老後破産したらどうなるの?実例から見た実態と現実的に避けるための方法

「日本には年金制度があるから老後の暮らしも安心できる!」と考えていたのに、金融庁が「公的年金の他に約2,000万円が必要になる」との報告書を発表したことで慌てた方も多いのではないでしょうか。

日本の年金制度は賦課方式で、現役世代が支払った保険料が高齢者へ年金として支給される仕組みのため、保険料を納める現役世代の数が高齢者の数よりも少なくなるほど破綻しやすくなります。

今後は少子高齢化の影響でますます現役世代が減っていくことから、公的年金だけをあてにしていると老後破産のリスクが高くなるのです。

この記事では、老後破産に至る仕組みや対策、今から準備できることを含めて詳しく紹介します。

今は貯蓄がほとんどない状態の方でも、しっかり対策しておけば老後の生活に備えられますので、ぜひこの記事を参考にして老後資金の見直しをはじめましょう!

この記事を書いた人 ファイナンシャルプランナー 児玉一希
プロフィール・所持資格 日本ファイナンシャル・プランナーズ協会が定めている、ファイナンシャルプランナー技能士の資格を有し、当サイトの監修活動を始め、相場情報のまとめやコラムを寄稿する活動なども行なっている。
 
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目次

老後破産について知っておこう

老後は悠々自適に暮らすはずだったのに、生活資金が足りなくて老後破産に追い込まれている高齢者も少なくありません。

まずは、老後破産とはどのような問題があるのか、具体的に確認しておきましょう。

老後破産とは

老後破産とは、現役を退いて安定した収入がない状態で、年金をしっかり受け取っていても生活資金が足りず、貧困生活に陥ることをいいます。

現在、国民年金の場合は生活保護の支給額よりも少ない状態で、厚生年金の場合はやや生活保護よりも支給額が多い程度です。

現役世代だった頃は真面目に働いてしっかり年金保険料を納めていたのに、いざ自分が年金を受け取る年代になった頃には年金だけでは生活できないという現実が大きな問題になっています。

どれくらいの人が老後破産しているのか

平成29年に厚生労働省が公表した「生活保護制度の現状」によると、生活保護を受給している約214万人のうち、65歳以上の人が約45%(約100万人)を占めており、年々増加傾向にあるとされています。

年金だけでは生活できない高齢者が生活保護を受給している現実が明確になっているのです。

生活保護を受給していないが、生活資金が足りなくて貧困状態になっている老後破産状態の高齢者は約200万人存在しているといわれており、高齢者の16人に1人が老後破産状態だと考えられています。

今後は、少子高齢化の影響でさらに老後破産に陥る人が増加する見込みです。

老後破産の主な原因を理解しよう

老後破産に陥ってしまう高齢者が多いのか、考えられる原因を探ってみましょう。

無計画な住宅ローン

老後破産の大きな原因になっているのが、無計画な住宅ローンを組んでいたことです。

住宅ローンを組んだ当初は十分な収入があったのに、ボーナスカットやリストラなどの影響で収入が激減して住宅ローンの返済が大変になり、老後資金を貯蓄する余裕がないというケースが増えています。

また、晩婚化が進んでいることからマイホームを購入して住宅ローンを組む年齢も30代~40代の人が多くなっており、定年を迎えるまでに完済できない長いローンを組むケースも多くなっています。

中には70代まで住宅ローンが続くというケースもあるため、老後破産のリスクが大きくなっています。

生活レベルを変えられなかった

現役でバリバリ働いていた頃には一定の収入があって余裕のある生活をしていた人ほど、老後破産に陥るリスクが高まるといわれています。

収入があった頃と生活レベルが変わらないまま過ごしていては、収入が激減する現役引退後の生活資金が足りなくなるのは当然の結果ともいえます。

収入が少なくなったのに合わせて生活レベルを変える努力が必要になるでしょう。

教育費の負担が大きかった

「子供のために十分な教育を受けさせたい」と、幼い頃からさまざまな習い事や塾などにお金をかけてきた人ほど老後破産のリスクが高くなります。

習い事や塾にかける金額が積み重なるほど教育費の負担が重くのしかかるため、家計に無理のない範囲で教育費を考えることが大切です。

また、年齢を重ねてから結婚をして子供ができた人ほど、安定した収入があるので教育費をかける傾向がありますが、現役を退く頃になって子供の教育費が一番かかる大学進学を控え、老後資金を切り崩す例も少なくありません。

高額な医療費がかかってしまった

老後も若い頃と同じように元気に暮らせると良いのですが、病気やケガなどで高額な医療費が発生して老後破産するケースも多くなっています。

年齢を重ねるほど任意加入の生命保険料・医療保険料は跳ね上がるため、若い頃加入していた保険を解約して最低限の保障内容に切り替えたり、保険を解約する人も少なくありません。

公的保険が適用されても高額な医療費が発生したり、公的保険の適用外となる場合には数百万円・数千万円もの単位で医療費が発生する場合もあります。

思わぬ医療費の発生に備えてしっかり準備しておくことも大切だと覚えておきましょう。

熟年離婚や高齢離婚した

熟年離婚や高齢離婚する夫婦が急増していることも老後破産に繋がる原因の一つです。

長年連れ添った夫婦が離婚することで、これまで力を合わせて培ってきた資産を分け合うことになり、思っていた以上に老後資金が目減りする可能性があります。

また、年金についても夫の厚生年金に加入していた妻の場合、婚姻期間中の厚生年金を分けることになりますが、夫が自営業などで国民年金に加入していた妻の場合は年金を分け合えません

財産分与についてしっかり話合わないまま熟年離婚した結果、生活資金が足りずに困窮するケースが増えているので注意が必要です。

老後破産の対策のために考えるべきこと

老後破産を防ぐためには具体的にどのような取り組みが必要になるのか考えてみましょう。

健康維持は基本である

老後破産の一因となる高額な医療費がかからないようにするためにも、健康第一で過ごすことが非常に重要です。

体調悪化に伴い通院する機会が頻繁になるほど医療費がかかり、生活費が少なくなります。

健康維持は生活費の節約にもなりますし、元気で長生きするためにも役立つので一石二鳥です!

