不動産投資が節税になるって本当?実際のメリットと仕組み・経費にする方法

節税対策の一つとして不動産投資を検討している方も多いと思いますが、あまり知識がない状態で始めるのは好ましくありません。節税に対する認識を間違えていると、大失敗するリスクもあるので注意が必要です。

この記事では、不動産投資で節税を始めたいと考えている方に知っておいていただきたい基礎知識をわかりやすく紹介しています。

正しい節税の仕組みと不動産投資との相性について理解したうえで、具体的にどのくらいの節税効果が期待できるのかを確認してみましょう!

この記事を書いた人 ファイナンシャルプランナー 児玉一希
プロフィール・所持資格 日本ファイナンシャル・プランナーズ協会が定めている、ファイナンシャルプランナー技能士の資格を有し、当サイトの監修活動を始め、相場情報のまとめやコラムを寄稿する活動なども行なっている。
 
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目次

不動産投資が節税対策になる仕組み

まずは、不動産投資を行うとなぜ節税対策につながるのかについて解説します。

不動産投資を行うことで節税できる税金の種類と、それぞれの仕組みについてしっかり理解しておきましょう。

所得税と住民税が節税できる仕組み

不動産投資では家賃収入を得ることで利益を確保できますが、利益計算をするためには家賃収入から不動産の管理費などの必要経費を引いて計算します。

これらを計算する際に必要になるポイントが損益通算減価償却で、所得税と住民税の節税にも繋がります。

損益通算

損益通算とは、ある所得で生じた損失を、その他の所得で得た利益と相殺することをいいます。

たとえば、給与所得を得ているサラリーマンの方が不動産投資を行った場合で考えてみましょう。※給与所得が1,000万円、不動産所得が350万円の赤字(家賃収入200万円 – 経費 550万円)の場合

損益通算のシミュレーション(平成27年分以降)
A.課税される所得金額 B.所得税の税率 C.控除額 D.所得税

(A×B-C)

給与所得のみ 10,000,000 33% 1,536,000 1,764,000
損益通算後の課税総所得額 6,500,000 20% 427,500 872,500

このように、損益通算により不動産投資で発生した赤字分を給与所得から差し引くことができるので、所得税の課税総所得額が少なくなり、税率も下がることから節税に繋がります。

減価償却

減価償却とは、購入した不動産を定められている耐用年数に分割させ、税務上の経費にできるものです。

不動産の場合、減価償却できるのは建物のみで、土地は「建造物」ではないので「減ることはない」という考え方に基づいて減価償却できません。

建物の種類によって以下のように減価償却期間が決まっています。(建物の用途によって異なりますので、以下は住宅用で紹介します)

住宅の耐用年数表
構造 耐用年数
木造・合成樹脂造 22年
木骨モルタル造 20年
鉄骨鉄筋コンクリート造
鉄筋コンクリート造
47年
れんが造・石造・ブロック造 38年
金属造 4mm以上:31年
3~4mm:25年
3mm以下:17年

これらの耐用年数に基づいて、不動産所得から費用として差し引くことができます。

相続税と贈与税が節税できる仕組み

親が投資用に所有していた不動産を亡くなった後に相続した場合にかかる相続税や、親などから不動産を生前贈与された時にかかる贈与税についても節税効果が期待できます。

不動産の場合は路線価(土地)と固定資産税評価額(建物)から不動産評価額が評価される仕組みになっており、平均すると7~8割くらいに評価額が低くなります。

現金を相続・贈与した場合は額面がそのまま評価額となるため、現金よりも不動産の方が評価額が下がるため節税効果が高くなると言えます。

ただし、不動産の資産価値が当初よりも大幅に下落すると、見込んでいた評価額よりもずっと低くなっていて節税の恩恵もあまり得られない場合もあるので注意しましょう。

不動産投資で節税効果を狙う場合の注意点

節税効果を狙って不動産投資を始めるにあたって知っておくべき注意点をまとめました。

  • 節税をメインに考えてはダメ
  • 節税効果は一定ではない
  • 赤字経営に要注意
  • メインの収入が不安定なら意味がない?

