社債を購入する上で重要になってくる利回りについて
ベーシックな社債の購入は、新規発行で購入し、満期まで持ち続けるものです。この運用だけなら利回りと利率は等しいので、特別利回りの知識はいりません。 しかし既発債を購入したり、中途売却することを考えるなら、利回りを意識しなければいけません。上級者向けではありますが、利回りについての基本的な意味を理解しておけば、あなたの投資判断を客観的に判定するのに役立ちます。 そこで今回は利率と利回りの違いから社債特有の考え方などについてお伝えします。ぜひマスターして、ワンランク上の投資をめざしましょう。社債の利率と利回りの関係
社債の「利率」はどのようなもので、「利回り」とはどんな違いがあるのでしょうか。その違いについてみていきましょう。社債の利率とは利息がどれくらいつくかということ
債券に関する用語として「利率」という言葉があります。この「利率」とは額面の金額に対してどれだけ利息がつくか、ということを意味します。額面が100万円の債券に対し、利率が3%と設定されている場合、1年間に30,000円の利息がつくことになります。 この利息を投資用語では「クーポン」といい、利率のことを「クーポンレート」とも呼ばれます。利率は、額面の金額に対する利息の割合です。購入金額に対する割合ではないので注意しましょう。利回りは投資効率を数字化したもの
投資において、「利率」よりも重要視されることが多いのが「利回り」です。「利回り」は購入時の価格からどれだけの割合で増えたのかを表すものです。債券の購入(売却)を投資と捉えた場合の投資効率を数字化したもので、購入時の資産からどれだけ増えたかを示します。 額面100万円の債券があるとします。購入金額が95万円だったとすると、額面との差額である50,000円がすでに利益になっています。仮に償還までの期間が5年とすれば、1年あたりの利益は10,000円です。 一方、この債券の利率が3%であったとすると、額面である100万円に対する3%の年間30,000円の利息が発生します。この利息の30,000円と額面と購入金額の差異から発生した1年あたりの利益である10,000円を足した40,000円が年間の利益となります。この場合、年間の利益である40,000円を購入価格の95万円で割った結果である4.2105%が利回りとなります。 利回りは次の数式で求めることができます。利回り【%】=100×((利率×額面金額÷100)+(額面金額-購入金額)÷残り年数)÷購入金額 購入金額と額面金額が同じであり、かつ償還まで持ち続けるならば、利率と利回りは等しくなります。社債は通常、販売価格と額面金額は同じなので利回り=利率です。ただし、中途換金する場合や既発債を購入する場合には利率と利回りが異なるケースが多くなります。
債券で利回りを考えながら投資をしよう
利回りを意識する、というのは投資の基本でもあります。また債券の市場価格と金利の関係や、社債特有の考え方などを理解しましょう。債券を購入する時期や単価で利回りが変わる
債券は購入する時期や単価によって利回りが変わるので注意が必要です。 債券の額面の金額は一定で変動することはありません。利率も固定金利の場合は常に一定で償還まで変わりません。ただし、利回りについては、購入金額と償還までの残年数によって変動する可能性があります。 新規で発行される新発債の場合、通常は発行価格と償還時に支払われる額面の金額が同じなので、利率=利回りとなります。しかし、すでに発行されている既発債の場合には、購入するときの市場単価によって購入金額が変わります。購入するタイミングに注意しましょう。市場単価は市場金利で決まる
一般的に、債券の市場単価は、市場金利の影響を受けます。 仮に金利が1%のときに利率5%の債券があったとすると、利率の5%から金利の1%を引いた4%が実質の利率といえます。ここでもし、金利が2%に上がると、実質的な利率は3%に目減りしてしまいます。利率が目減りしている債券はそのままの金額では買い手がつかないので、目減りした分の金額を値引かなくてはいけません。 このように、金利と債券の市場単価は負の相関があるといえます。つまり、金利が上昇すれば債券の市場単価は下がり、逆に金利が下落すれば債券の市場単価は上がるのです。 社債の市場価格に影響を与えるのは、市場金利だけではありません。その社債を発行した企業の信用度合いで変動し、信用度が低い、つまり経営が危ないと判断されれば価格は下がり、安泰だと判断されれば価格は上がります。購入単価が100円以下はオトクな可能性が高い
