「100年安心」と謳われてきた日本の年金制度の信頼性が揺らいでいる中で、老後に備えた資産運用を本格的に検討している方も多いのではないでしょうか。
将来に備えた資産運用の方法としてiDeCo(イデコ)を選択する方も多いですが、メリットだけでなくデメリットもあるので、しっかり仕組みを理解しておく必要があります。
この記事を読んでいただけると、iDeCo(イデコ)で資産運用をする前に知っておくべきポイントがよくわかるので、ぜひ参考にして資産運用の選択肢として検討してください。
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この記事を書いた人
ファイナンシャルプランナー
児玉一希
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iDeCoとは
将来の生活資金を確保するための方法として注目されているiDeCo(イデコ)とは具体的にどのようなものか確認しておきましょう。
加入は任意の自分だけの年金制度
iDeCo(イデコ)とは「individual-type Defined Contribution pension plan(個人型確定拠出年金)」から名付けられた愛称で、「個人型確定拠出年金=自分で老後資金を作る年金制度」のことです。
国民の義務として定められている公的年金制度とは異なり、任意で掛け金を拠出して自分が選択した投資信託や保険などの金融商品で資産運用を行い、60歳以降にお金を受け取れる制度になります。
iDeCoができた背景
iDeCoが誕生した背景には、日本人の平均寿命が延びて60歳以降の生活が長期化していることが挙げられます。
退職金や公的年金の収入だけでは豊かな老後生活が送れない可能性が高いことから、資産形成方法の一つとして制度が導入されました。
iDeCoの加入資格について
iDeCo(イデコ)は加入できる人と加入できない人もいるので、それぞれの違いも確認しておきましょう。
公的年金への加入がiDeCoの加入資格
iDeCoに加入できる人は20歳以上60歳未満で、国民年金や厚生年金などの公的年金に加入している人が対象になります。
雇用形態は問われず、自営業や学生、公務員、会社員、専業主婦なども加入できますが、例外として加入できない人もいます。
iDeCoに加入できない人とは
以下の条件に該当すると、iDeCoに加入できないので注意しましょう。
- 60歳以上(掛け金の積立期間が60歳までが対象の制度のため)
- 海外在住者(日本国内に住んでいる人だけが対象になる制度のため)
- 公的年金の未納者(公的年金を未納、免除、猶予されている人は対象外)
- 勤務先でiDeCoの同時加入を認めていない場合(企業型年金加入者は注意)
iDeCoの掛け金について
iDeCo(イデコ)の掛け金設定や上限設定、掛け金を変更する際についても確認しておきましょう。
掛け金の額は毎月5,000円から設定できる
iDeCoの掛け金は月額5,000円以上から設定可能で、1,000円刻みで自由に設定できます。
家計の中から無理なく拠出できる金額を設定できますが、公的年金の加入状況によって上限が設定されているので注意しましょう。
上限額は年金の加入状況によって異なる
公的年金の保険料は被保険者の分類によって異なりますが、iDeCoの掛け金上限についてもそれぞれ以下のように異なります。
第1号被保険者 | 自営業など | 68,000円/月 |
---|---|---|
第2号被保険者 | 公務員など | 12,000円/月 |
第2号被保険者の会社員 | 企業型確定拠出年金以外の 企業年金などに加入 |
|
企業型確定拠出年金のみ加入 | 20,000円/月 | |
企業年金などに加入していない | 23,000円/月 | |
第3号被保険者 | 専業主婦・主夫など |
掛け金の額は年1回変更できる
掛け金のお支払いが難しくなった場合や、もう少し将来に備えて掛け金を増やしたい場合などiDeCoの掛け金を変更したい場合には、1年に1回だけ1,000円単位で変更できます。
途中解約はできませんが、運用を一時休止して掛け金の支払いを中断することも可能です。ただし、運用休止中も口座管理手数料が発生する点に気をつけましょう。
iDeCoのメリット
iDeCoは他の資産形成方法と比べてどのようなメリットがあるのかも含めて確認しておきましょう。
毎月の掛け金は全額所得控除の対象になる