不動産投資と節税効果を成功させるためにも、これらの注意点をしっかり頭に入れておきましょう。

不動産投資は節税目的でするものではない

あなたが不動産投資を始めようと思ったきっかけが節税効果を狙ったものだとしても、節税する目的だけで行うべきではありません

確かに不動産投資による赤字は損益通算して節税効果に繋がりますが、あまりにも利回りが低い物件だとなかなか物件取得費用の元を回収できず、結果的に損をする可能性が高くなります。

利回りが低くても節税効果が高い」という物件には絶対に手を出してはいけません。

そもそも不動産投資はお金を増やす目的で行うものなので、「投資で利益を得られて、節税のおまけまであるなんてラッキー!」のような感覚で理解しておきましょう。

経費は年々減少し節税効果は小さくなる

不動産投資を始めた当初は節税効果が大きかったけど、数年後にはあまり節税効果を実感できなくなった…となるのは、経費として算入できる費用が少なくなるからです。

建物は20年以上減価償却費として計上できますが、給排水設備(15年)や冷暖房機器(6年)、流し台(5年)などの住宅設備については減価償却費として計上できる期間がもっと短いです。

新築ではない中古物件だった場合は、建物や住宅設備機器の耐用年数がもっと短くなり、経費として計上できる期間が少なくなります。

また、物件取得費用として元利均等返済方式のローンを利用していた場合は、年数が経つほど経費として計上できる利息が少なくなります。

このように、不動産投資を長期間続けるほど経費として計上できる金額が少なくなるため、結果的には節税効果も小さくなる点を覚えておきましょう。

金融機関への印象が悪くなる可能性

不動産投資で発生した赤字は損益通算できて節税に繋がるメリットがある一方で、結果的に大きなデメリットに繋がるのは金融機関から新たな融資を受けにくくなるからです。

赤字経営を続けている人に対しては「こんなに赤字経営が続くなら投資のセンスがないでしょう?新たに融資しても返済が難しそうだからこれ以上の融資は無理だね」という印象を持たれる可能性が高いですよね。

不動産投資目的に限らず、その他の目的で融資を受けたい場合にもデメリットが生じる可能性が高くなります。

追加融資が受けられずに資金繰りが悪くなって最初のローンも返せない状況になると、物件差し押さえとなり大事な資産を失うことにもなりかねないので注意が必要です。

所得が安定しない人は節税にならない可能性も

減価償却により節税に繋がるとご紹介しましたが、所得額が毎年安定しているとは限らない会社経営者や外資系企業に勤務している方などについてはおすすめできない面もあります。

その年の不動産投資で得た利益と損失による収支と給与所得を合算して課税対象額が決まるため、給与所得が多い年なら節税効果が高くても、所得が少ない年には節税効果が少なくなります

そのため、節税目的だけで不動産投資を検討するのはリスクが大きいため、給与所得以外の安定した所得を得る手段として不動産投資を選択肢の一つに検討することをおすすめします。

不動産投資の節税効果シミュレーション

それでは実際に、不動産投資を行うとどれだけ節税効果を得られるのかシミュレーションしてみましょう。

中古マンションの節税効果をシミュレーション

中古マンションを購入した場合を想定し、どのくらいの節税効果を得られるか確認してみましょう。

シミュレーション条件
年収 700万円
購入した物件価格 1,000万円
物件の想定利回り 6%
物件構造 鉄筋コンクリート造
法定耐用年数 建物 47年、付帯設備 15年
物件構成 土地20%(200万円)、建物80%(800万円)
建物75%(600万円)、付帯設備25%(200万円)
築年数 10年
償却年数 ※1 建物 39年、付帯設備 7年
償却率(定額法) ※2 建物 0.026、付帯設備 0.143
ローン金利 2%

※1:償却年数(小数点以下切捨て) = (法定耐用年数 – 経過年数) + 経過年数 × 0.2

国税庁「中古資産の耐用年数」より

※2:国税庁「減価償却資産の償却率表」より

節税効果のシミュレーション
家賃収入 600,000円(50,000円×12ヶ月)
諸経費(不動産取得税、固定資産税、管理費など含む) 500,000円
ローン利息(建物分) 160,000円
減価償却費 建物 156,000円(600万円×0.026)
減価償却費 付帯設備 286,000円(200万円×0.143)
不動産投資の損益 △502,000円
給与所得との損益通算 6,498,000円
損益通算前の所得税額 ※3 974,000円(700万円 × 23% – 636,000)
損益通算後の所得税額 872,100円(6,498,000 × 20% – 427,500)
節税額 101,900円

