スタグフレーションとは?投資家がリスク回避するために必要な知識とは

経済の動向を示す用語として、インフレ(インフレーション)やデフレ(デフレーション)などを耳にする機会が多いと思います。

中でもとくに注意すべき状況として注目したいのが、スタグフレーションというものです。

株式投資などの資産運用をしている方は経済状況に注視しなければいけませんが、スタグフレーションの兆候が見られたときには適切な対応策が必要になります。

そこでこの記事では、スタグフレーションとはどのような経済状況なのか、個人ができる具体的な対応策などを詳しく紹介します。

資産運用におけるリスク回避の正しい知識を知っておきたい方は必見の内容なので、ぜひ参考にしてください。

この記事を書いた人 ファイナンシャルプランナー 児玉一希
プロフィール・所持資格 日本ファイナンシャル・プランナーズ協会が定めている、ファイナンシャルプランナー技能士の資格を有し、当サイトの監修活動を始め、相場情報のまとめやコラムを寄稿する活動なども行なっている。
 
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目次

スタグフレーションは経済の危機的状況

スタグフレーションとは経済状況を示す用語ですが、具体的にどのような状況なのか確認しておきましょう。

スタグフレーションで景気の停滞と物価の上昇

インフレーションとは物価が暴騰してお金の価値が下がる状況を示し、デフレーションとは物価が暴落してお金の価値が上がる状況を示しています。

どちらも極端になると経済状況としては好ましくないのですが、スタグフレーションはさらに経済状況が悪化することを示します。

スタグフレーション=stagflationとは、スタグネーション=stagnation(停滞)と、インフレーション=inflation(物価の暴騰)を組み合わせた造語です。

つまり、景気が後退し停滞している状況の中で、さらに物価上昇とお金の価値が下がっていくインフレ現象が同時に進んでいる最悪の組み合わせが起こった経済状況を示しています。

スタグフレーションが起きる原因

スタグフレーションが起きる大きな原因の一つとして考えられるのが、一時産品(原油などの資源や米などの農産物)の価格が景気とは関係ない理由で上がってしまうことです。

また、戦争や災害などの影響で需要に対する供給が間に合わなくなると、物価が上がるだけでなく、企業の生産活動にも悪影響を与え、失業率のアップにも繋がる可能性が高くなります。

オイルショックでスタグフレーションが顕在化

最悪の経済状況といわれるスタグフレーションは、過去にも何度か発生しています。

たとえば1970年代に発生したオイルショックでは以下のようにスタグフレーションに陥っています。

  1. 原油価格が急騰
  2. 原料コストが上がり企業が生産活動を抑制
  3. 賃下げや失業者が続出して景気が後退
  4. 供給が需要に追いつかず物価が上昇
  5. スタグフレーションへ

スタグフレーションに陥ると経済状況を回復させるのが難しいため、経済の動向をしっかり把握しておく必要があります。

日本や世界のスタグフレーションリスク

日本や世界で、今後スタグフレーションが起こる可能性について確認してみましょう。

物価の上昇とオリンピック後の反動がある日本

一部商品を除き、2019年10月から消費税が10%になりましたが、さまざまな物価が上昇しているのに収入が増えず、家計が厳しいと実感している方も多いのではないでしょうか。

軽減税率が適用されている食品類も、価格は据え置きでも内容量が少なくなるなど、実質的な値上げに踏み切る事例も増えています。

このような状況の中で、2020年に開催される東京オリンピックでは膨大な経済効果があり、しばらく冷え込んでいた日本の経済状況も大きく上向きになるのではないかと期待する声があります。

