ある程度大きな資金を元手に株式投資を始めた方の場合、一つの銘柄に対して500株や1,000株など、複数単位の注文を出すこともあることと思われます。
しかし、そこで気を付けなくてはならないのが「内出来」。適切に注文を出したとしても、その一部しか約定しない状況があることをあなたはご存知でしょうか?
これには株式売買におけるルールも大きく関係しており、知らずにいると他のトレーダーにチャンスを越されてしまうことも。
今回は、そうした「内出来」についてわかりやすく解説してまいります。
約定の仕組みや、手数料や訂正に関する疑問点も併せて解説するので、この記事を読めばより投資の知識を深めることができますよ。
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この記事を書いた人
ファイナンシャルプランナー
児玉一希
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内出来とは
「内出来」とはどのようなことを指すのでしょうか?
まずは、用語の意味から確認していきましょう。
発注した注文の一部だけが成立すること
株を購入する際に500株や1,000株などと、複数単位の注文を出すことがあるのではないでしょうか。
「内出来【うちでき】(=一部出来)」とは、そのような場合に発注した注文数の一部だけが成立することを指します。
例えば1,000株注文して300株しか売買成立しなかった場合が内出来であり、「300内出来、700残り」といったように表されます。売買の成立数と不成立数のどちらが多いかは関係なく、残った株数のほうがが少なくても内出来とされます。
また、発注した注文の全てが約定することは「全出来」と言うので、併せて覚えておきましょう。
買いと売りの注文バランスが崩れると発生
では、内出来はどのような状況で発生するのでしょうか。
よくあるパターンとしては、買い注文と売り注文のどちらかが多すぎたり少なすぎた場合があります。そうした場合には買い手と売り手がうまくマッチングできず、内出来として一部分だけが取引成立することとなってしまうのですね。
売り買いのうち多かった注文の方で残りとなった部分に関しては、次の注文があるまで先着順の順番待ちになることに。そのため約定を急ぐ場合には、なるべく早く注文を出しておくようにしたいものですね。
内出来が発生する約定の仕組み
では、内出来はどのような状況で発生するのでしょうか?
ここでは株式売買の約定の仕組みから、内出来が発生するメカニズムを解説いたします。
注文に対して優先順位が付けられている
実は株の注文には、条件によって優先順位が付けられているのです。
では、どのようにそうした順位は決められるのでしょうか。
注文時間が早い順に約定する時間優先の原則
「時間優先の原則」とは、同一銘柄・同一株価での指値注文の際に、注文時間の早い順に売買が成立する原則のこと。
簡単に言えば、同じ条件の注文に関しては”早い者勝ち”の順に決定されるということですね。
基本的に使っている証券会社や発注数も関係なくこの原則が適用されるので、株のトレードにおいて他の投資家よりも早く注文を出すことは、大きなアドバンテージを得られるとも言えるでしょう。
優先順位の高い成行注文の原則
「成行注文」とは、値段を指定せずに発注する注文方法のこと。約定する値段については、売買が成立した相手によって決定されます。
そのため成行注文では、注文を出してから1秒も経たないうちに注文が約定することも当たり前で、デイトレードなどスピードが求められる取引では特に効果を発揮します。
そのように指値注文よりも迅速かつ確実な成行注文ですが、出来高の少ない銘柄などではなるべく避けるようにしたほうが良いことも。
板が薄く売り買いの注文の間にスプレッドが空いていると、思っていた価格より不利なところで約定する可能性もあるのですね。
注文の値段によって約定する価格優先の原則
株取引においては、価格的に好条件の指値注文が優先される「価格優先の原則」というものもあります。
言わば売り注文なら値段の安いものが高いものに優先し、買い注文なら値段の高いものが安いものに優先することとなるのですね。
そして同じ値段の指値注文であれば、先ほど述べたように「時間優先の原則」で時間的に先に出された注文が優先されることとなります。
また、同じ条件となる指値注文と成行注文が同時に出された場合は、成行注文の方が優先されることも頭に入れておきましょう。
取引時間外の注文は時間優先の原則が不適応
基本的な約定の仕組みについてはお分かりいただけましたでしょうか。ただし例外として、取引時間外に出された注文に関してはまたルールが異なってきますので確認しておきましょう。
始値決定までの注文は同時注文とみなされる
取引時間中に注文した場合においては、上記でご紹介した2つの原則によって注文の優先順位は公平となっています。ただし、取引時間外に出された注文に関しては例外となるので注意が必要です。
株式取引では、前場・後場の始値が決定するまでの取引時間外に受け付けた注文については、すべて同時注文とみなされるようになっています。
同時注文には「時間優先の原則」が適用されないため、先着順ということにはならないのですね。
ではそのような場合にどのように約定が決定されるかというと、それについては利用している証券会社が関係してきます。
次の項で詳しく見ていきましょう。
証券会社ごとにルールに則って約定する
時間外に出された同時注文については 、注文単位ではなく”証券会社ごと”を対象としたルールで売買を成立させるようになっています。
その内容は次の通り。
・注文数量の多い証券会社から、少ない証券会社の順番で配分 (同じ値段の注文を発注している証券会社ごとに注文を合計) |
・各証券会社順位に従って1売買単位ずつ配分を行い、 ㅤそれを同時注文の注文全数量が配分されるまで、繰り返して配分 |
・注文数量が同数の証券会社が複数ある場合、 ㅤ最初の注文が早かった証券会社から順に配分 |
このように基本的には注文数の多い証券会社を優先とし、同数となれば先着順といった形で決定されるようになっているのですね。
そのため約定を有利にしたいのであれば、利用者数の多い人気の証券会社を利用するのがおすすめですよ。
内出来が発生した場合の注意点
内出来が発生した場合には、普通に約定した時と違いいくつか注意しておかなくてはならないことがあります。それらについても確認しておきましょう。
手数料に関する注意点
まずは、内出来の際の手数料に関する注意点を解説いたします。
ひとつの約定ごとに手数料は発生する
内出来になった場合でも、通常通り1注文1約定として手数料が発生します。部分約定だったからといって、特別に手数料が割り引かれるといったことはないのですね。
また、残りの約定数を翌日以降に持ち越して注文する場合も、新たな注文とみなされ再度手数料がかかるので注意。
ですが証券会社によっては1日に○○円以下までは手数料無料としているところもあり、内出来により当日と翌日で注文が分かれたほうがお得になるケースも。
それについて詳しくは、利用している証券会社の手数料設定を確認して見てください。
注文訂正には手数料はかからない
内出来して残った株については、注文訂正をしても手数料はかかりません。ただし、注文取消しをすると別個の注文とカウントされて手数料が発生してしまいます。
では、注文訂正ではどのような内容が訂正できるのでしょうか?
注文の訂正は証券会社ごとにルールが異なる
注文訂正でどのような内容が訂正できるかについては、証券会社ごとに異なるルールが定められています。
数量や指値価格、注文期限などが訂正できるところもあれば、可能なのは価格のみで数量は訂正できないところなどとさまざま。
臨機応変にトレードを行うことを考えると注文期限などの細かい要素はともかく、「数量」についてはなるべく変更できる証券会社を選んでおきたいところですね。
まとめ
今回は「内出来」について解説いたしました。
注文バランスが崩れた銘柄でまとまった注文を出すと発生しやすい内出来。時間優先や価格優先といった約定の仕組みが関わってくるため、なるべく有利に約定させられるためにもこうしたルールは覚えてしまうのがおすすめ。
また、普通に約定した場合とは手数料や注文訂正などの注意点があることについても抑えておきましょう!
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