購入単価が100円を割っているということは、額面の金額を下回っているということ。利率よりも利回りが大きくなるので、オトクな可能性が高いといえます。購入金額が額面の金額をした回っているアンダーパーの債券はお買い得と考えることができるでしょう。 ただ社債の場合、100円を割っている理由を考えておかなければいけません。買い手がつかず、値下げされているのであれば、それは企業の信用や評価が下落していることの表れでもあります。そのリスクを承知しておかなければなりません。自分で利回り計算してみよう
具体的な数字で考えたほうが分かりやすいという人のために、さまざまな種類の利回りの計算の例をいくつか用意してみました。ぜひ自分で計算をしてみてください。直接利回りの計算方法
自分が投資した金額、つまり購入金額に対する毎年の利息収入の割合を「直接利回り」といいます。この直接利回りの計算をしてみましょう。 【直接利回りの計算式】直接利回り=100×(額面金額×利率/100)÷購入金額
数式で見ただけではイメージが湧きづらいので、例題を示します。 1.額面金額100円、利率5%、償還年限10年の債券を95円で購入した場合の直接利回りは?
→100×(100円×5%/100)÷95円=5.2632% 2.額面金額100円、利率5%、償還年限10年の債券を105円で購入した場合の直接利回りは?
→100×(100円×5%/100)÷105円=4.7619%
応募者利回りの計算方法
新規発行の債券を購入し、償還まで持ち続けたときの利回りのことを「応募者利回り」といいます。応募者利回りは次の計算式で算出することができます。 【応募者利回りの計算式】応募者利回り=100×((額面金額×利率/100)+(額面金額-発行金額)÷償還年数)÷発行金額 こちらも実際の数字を用いた例題を示します。 1.額面金額100円。利率5%、償還年数10年の債券を、発行金額95円で購入し、償還期限まで保有したときの応募者利回りは?
→100×((100円×5%/100)+(100円-95円)÷10年)÷95円=5.7895% 2.額面金額100円。利率5%、償還年数10年の債券を、発行金額105円で購入し、償還期限まで保有したときの応募者利回りは?
→100×((100円×5%/100)+(100円-105円)÷10年)÷105円=4.2857%
最終利回り
既発行の債券を購入し、償還まで持ち続けたときの利回りのことは「最終利回り」と呼びます。最終利回りの計算式は次のとおりです。 【最終利回りの計算式】最終利回り=100×((額面金額×利率/100)+(額面金額-購入金額)÷償還までの残り年数)÷購入金額 1.額面金額100円。利率5%の債券を、95円で購入し、償還期限まで保有(償還までの残り年数5年)したときの最終利回りは?
→100×((100円×5%/100)+(100円-95円)÷5年)÷95円=6.3158% 2.額面金額100円、利率5%の債券を、105円で購入し、償還期限まで保有(償還までの残り年数5年)したときの最終利回りは?
→100×((100円×5%/100)+(100円-105円)÷5年)÷105円=3.8095%
所有期間利回り
既発行の債券を購入し、中途売却した場合の利回りのことを「所有期間利回り」といいます。所有期間利回りは次の計算式を用いて算出することができます。 【所有期間利回りの計算式】所有期間利回り=100×((額面金額×利率/100)+(売却金額-購入金額)÷保有年数)÷購入金額 1.額面金額100円。利率5%の債券を、101円で購入し、5年間保有した後102円で売却したときの所有期間利回りは?
→100×((100円×5%/100)+(102円-101円)÷5年)÷101円=5.1485%