「少ない予算で信用取引をしているが、増し担保の意味がよく分からない」
「増し担保の銘柄は信用取引しても大丈夫なのだろうか?」
あなたはこのような悩みを持ち続けてはいませんか?
増し担保とは、信用取引が過度に取引され相場が加熱した時に、通常の担保金以上に証券金融会社が徴収する担保金のことを意味します。
今回は、増し担保の意味と増し担保銘柄の取引ポイントをわかりやすく解説します。
増し担保銘柄の取引の進め方を正しく理解すれば、不安なく信用取引を続けることが可能になります。
この記事を読んで、信用取引の不安を少しでも解消できれば幸いです。
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この記事を書いた人
ファイナンシャルプランナー
児玉一希
プロフィール・所持資格
日本ファイナンシャル・プランナーズ協会が定めている、ファイナンシャルプランナー技能士の資格を有し、当サイトの監修活動を始め、相場情報のまとめやコラムを寄稿する活動なども行なっている。
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増し担保で信用取引の過熱を規制
冒頭でも触れましたが、増し担保とは、信用取引が過度に取引され相場が加熱した時に、通常の担保金以上に証券金融会社が徴収する担保金のことです。
つまり、増し担保は信用取引がヒートアップするのを規制する役割なのです。
増し担保と信用取引の関係を一つ一つ見ていきましょう!
増し担保で信用取引の保証金が増額
増し担保には、保証金の増額で新規の信用取引を抑制し、加熱している相場を冷ます狙いがあります。
一般的に、増担保規制に指定された銘柄は、信用取引に必要な資金が大きくなることで新規の買いが入りづらくなります。そのため、増担保規制をきっかけに株価が値下がりすることは珍しくありません。一方、増担保規制が解除された銘柄には、新規の買いが増え、株価が上昇するケースも見受けられます。
増し担保の規制がかかる5つの基準
取引所は、投機的な取引に活用されやすい「信用取引の過度な利用」を未然に回避するため、一定のガイドラインを設けています。
一体どのような時に規制がかかるのか、5つの基準を以下にまとめました。
日々公表銘柄に指定されている
まず、大幅な上昇や下落を繰り返すような投機的な値動きをしている銘柄に対して規制がかかります。
毎日、信用取引の残高が公表されますが、日々公表銘柄以外の通常の銘柄に関しては、信用残(買い残・売り残)の公表は週1回行われていますので覚えておくとよいでしょう。
大幅な上昇や下落を繰り返すような投機的な値動きをしている銘柄など、ガイドラインの基準に該当した銘柄については、空売り・空買いなどによって、大きな損失を被る可能性のある投資家に注意を喚起する目的で、毎日、信用取引の残高(信用残)の公表を行っています。このような銘柄を「日々公表銘柄」、あるいは「注意銘柄」といいます。
上場株式数の残高基準
残高基準とは、東京証券取引所が、ガイドラインに基づき様々な判断をする際に使用する基準のひとつです。
次のいずれかに該当する場合
- イ.売残高の対上場株式数比率が15%以上で、かつ、売残高の対買残高比率が70%以上である場合
- ロ.買残高の対上場株式数比率が30%以上で、かつ、3営業日連続して各営業日の株価と各営業日時点における25日移動平均株価との乖離が30%以上(各営業日の株価が各営業日時点における25日移動平均株価を超過している場合に限る。)である場合
- ハ.当取引所が「信用取引残高が継続的に増加している銘柄」として公表した日の翌月の応当日以降において、売残高の対上場株式数比率が15%以上又は買残高の対上場株式数比率が30%以上である場合
売買回転率基準
売買回転率は、株式の流通度合いをみるための指標です。
取引対象である上場株式数の何割が実際に売買されたかを意味します。
第一次措置から第四次措置の実施基準の実施基準
- 1営業日の株価と当該営業日時点における25日移動平均株価との乖離が40% 以上であり、かつ、次のいずれかに該当する場合
- イ.当該営業日の売買高が上場株式数以上であり、かつ、当該営業日の信用取引の 新規売付比率が30%以上である場合(当該営業日の株価が当該営業日時点にお ける25日移動平均株価未満である場合に限る。)
- ロ.当該営業日の売買高が上場株式数以上であり、かつ、当該営業日の信用取引の 新規買付比率が60%以上である場合(当該営業日の株価が当該営業日時点にお ける25日移動平均株価を超過している場合に限る。)
信用取引売買比率基準
3営業日連続して各営業日の株価と各営業日時点における25日移動平均株価との乖離が30%以上であり、かつ、次のいずれかに該当する場合(各営業日の売買高が1,000売買単位以上である場合に限る。)
第一次措置から第四次措置の実施基準の実施基準
- イ.3営業日連続して信用取引の新規売付比率が20%以上である場合(各営業日の株価が各営業日時点における25日移動平均株価未満である場合に限る。)
- ロ.3営業日連続して信用取引の新規買付比率が40%以上である場合(各営業日の株価が各営業日時点における25日移動平均株価を超過している場合に限る。)
特例基準
特例基準とは、上記の条件に該当しない場合でも、取引所が独自の判断で規制する、という意味です。
ガイドラインでは具体的な条件は明記されていないため、ケースバイケースで規制する場合があるようです。
増し担保の規制による株価への影響
増し担保による規制が入ったことをきっかけに値下がり、増し担保の規制が解除されると新規の買いが増えて値上がりする傾向にあります。
株価の変動理由は様々です。
実際に投資する際は、いろいろな角度からの検証が必要となりますので注意が必要です。
増し担保規制中の銘柄で取引するポイント
ここでは、増し担保規制中の銘柄で取引するポイントを3つ紹介します。
口座の保証金に余裕をもっておく
先にもお伝えしましたが、増し担保規制とは、ある銘柄の委託保証金率が通常の30%から引き上げられる規制のことですが、増し担保規制中だと50%以上になることが多いと言われています。
急な値動きで保証金不足になると、強制決済で損をする可能性が出てきますので、口座の保証金には余裕を持ちましょう。
規制前から保持しているなら保証金は変わらない
規制前からすでに保持している銘柄がある場合は、その部分に関しては保証金は規制前のままで変わりません。
追加で購入した分にだけ保証金がプラスされる仕組みになっていますので、安心してください。
規制中でも空売りは可能
また、保証金の猶予があれば、増し担保規制中でも空売りをすることは可能です。
空売りの詳細は下記記事も確認してみてください。
空売りとは?わかりやすく簡単に買い戻しの方法と仕組みを解説!
