではなく、長期で運用し老後の資産を形成するものです。長い目で見て商品のバランスを整え、最終的に目標額に近づけるように考えていかなければなりません。デメリットを理解することでリスクを回避する事もできるはずです。加入に関しても運用に関してもメリット、デメリットをよく理解し自己責任で行っていくことが必要です。