食生活や運動などの生活習慣の改善を心がけることが、老後破産を防ぐためにも効果的なのでぜひ実践しましょう。

老後の資金計画をきちんと立てる

年金だけでで老後の生活資金の全てをまかなうことは難しいため、老後のためにどのくらい貯蓄をしておくべきなのかを現役世代のうちから考えておく必要があります。

まずは、公的年金がいくらもらえるのかを確認し、ライフプランを考慮しながら老後資金計画を立てましょう。

厚生年金や国民年金に加入している方の元には誕生月に合わせて「ねんきん定期便」が届くので、将来受け取れる年金の目安を確認しながら資金計画を考えてください。

老後も就業を視野に入れておく

健康で体が元気なうちは、仕事をして一定の収入を確保するのが理想です。正社員は難しくても、嘱託社員やアルバイト・パートなどの立場で以前の職場で働いている人も多いです。

また、副業で収入源を確保するなどの選択肢もあるので、年金収入以外の収入源を考慮することも大切です。

今からできる老後に備えた貯蓄・投資方法

老後破産を防ぐためにも、現役世代のうちから貯蓄や投資を行って老後の生活資金を準備しておくことをおすすめします。

節税効果の高いiDeCo

自分で用意できる年金制度「個人型確定拠出年金(iDeCo)」は、節税効果が高い点も大きな魅力です。

毎月一定の金額を積み立てして、自分で選んだ投資信託や保険などの金融商品を運用し、60歳になったときに運用益を含めた積立金を年金や一時金として受け取ります。

積立金は全額所得控除の対象になるため所得税や住民税の節税になり、運用益も非課税となります。

また、年金または一時金として受け取る際にも控除の対象になり節税に役立ちます。

運用商品は元本確保型と元本変動型があり、運用成績によっては元本割れになる可能性もありますが、節税しながら無理なくコツコツ積み立てて老後資金として活用できるのが大きなメリットです。

少額で長期投資するつみたてNISA

株や投資信託などで得た運用益・配当金に対する税金を毎年120万円まで最大5年間非課税にする制度・「NISA(ニーサ)」の新しい制度として登場したのが、「つみたてNISA」です。

つみたてNISAの特徴は非課税枠は40万円と少額ですが、非課税期間が20年間と長期間に設定されています。

現在はNISAとつみたてNISAの併用ができないためどちらかを選ぶことになりますが、つみたてNISAは老後資金を用意するために少額投資を長期間実践したいと考えている方におすすめです。

低解約返戻金型の終身保険

自分に万が一のことが起こった時に備えて、残された家族のため終身保険に加入している方は、保険の種類にもこだわることをおすすめします。

被保険者が亡くなった時に保険金を受け取る終身保険のうち、契約期間が終身タイプで解約時の返戻金を一定期間低く設定している「低解約返戻金型終身保険」は、解約返戻金が低い代わりに保険料が割安に設定されているのが特徴です。

保険料払込期間中に解約すると返戻金は低くなるため損をしますが、保険料払込期間満了後はいつ解約しても損になりません

そのため、現役で働ける期間は万が一のために備える保険として考え、現役を退く年齢に合わせて保険料払込が終わるように設定しておけば、いつでも解約して老後の生活資金として使うこともできます。

年金制度もうまく利用しよう

公的年金制度をうまく活用することで、通常よりも受給額をアップさせる方法もあります。

少額上乗せで年金アップの付加年金

公的年金制度には「付加年金」と呼ばれる制度があります。

付加年金は国民年金第一号被保険者任意加入被保険者だけが加入できる制度で、毎月の国民年金保険料に400円上乗せするだけで、【200円×付加保険料納付月数】が年金額に加算されます。

20歳から60歳までの40年付加保険料を納めた場合は、【200円×12ヶ月×40年=96,000円】が年金額に毎年加算される仕組みです。

40年間支払った付加保険料の総額は196,000円なので、わずか2年で元が取れるのが大きなメリットになります。

年金の受け取りを遅らせることで増やす

現在の公的年金制度では原則65歳から受給できる仕組みになっていますが、受給を66歳から70歳に遅らせることで受給額を増やせるメリットもあります。

受給を1ヶ月遅らせることで0.7%増額となるので、1年で8.4%増額、5年で42%も増額となります。

仮に65歳から年額60万円(毎月5万円)の年金を受給できる予定だった人は、1年遅らせるだけで年額650,400円、5年遅らせると年額852,000万円となります。

70歳まで働けるなど安定した収入を確保できる場合は、年金の受給を遅らせることも検討してみるのもおすすめです。

なお、逆に60歳になった時点で早く年金を受給する場合には1ヶ月あたり0.5%の減額となり、最大30%まで減額される点には注意しましょう。

老後を見据えて今からできる対策をしよう

老後はゆっくり好きなことをして過ごしたいと理想を抱いていたのに、現実は老後破産に追い込まれてしまうケースも少なくないため、決して他人事ではありません。

現役世代の方にとっては「老後なんてまだまだ先の話」と思うかもしれませんが、老後破産にならないように早い段階でしっかり対策を行うことが大切です。

今のライフプランを含め、老後のためにどのくらいの生活資金を確保しておくべきなのかを考え、老後を見据えた計画をしっかり立てて対策を講じることをおすすめします!

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