※3: 国税庁「所得税の税率」より

今回紹介したシミュレーション内容は節税効果の目安として計算しており、実際には細かな数値が必要になりますのでご了承ください。

金融商品の生前贈与と不動産の贈与税を比較シミュレーション

次に、20歳以上の人が親などから生前贈与を受けた場合、現金と不動産では贈与税額がどれだけ変わるのか比較してみましょう。

贈与税 = (贈与された価額 – 110万円 )× 税率 – 控除額

贈与税はこちらの計算式で算出します。110万円は基礎控除額で、税率や控除額は基礎控除後の金額によって変わります。(※ 国税庁「贈与税の計算と税率」より)

親が1,000万円で購入した不動産を贈与する場合、相続税評価額は2~3割少なくなるため今回は評価額が800万円と想定して計算します。

贈与税のシミュレーション
現金 1,000万円 評価額800万円の不動産
1,770,000円
(1,000万円 – 110万円)× 30% – 90万円
1,080,000円
(800万円 – 110万円) × 20% – 30万円※諸経費別途(40万円程度)

※特例贈与財産用(特例税率)を適用

現金1,000万円を贈与するよりも、1,000万円で購入した不動産を数年後に贈与した時の方が節税効果が高いことがわかります。

ただし、不動産を贈与する際には、登録免許税や不動産取得税が諸経費として発生するため、贈与税とは別に贈与する財産の5%程度の諸経費がかかる点を忘れないでください。

不動産投資の節税効果を上げる方法

ここまで紹介した不動産投資の節税効果をさらにアップさせる方法がありますので、ぜひ参考にしてください。

確定申告を青色申告で行う

給与所得以外に不動産投資などで所得を得ている場合は、確定申告を行う必要があります。

確定申告の方式は記帳が簡素化された白色申告と、細かく記帳しなければいけない青色申告がありますが、青色申告にすると青色申告特別控除が適用されて最大65万円の控除を受けられるため節税効果がアップします!

青色申告は記帳が大変というイメージを持たれている方も多いですが、基本的な記帳のルールさえ把握しておき、会計ソフトを活用すると簡単ですし、不安な方は税理士に相談するのもおすすめです。

青色申告を行う際には納税地の税務署に青色申告申請書を提出(その年の3月15日まで)しなければいけないので、あらかじめ準備を整えておきましょう。

高所得者は海外の不動産投資もおすすめ

高所得者はより節税効果が高い不動産投資を視野に入れていると思いますが、国内の不動産よりも海外に目を向けた方が節税効果が高くなります

アメリカの場合、建物の比率が高くて減価償却を多く算出できることや、戸建てやアパートの中古物件も売れやすくて価格も下落しにくい点が大きな魅力として注目されています。

注意しなればいけないのは、国内の不動産投資はローンでも参入しやすいのに対し、海外はローンだと購入できない場合が多い点です。

少なくても自由に動かせる自己資金が1,000万円以上なければ海外の不動産投資は難しいので、自己資金に余裕がある方は注目してみてはいかがでしょうか。

不動産投資の規模が大きければ法人化も視野に

不動産投資を始めた段階では個人事業主として所得に応じた税金(所得税)を支払う義務がありますが、順調に不動産投資がうまくいって収入がアップした場合には、法人化を視野に入れることをおすすめします。

所得税よりも法人税の税率が低いので節税効果はアップしますが、法人化するためにはそれなりに費用や労力がかかるため、節税以外のメリットもよく検討しながら判断してください。

不動産投資を行う前に節税の理解を深めておこう

不動産投資は節税効果が期待できる面もありますが、節税だけを考えるのではなく、あくまでも投資で儲けることをメインに考えることが大切です。

利回りを確認して間違いなく損をしない良い物件を購入することが前提であり、節税効果は不動産投資のおまけとして考えた方が良いでしょう。

青色申告などさらに節税効果をアップさせる方法もあるので、節税に対する知識をしっかり深めて、あなの不動産投資が成功することをお祈りします!

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