iDeCoはさまざまな資産形成方法の中でもお得に資産形成できると言われている大きな理由は、掛け金が全額所得控除の対象になり、所得税や住民税の負担が軽減されるからです。
たとえば、現在30歳で年収500万円のサラリーマンが、毎月2万円の掛け金をiDeCoで60歳まで積み立てた場合に節税できる金額は約144万円(30年間の累計)になるので、年間48,000円もの節税になります。
運用益は再投資をするなら非課税になる
株式投資や投資信託などの運用益や、定期預金などの利子については、所得税と住民税、復興特別所得税が課税(税率20.315%)されてしまいますが、iDeCoの運用益を再投資した場合は非課税になります。
iDeCoの利益受け取りでも節税できる
iDeCoは受給権が発生する原則60歳から資産を受け取る際に以下の控除対象にもなります。
- 5年以上20年以下の期間に年金として受け取る場合 ⇒ 公的年金等控除
- 一時金として一括で受け取る場合 ⇒ 退職所得控除
働き方が変わっても継続できる
たとえばサラリーマンから自営業に転職した場合、公的年金なら厚生年金から国民年金に変わりますが、iDeCoは転職や離職をしてもそのまま継続して加入できるので安心です。
厚生年金基金や確定給付企業年金に加入していた方も、そのまま資産を引き継げるので受給権が発生する年齢に達した時点で受け取れます。
ただし、iDeCoの掛け金については公的年金の加入状況によって上限が異なる点に注意しましょう。
お得な手数料で資産運用できる
資産運用を行う際には運用コストも考慮する必要があり、通常の投資信託だと信託報酬などの手数料ががかさむほど運用益が少なくなりますが、iDeCoで選べる投資信託は信託報酬が割安に設定されているものが多いので、運用コストを抑えられるメリットもあります。
購入手数料に関してはiDeCoなら無料になる場合が多いため、効率よく運用益を得たいと考えている方におすすめです。
iDeCoのデメリット
コストを抑えられる資産形成方法としてメリットが多いiDeCoですが、デメリットになる部分がいくつかあるので確認しておきましょう。
入金したお金は60歳まで引き出せない
iDeCoはあくまでも公的年金の補助的役割を果たす資産として活用するものなので、原則的には60歳になるまで引き出せません。
「マイホームの購入資金にしたい」「子どもの教育資金として備えたい」など、まとまったお金が必要になった時にも活用できないため注意が必要です。
口座の維持にお金がかかる
iDeCoをはじめるにあたって準備しなければいけないのはiDeCoの専用口座ですが、口座を維持するだけでも以下のお金がかかる点に注意が必要です。
口座開設時(税込) | 2,777円(※) | ||
---|---|---|---|
口座管理手数料(毎月・税込) | 国民年金基金連合会手数料 | 103円 | 合計167円~617円 |
事務委託先金融機関手数料 | 64円 | ||
口座管理手数料(金融機関によって違う) | 0~450円 |
※金融機関によってはさらに加入手数料がかかる場合もあります。
原則として途中解約ができない
iDeCoは老後の生活資金を形成する目的の制度であり、途中解約する制度そのものが用意されていないので、積立を開始したら受給権が発生する年齢(原則60歳)までは解約できません。
ただし、加入者が怪我や病気が原因で障害を負った場合や死亡した場合については、例外的に解約扱いとなります。
運用リスクは自己責任
iDeCoを扱っている金融機関によって運用できる金融商品は異なりますが、加入者自身が運用商品を決定しなければいけません。
元本割れリスクが高めの運用商品もあるため、受給権を得る60歳の段階になっても必ず運用益が出るわけではない点をしっかり理解しておく必要があります。
4つのステップでiDeCoを始めよう
仕組みやメリット・デメリットを踏まえてたうえでiDeCoで資産形成することを決めたら、以下の流れで実際に運用を開始しましょう。
iDeCoの口座を開設する金融機関を選ぶ
まずはiDeCoの専用口座を開設する金融機関を選択する際には、以下のポイントを確認してみましょう。
- 手数料の安さ(購入手数料や信託報酬が安いほど運用コストを抑えられます)
- 取り扱う金融商品のラインナップ(各金融機関によって金融商品は異なります。選択肢が多いほど自分に合う金融商品を探せます)
