自社株買いってどういう意味?売り時のタイミングとメリット・デメリットを徹底解説!

さまざまな株の情報収集をしてみても、なかなか上がりそうな銘柄を見つけることは難しいと感じるかもしれません。ですが、実は株式投資では、高確率で値上がりを期待できるような状況もあるのです。

それが「自社株買い」。その名の通り、これは企業が自社の株式を買い付ける行為のことなのですが、そもそもどうして自社株買いが株価の値上がりにつながるか、あなたは理解していますか?

自社株買いと一口に言ってもさまざまなケースがあり、単にこの発表がなされたからといって銘柄に飛びついてしまうと、思わぬ痛手となってしまうかも。

しかし、熟練トレーダーのように上手く自社株買いのチャンスを生かすことができれば、非常に有利にトレードを行うことができるのです。

今回はそのような「自社株買い」について、基本的な意味からメリット・デメリット、投資に活かすためのポイントなど、幅広い内容で解説したいと思います。

この記事で理解を深め、ぜひ自社株買いを利用したトレードでも利益を取れるようになりましょう!

この記事を書いた人 ファイナンシャルプランナー 児玉一希
プロフィール・所持資格 日本ファイナンシャル・プランナーズ協会が定めている、ファイナンシャルプランナー技能士の資格を有し、当サイトの監修活動を始め、相場情報のまとめやコラムを寄稿する活動なども行なっている。
 
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目次

自社株買いとは

まずは、「自社株買い」という言葉の意味について確認しておきましょう。

自社株買いとは、ある企業が発行した株式を、自社の手により市場の時価で買い戻す行為のことを指します。

これにより買い戻した株式は消却されることとなるため、自社株買いには株式市場に出回る発行済みの株式数を減らせる効果があります。

そのため、自社株買いは株式価値を高める上で非常に有効ですが、それだけに悪用されれば恣意的に株価を上げるようなこともできてしまいますよね。

そこでそのような相場操縦行為を避けるため、自社株買いには購入割合の限度や時間帯の制限、指値での購入額など、規制のためにルールが定められているのです。

企業が自社株買いをする4つのメリット

企業が自社株買いをすると、どのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは4つのポイントに分け、自社株買いのメリットについて解説いたします。

株主に利益の還元ができる

自社株買いのメリットとして一番の効果と考えられるのが、日ごろから投資をしてくれている株主への還元ができる点。

先ほども述べたように、企業が自社株買いをすれば市場に出回っている株式を消却することが可能となり、発行済み株式数を減らすことができます。

すると企業価値を見る上で重要な「PER」と「ROE」といった数値が改善され、1株当たりの価値もこれまで以上に高まるため、結果として株価が上がりやすくなるのですね。

株価が上がれば、株主の含み益も増えるので、自社株買いには実質的に配当金と同じような効果があると捉えても良いでしょう。

従業員の持ち株の確保

企業によっては自社株買いで購入した株式について、従業員に決めた価格で購入できる「ストックオプション」といった権利に利用していることもあります。

ストックオプションでは通常よりも割安で株式を取得できることが多く、さらに自社株買いで株式価値が高まっているため従業員にとってはかなり嬉しい制度なのですね。

さらに自らの働きで業績にプラスの影響を与えられれば、その分持ち株で得られる利益も増加するため、従業員のモチベーションアップにもつながります。

敵対的買収の防止策になる

上場企業におけるリスクの一つとも言えるのが、「敵対的買収」への懸念です。

敵対的買収とは、合意なしに巨額の資金を持っているファンドなどが大量に株式を買い付けることで、その企業の経営権支配を狙う行為のこと。

ですが自社株買いを行えば株価が上昇しやすくなるため、必要なコストを増加させられ、敵対的買収のハードルを上げることができるのです。

さらに、自社株買いで得た株式を消却しないまま保有することにより、企業の持ち株比率を増やすことも。

こうした効果もあるため、結果として自社株買いは敵対的買収を防止することにもつながるのですね。

浮動株を減らして供給を調整

「浮動株」とは長期保有で一ヶ所に留まっている株式とは別に、株式市場で繰り返し売買がなされている株の割合を指します。

需要と供給の関係にもあるように、株式市場に出回っている浮動株が多いと(=供給過多)、需要が低下してしまい、株価の上昇にブレーキがかかってしまうのですね。

そこで自社株買いを行い浮動株を減らせば、その分供給も減るため、株価が上昇しやすくなります。

自社株買いによる3つのデメリット

ここまで見ると良いことずくめのようにも思われる自社株買いですが、やはりメリットがあれば当然デメリットもあります。

そのようなデメリットについて、3つのポイントに分けて見ていきましょう。

企業の自己資本の余裕がなくなる

自社の株式と言えど、もちろんお金を払って買い付けることとなるため、自社株買いを行うためには多くの資金が必要となります。そこで、この資金がどこから出るかと言えば、それは企業の自己資本から。

なので、自社株買いを行うと自己資本を減少させることとなり、場合によっては企業の財政面を悪化させてしまうケースも。

一般的に、自己資本比率が20%を下回ると経営が危険に陥るとされていることもあり、いくら株主還元になるとはいえ、あまり無計画に自社株買いを行うような企業は投資対象としてリスクが高いかもしれませんね。

企業の自己株式の処分で利益の減少

自社株買いがなされたからといって、確実にプラスの影響がもたらされるわけではありません。企業が買い付けた自社株を処理する方法によっては、再び株式の価値が下がってしまうことも。