しかしながら、空売り規制までかかると取引はできなくなりますので注意が必要です。
増し担保の規制が解除される条件と確認方法
増し担保の規制がかかる、ということは規制が「解除される」場合があると言えますね!
ここでは、増し担保の規制が解除される条件とその確認方法をまとめました。
取引所が定める増し担保の解除基準
まず、基本的に残高基準と株価基準の解除基準を全て満たすと、規制はなくなります。
ですが、取引所の独自判断で上記の条件を満たしても解除されない場合がありますので、一概には言えないようです。
解除基準 次に掲げる(1)及び(2)の基準のすべてに該当した銘柄については、委託保証金の 率の引上げ等の措置を解除する。
(1)残高基準 次のイ.及びロ.のすべてに該当する場合
イ.5営業日連続して売残高の対上場株式数比率が12%未満である場合
ロ.5営業日連続して買残高の対上場株式数比率が24%未満である場合
(2)株価基準 5営業日連続して各営業日の株価と各営業日時点における25日移動平均株価と の乖離が15%未満である場合
(3)特例基準 (1)及び(2)の基準のすべてに該当している場合であっても、当取引所が信 用取引の利用状況や銘柄の特性を考慮し必要と判断した期間は措置を解除しないこ とができる。
増し担保規制の解除を確認する方法
増し担保規制が解除されているかどうかは、JPXの「信用取引に関する規制等」のページで確認することができます。
また、各証券会社の取引ツールなどで、規制中や像担保規制中などの表示、もしくはそれらの表示がなくなっているかどうかでも確認可能です。
解除タイミングの予測はチャートの確認
解除基準の一つである株価基準は、チャートを見ればあなた自身で日数をカウントすることができます。
解除条件のひとつにある「25日移動平均株価との乖離が15%未満」のクリア日数をカウントし、一般的に5日連続でクリアすると解除の可能性が高まるとされています。
※必ず解除されるとは限りませんのでご注意ください。増し担保の規制が解除されるかどうかは東証次第であることを覚えておくとよいでしょう。
増し担保以外でも規制で取引に注意
最後になりましたが、増し担保以外でも規制がかかる場合がありますので、こちらも注意が必要です。
今回は2つの規制についてまとめましたので、今後の参考にしてください。
証券会社が独自の判断で個別銘柄に規制
増し担保の規制は「取引所」が行うことになっています。
しかし、それとは別で証券会社が独自に規制を行う場合があります。
証券金融会社は、信用売りが増えて貸し付ける株券が少なくなり調達が難しくなると判断した銘柄に対し注意喚起を行い、金融商品取引所が「貸株注意喚起銘柄」を発表します。それでも改善されない場合は貸借取引申込みの制限・停止を実施して「貸株申込制限銘柄」として、金融商品取引所が日々公表銘柄として公表します。
日々公表銘柄に指定されても改善されなければ、委託保証金率を引き上げたり、代用証券の掛目を引き下げ、担保の額を増やす「増担保規制」を行います。
新規の取引ができなくなる二階建てでの株保有
また、信用取引をする際、新規の取引ができなくなる「二階建て」での株保有も気をつけなくてはなりません。
二階建てとは、現物株で保有している代用有価証券と同じ銘柄を信用取引で買い建てすることを意味します。
これにより、想定外の損失を防ぐため、一定の保証金を超える取引はできなくなります。
二階建てのリスクを軽減するため、各証券会社では当該銘柄の新規買建などの取引に制限をかけていますので、信用取引を始める前にしっかりと確認しておくとよいでしょう。
二階建ての状態は、株価下落時には代用有価証券の評価が下がり、さらに信用建株の評価損も拡大することになります。想定以上の損失が発生することもあり、リスクが高くなります。
保証金に余裕をもって増し担保銘柄で取引
信用規制が株価に与える影響を一概に述べることは難しいことですが、「信用規制された銘柄は、現時点において値動きが激しい銘柄」であることは言えるでしょう。
信用規制された銘柄は、暴騰するにせよ、暴落するにせよ「大きな値動き」をすることが多いため、信用規制を材料として株取引をする際には「リスク管理」をしっかりとすることが重要です。
また、増し担保銘柄で取引する際は「保証金に余裕を持つこと」も大切です。
この機会に、今後不安のない信用取引ができるよう、日々相場を観察する習慣もつけるとよいでしょう。
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