- 簡単な取引(運用状況の確認などのサポート体制が整っているほど利用しやすいです)
複数の金融機関に資料請求するなどして、手数料や金融商品の種類などを比較してみることをおすすめします。
口座の開設手続きをする
金融機関が決まったら、インターネットや電話、金融機関の窓口などから申込書類を取り寄せましょう。
申込書類が届くまでに掛け金をいくらにするか決めておき、運転免許証などの本人確認書類の準備と、年金手帳に記載されている「基礎年金番号」を確認しておくとスムーズです。
書類に必要事項を記入したら、本人確認書類なども添付して金融機関へ返送します。
運用開始まで2カ月程度待つ
金融機関が申込書類を受領した日によって異なりますが、実際に口座ができるまでには1~2カ月かかります。
たとえばSBI証券の場合は、以下のスケジュールで利用者サイトのIDとパスワードが記載されたお知らせが届きます。
- 毎月1日~5日までに受領した場合 ⇒ 書類受領月の翌月中旬
- 毎月6日~月末までに受領した場合 ⇒ 書類受領月の翌々月中旬
国民年金基金連合会からも通知書類が届いたら、いよいよ運用開始までの準備が整ってきます。
口座ができたら掛け金で金融商品を選ぶ
口座開設手続きが完了したら、申込み時に指定した掛け金で運用する金融商品を選択します。
掛け金配分が100%になるように設定しなければいけませんが、特に設定しないままでは金融機関が自動的に金融商品を選択するので、注意しましょう。
iDeCoでポートフォリオを組むポイント
資産形成の方法はいろいろありますが、iDeCoでポートフォリオを組む場合には以下のポイントを抑えておきましょう。
60歳での目標金額を決めておく
iDeCoは60歳までの人が選択できる資産運用なので、60歳になった時点での目標金額を明確にしておく必要があります。
運用開始する年齢や目標金額によって、利回りや投資金額が変わってきますが、本当に実現できる目標なのかもしっかり確認しましょう。
各金融機関では、運用利率や運用益が非課税になることで得られる節税効果などを含めたシュミレーションを用意しているので、参考にしながら目標を決めてください。
長期運用だから分散投資がおすすめ
iDeCoは原則的に60歳になるまで長期間運用するため、分散投資を視野に入れることも大切です。
一つの金融商品に集中させて運用していた場合、損失が生じると被害額が大きくて資産が目減りするリスクも考えられます。
複数の金融商品に分散投資しておけば運用リスクを下げられるので、リスクとリターンのバランスを考えながら金融商品を選択しましょう。
iDeCoを運用する際の注意点
iDeCoで資産運用する際にはいくつか注意しておきたいポイントもあります。
資産を増やしていくためにリバランス
上手に資産運用する際に覚えておきたいのが、市場の変化によって分散投資していた割合配分が変わった時に、元の割合に戻す「リバランス」です。
たとえば、国内株式と国際株式に50%ずつ配分していた場合に、株価変動によって国内株式が70%で国際株式が30%になったら、国内株式を売却して国際株式を買い増しして調整し、資産を増やすものです。
リバランスを行うのは、あらかじめ決めたタイミングで行う(定期型)か、当初の配分が何%以上変動した場合に行う(乖離型)か、しっかりルールを決めておくことも大切です。
節税のためには確定申告か年末調整
iDeCoの大きなメリットである全額所得控除のメリットを得るためには、確定申告または年末調整を行う必要があります。
会社員や公務員の方は、基本的に年末調整の際にiDeCoの掛け金を申告するだけなので確定申告は必要ありませんが、一部例外があるので以下の確定申告が必要な人を参考にしてください。
- 会社員や公務員でiDeCoの初回掛け金拠出が10月以降の場合
- 会社員や公務員などで年末調整をし忘れてしまった人
- 自営業(フリーランス)の人
- 主夫や主夫で年収103万円以上の人
不安な老後にiDeCoでお金のゆとりを
iDeCoは老後にお金の面で苦労をすることなく、ゆとりのある生活を過ごしたいと考えている方に役立つ資産形成方法の一つです。
全額所得控除で節税効果があるなどのメリットもありますが、運用商品によっては元本割れリスクがある点も忘れずに、それぞれのライフスタイルやリスク許容度に応じて最適な運用商品を選んで資産運用を行いましょう。
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