ロータリーエンジンのメリットデメリットを学ぶ
1957年に開発されたロータリーエンジンは当初「夢のエンジン」として世界中の注目を集めました。回転運動によって出力を得るエンジンは効率がよく、音も静かで特徴のあるものです。ロータリーエンジンとは
ドイツで開発されたロータリーエンジン。量産化できるのはマツダのみです。ドイツの技術者フェリクス・バンケルが開発
1957年、西ドイツのNSU社、Wankel社の2社で共同開発されたロータリーエンジンは正式にはバンケルエンジンとよばれます。NSU社が最初に量産を開始しました。DKM型とKKM型
ヴァンケル博士が開発したのは「DKM型」とよばれるタイプです。回転ピストンエンジンのことで、ローターとトロコイドとよばれるハウジングにより構成されています。このトロコイドとローターは3:2の速度で回転します。構造が複雑なため量産には不向きでした。 一方、マツダで製造しているロータリーエンジンはKKM型とよばれます。こちらは固定されたハウジングの内部でローターが回転する軌道回転ロータリーエンジンです。開発当初は、軌道が高速回転するためアペックスシールに負荷がかかり異常摩耗する「チャターマーク」が発生、長時間の走行には耐えられない問題がありました。 第一次世界大戦の頃、飛行機のエンジンは回転式エンジンでした。プロペラとエンジンが一体となって回転する方式。この場合クランクシャフトとは固定されている回転式レシプロエンジンをロータリーエンジンとよぶことがありました。日本では自動車用のエンジンとしてバンケルエンジンをロータリーエンジン(RE)とよぶことが一般的です。回転運動によって出力を得るエンジン
まゆ型をしたハウジングの中を三角形のおむすび形状のローターが回転するので「Rotary」エンジン。ハウジングとはレシプロエンジンのシリンダーやシリンダーヘッドにあたります。ロータを包み込むケースです。そしてピストンに該当するのがローターとなります。 ローターを回転させることで動力を得る内燃機関のエンジンです。最初から回転しており、回転しやすい特徴があります。このローターが回転することで出力を得るのです。そしてロータリーエンジンはモーターのようにスムーズに回ると例えられます。 性能基準である「エンジン回転数」はロータリーエンジンの場合、エキセントリックシャフトの回転数です。この回転数が4サイクルレシプロエンジンのクランクシャフトの回転数に相当します。量産技術を持つのはマツダだけ
開発当初は画期的な発明として、世界中のほとんどの自動車メーカーで技術導入、または委託開発などの契約を結びました。しかし多くのメーカーは研究段階でロータリーエンジンを搭載した自動車の開発計画の破棄を決定。残ったのはイギリスのバイクメーカーであるノートンとマツダだけでした。旧ソビエト連邦でも量産
自動車用としてロシア連邦でも2002年頃まではロータリーエンジン搭載車が販売されていました。その車体を利用していたのは、高級官僚や軍人などです。高出力が出せることから高性能車両として販売されていました。NS系のロータリーエンジンを元に、資本主義圏との提携もなく独自の研究開発により市販の車両で8車種に搭載されています。 またその技術は航空機にも使用されており、4ローターエンジンは試作段階で400馬力に達していたといわれているのです。ソ連が崩壊しロシア連邦となってからも販売されていたとの情報もありますが、エンジン設計の内容など多くの情報は、冷戦終結後の現在でも西側諸国には伝わっていません。NSUと東洋工業の技術提携
1965年、日本では乗用車の輸入自由化に向けて通商産業省(現在の経済産業省)の主導による自動車業界再編の噂がありました。後発メーカーである東洋工業(現在のマツダ)はその影響から統合、合併の危機に。事態打開を目指した当時の松田恒次社長は1960年にNSU社と技術提携の仮調印を行なっています。契約に際しNSUから提示された条件は一方的なものでした。- 1. 当時の従業員数8,000人分の給与に相当する2億8,000万円の契約金
- 2. 10年契約
- 3. 東洋工業で取得した特許はNSUに無条件で提供
- 4. ロータリーエンジン搭載車を販売した場合、1台ごとにNSUにロイヤリティーを支払う