しかしその一方で、経済効果の反動でオリンピック後は景気が後退することも懸念されています。

景気の鈍化が続く中国経済

急成長を遂げていた中国経済も景気の鈍化が続いており、スタグフレーションリスクが懸念されています。

特に鉱工業生産や小売売上高の分野については2019年10月はプラスでしたが、9月頃から鈍化しており、主要な経済指標も2016年と比較すると下がっている状況です。

また、豚コレラや新型肺炎などの影響により、経済活動がさらに低迷する可能性が強まっています

スタグフレーションが進行中の可能性がある韓国

韓国では消費者物価上昇率0%台が続いており、スタグフレーションが現在進行形で起こっているのではないかとされています。

ですが、消費者物価統計のとりかたにも問題があるとの見方もあります。

最低賃金引き上げにより、賃金は上昇しても税金や年金の支払い分が増えて、可処分所得が減ったという現象が起こってしまいました。

これが影響し、バス・タクシーの運賃値上げだけでなく、喫茶店などの飲食店など食品の値上げが続いている状況です。

スタグフレーション回避で国が行える対応

経済状況を悪化させるスタグフレーションを回避するために、国がどんな政策を行うべきなのか確認してみましょう。

生産性を上げて供給を増やす

需要 > 供給】の状態になることがスタグフレーションが起こる一因になることから、生産性を上げて供給を増やす対策が求められます。

しかし、供給を増やそうとしてもそう簡単にうまくいかないもので、技術力を高める努力や規制緩和、設備投資の増額などさまざまな施策が必要になります。

また、供給を増やしてもすぐにスタグフレーションを回避できるわけではなく、対策の効果が顕著になるまでには一定の時間がかかります

所得政策は問題を抱えやすい

過去にもスタグフレーションを回避する対策として実施されていたのが、所得政策です。

賃金の上昇率を生産性上昇率の範囲内に収めるように、政府主導で行う所得政策を1970年代に各国で取り組んでいましたが、なかなか良い成果を出せませんでした。

一時的に良い結果が見られても、資源配分の歪みを増幅させて失敗する可能性が高いため、問題点をいかにうまく解決するかが大事なポイントになります。

供給源が偏った資源や商品への依存度を下げる

オイルショックにより起こったスタグフレーションは、原油不足や価格の高騰が生産力や供給能力の低下と物価上昇を招きました。

このように、供給源が偏った資源や商品に依存したままでは、またスタグフレーションを引き起こす危険性が高まってしまいます。

とくに日本は輸入に依存している資源や原材料が多いため、何らかの原因で供給がストップされると、すぐに生産能力の低下を引き起こす原因になりかねません。

未然にスタグフレーションを防ぐ対策として、たとえば原油に変わる新しいエネルギーを開発したり、安定供給を目指すなどを国が率先して取り組むことが挙げられます。

しかし、すぐに実現させるのは難しい面もあります。

個人でできるスタグネーション向け4つの対策

スタグフレーションが発生すると政府だけに頼っていられないことも予想されますので、個人で実践できる対策についても確認しておきましょう。

スキルを身につけ職業能力を高める

スタグフレーションになるとリストラや倒産などに伴い失業者があふれてしまい、なかなか再就職も決まらない人が多くなることが予想されます。

ですので、万が一に備えて新しいスキルを身につけておくことをおすすめします。

現在の仕事で培ってきたスキルだけで満足するのではなく、あらゆる職種でも活用できるスキルを積極的に習得することで、自分自身の市場価値を高めることができます。

新しい知識を習得するためには、お金と時間をかけて自分自身にも「投資」をすることが大切です。

どんな会社でも即戦力として活躍できるように目指しましょう。

株など投資で給与以外の収入源を確保する

スタグフレーションになると、給与やボーナスがカットされて安定した収入を得られなくなることも考えられますので、給与所得以外の収入源を確保することも検討しておきましょう。

個人で株式投資などを行う場合は、景気に左右されない銘柄を選ぶことをおすすめします。

一例としては、電気やガスなどのインフラ関係や医薬品関連の銘柄は景気に左右されにくいといわれています。

また、投資リスクを減らすためには、株式投資以外にも不動産や債券、金、iDeCo…などのさまざまな方法に分散投資することをおすすめします。

効果が確実な家計の節約

物価が上がるほど家計にも大きな影響を与えるため、無理なく実践できる節約を意識した生活を心がけましょう。

食費を節約するには、特売を上手に活用して不必要なものを買い込まないようにしたり、外食を控えるようにするのが手軽でおすすめです。

また、電気やガス、水道についてもムダ使いに気をつけて過ごし、余分な出費を控えることを意識するのも大切です。

また、原油価格が上がるとガソリン代もどんどん上がるので、不要不急の外出を避けてあまり遠出をしないように過ごしましょう。

ローンを組むなら固定金利にする

住宅ローンなどの長期ローンを組む場合には、固定金利を選ぶことをおすすめします。

すでに金利が低い段階では、変動金利を選択してもインフレのリスクヘッジになはりません

インフレにより金利が上がると負担が増えていくことを考えると、固定金利にしておいた方が安心です。

今からスタグフレーションに備えよう

「国内GDPは前期と比べて○%減」などと景気の先行きが不透明なニュースを目にすると、「ひょっとしたらスタグフレーションが起こるのではないか?」と不安に感じる方も多いと思います。

今は好景気で経済状況が潤っている!と胸を張っていられるのは世界各国を探してもほとんどない状況なので、いつ何が起こっても冷静に行動できるように準備をしておくことが大切です。

個人でできる対策としては、自分自身への投資を行いスキルアップを目指すことや、給与以外の収入源を確保するために投資をすること、家計の節約などです。

非常に重要なことなので、ぜひこれらの対策を心がけて、もしもの時に備えておきましょう。

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