と言うのも、企業が行う自己株式の処理にはこれまでご説明した「消却」のほかに、「処分」といった方法もあるのです。

「処分」とはつまり、買い付けた株式を再び売却すること。株式を完全に無くしてしまう「消却」と違い、「処分」の場合では再び株式の供給が増えてしまい、浮動株数やPERなどといった指標も元に戻ってしまうのですね。

なので、企業が自社株買いを発表したとしても安心せず、その後「消却」と「処分」どちらの処理がなされるかにも注意しておきましょう。

リスクの分散ができない

一般的に多くの企業は主となる事業のほかに、自己資本を活用し投資などの資産運用をすることでリスクの分散をしています。

ですが、自社株買いをしてしまうと自社の株式保有率が増加するため、その分リスクが集中してしまうことにも。

なので株価が低下したり、万が一倒産した時、その分の損失を直に受けることとなってしまうため、あまり自社株を大量に保有するのは危険な面もあります。

自社株買い企業への投資のポイント

株価の上昇する自社株買いは、株式投資におけるチャンスの一つ。

ただし、投資を行う上では注意すべきポイントもいくつかあるので、ここでご説明いたします。

慌てて株を購入する必要はない

これまでご説明してきた通り、自社株買いは株価にとってプラスとなるため、発表がなされると慌ててその会社の株を購入したくなってしまうかもしれません。

しかし自社株買いの発表直後では、勢いよく株価が値上がりする傾向にあるため、慌てて購入してしまうと高値掴みをしてしまう可能性が高く、あまりおすすめできません。

ではどうするかと言えば、自社株買いには”○月○日~○月○日”といったように、取得期間が設定されていることに注目しましょう。

この取得期間は数ヵ月単位といったように、比較的長いスパンで行われることが多いです。

そこで、自社株買いが行われてもすぐに飛びつかず、期間中の値動きの波を観察し、いったん安くなったタイミングでエントリーしてみるのも良いでしょう。

実際に自社株買いをしない場合もある

理不尽なことに、企業が自社株買いの予定を発表したにもかかわらず、実際にはその後自社株買いをしないといったケースもたまにあるのです。

さすがに最初から嘘の発表をするような企業は無いとは思われますが、急に財政面で問題が発生した、などの理由で自社株買いがキャンセルとなることはあり得るでしょう。

そうした場合でも、すぐにキャンセルの発表をするわけではなく、自社株買い期間が過ぎてからやっと、キャンセルとなったことがわかることもあるため、投資家にとっては困った話ですね。

これについては株主を大切にする起業か、など企業自身の体質も影響しているので、過去の実績をIR情報などから確認しておき、株主を軽視しているような企業の自社株買い発表は鵜呑みにしないことが無難と言えます。

売却ラインは予め決めておく

自社株買いの勢いにうまく乗って含み益を得られたとしても、株式投資は売り抜けるまでが重要です。いつまでも株価が上昇する補償はないので、あらかじめ売却ラインを決めておくようにしましょう。

売却ラインの決め方としては、移動平均線との乖離率や高値からの下落率など、さまざまな方法がありますが、大切なのは自身が満足できる利益率かどうかになります。

保有資金や取れるリスクの大きさとの兼ね合いも考慮し、ベストな売却ラインを定められると良いですね。

自社株買いに関するよくある疑問

自社株買いについて一通り学んだところで、少し疑問として引っ掛かる部分もあるかもしれません。

そこで最後に、自社株買いに関するよくある疑問についての答えをまとめてみました。

事前に自社株買いをする企業は探せるのか

他の投資家に先んじて、公に発表する事前に自社株買いをする企業を探すことができれば、大きな利益を得ることができますよね。

しかし、もちろん公表前の内部情報を入手して株を買い付けるような行為は、犯罪であるインサイダー取引に当たるため行ってはいけません。

では、合法的に自社株買いをする企業は探せるのでしょうか?

その答えとしては100%ではありませんが、高確率で自社株買いを行いそうな企業を探すことは可能です。

ポイントとしては、まず企業のキャッシュ面に注目しましょう。自己資本に余裕があるような企業であれば、お金が余っているため自社株買いに回す力もあると考えられます。

また、成長段階で配当性向が低い企業も狙い目。このような企業は獲得した利益を余すことなく企業の成長に充てるため、その一環として自社株買いが行われる可能性も。

さらに、安定した成熟期に入っている企業が自社株買いを行うケースも多く見られます。理由としては、経営が落ち着いたことで以前のような成長の勢いが無くなった分、株主還元に舵を向けることが期待できるという点にあると考えられるでしょう。

自社株買いする企業は増えているのか

以前に比べると景気も不安定な局面の多い現代ですが、意外にも自社株買いをする企業は増えているのです。

これには企業経営の仕組みに関わるルールである「コーポレートガバナンス・コード」が、2018年6月に改定されたことが大きく影響しています。

この改定により、上場企業の中でも株主を大切にする姿勢が強まり、以前よりも株主への利益還元に積極的な企業が増えたのです。

投資家にとっては非常に良い傾向と考えられ、今後も自社株買いを通じて利益を得るチャンスが期待できますね。

まとめ

今回は、自社株買いについてメリット・デメリットや投資のポイントも交え、詳しく解説してまいりました。

自社株買いでは株価上昇の可能性が高まる一方で、企業の財政面を圧迫してしまったり、処分で再び株価が下がってしまうリスクもあるのですね。

ですが、総合的に見てもやはり自社株買いは株式投資における一大チャンス。財政面や成長率、企業発表などを注意深くチェックし、自社株買いの期待できるような銘柄を探してみましょう。

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