会社の株式に投資をしようと思ったら、まずはその会社がどれくらい儲かっているかどうかを調べますよね。そして、会社がどれくらい儲かっているかをみるためには、企業の収益性を確認しなければなりません。
企業の収益性を確認するために最もよく用いられている指標が「ROE:Return on Equity(自己資本利益率)」です。昨今では、ROEが重要視されるようになっており、実際企業もROEを改善しようと努力しています。
この記事では、ROEとそれと関連の深い収益性指標について簡単に説明します。
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この記事を書いた人
ファイナンシャルプランナー
児玉一希
プロフィール・所持資格
日本ファイナンシャル・プランナーズ協会が定めている、ファイナンシャルプランナー技能士の資格を有し、当サイトの監修活動を始め、相場情報のまとめやコラムを寄稿する活動なども行なっている。
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ROEとは?
ROEは会社が自己資本をどれだけ有効に活用して利益をあげているかを示す指標です。経営の効率性を示す指標として、日本において広く用いられています。以下では、まずROEの基本についてわかりやすく説明していきます。
ROEの正式名称と読み方とは?
ROEはReturn on Equityの略で、日本語では広く「自己資本利益率」と呼ばれています。一般に「アール・オー・イー」と呼ばれているものです。ROEは、企業の自己資本(株主資本)に対する当期純利益の割合を意味する指標です。主に、収益性分析で用いられる株価指標の1つです。
自己資本とは会社の所有者である株主の出資を示す概念であり、出資者から調達した「資本金」・「資本剰余金」・「利益剰余金」・「自己株式」、および「評価・換算差額」から構成されます。
ROEをみれば、「ある企業が一年間の企業を通じて、株主の投資額に対して、どれだけ効率的に利益を獲得することができたか」がわかります。ROEは、2006年以前は「株主資本利益率」と言われていたものです。
2006年5月に会社法が制定され、その影響を受けて会計基準が改定された際に、株主資本と自己資本は異なるものとして明確に定義されたことから、現在では自己資本利益率と呼ばれるようになりました。
ROEの意味とは何か?
ROEは、企業が投資家から調達した出資金をどれだけ企業活動を効率的に行うことで利益につなげることができたかを判断するために用いられる指標です。ROEは投資家にとっては非常に重要な指標であると考えられています。
その理由は、ROEがどれだけ投資家から得たお金を効率的に使って利益をあげることができたかを示すものだからです。
ROEが高いほど株主資本を効率よく使い、利益を上げて能力の高い経営がなされていることがわかります。逆に、ROEがあまりにも低い企業は、資金をうまく使えていないわけですから、経営が下手ということがわかります。
結果として、ROEの高い低いは経営者がどれだけ会社を上手く運営しているかを示す指標として活用されています。投資家に人気のヤフーファイナンスにもROEのランキングが表示されることからも、投資家から注目される指標と言えるでしょう。
ROEから分かること
ROEは、会社が自己資本をどれだけ有効に活用して利益をあげているかを示す指標であることを説明してきました。ROEをみれば「経営の効率性」がひと目でわかります。以下では、ROEが高い企業と低い企業の意味をわかりやすく説明していきます。
ROEが高い企業とは?
ROEが高い企業は少ない資金で効率的に利益をあげている企業です。そのため、株主から調達した資金を効率的に使って会社を運営している会社ということができます。
ROEは、純利益が多くなれば多くなるほど指数も向上することから、投資家から集めた株主資本を上手に活用できていることになり、ROEが高く推移している企業は高成長を遂げているということができます。
ROEが低い企業とは?
ROEが低い企業は株主から調達した資金を上手く使えていない企業です。そのため、それは経営が下手ということを意味しており、投資家にとって魅力的な会社ではないということを意味しています。
なぜなら、ROEは株主に帰属する配当可能利益の源泉となるものであり、配当能力を測定する指標だからです。
企業が株主の投資という期待にどこまで利益成長で応えているかを示す指標であるROEが低いということは、投資家にとって魅力がない企業ということになるので、企業にとっては株式や社債発行による資金調達が困難となる可能性があります。
ROEの目安とは?
2012年12月に自民党政権が復活し、日本経済の復活に向けて企業の競争力を高めるために、コーポレート・ガバナンスを高める構想がスタートしました。コーポレート・ガバナンスを高めることによって経営者をきちんと統治し、それによって日本企業のROEを向上されることが目指されました。
ROEを向上させ、収益力を向上させることは雇用の拡大と企業価値の向上による株主価値の向上にもつながると考えられています。
こうした背景から、日本においては2014年にROEを巡る議論がなされ、経済産業省の提唱によって、伊藤レポートと呼ばれる報告書が出されました。その報告書の中で、日本企業が目指すべきROE水準は8%以上と言われています。
この報告書によって、これまでは、ROEの目指すべき水準に対して明確な数値が与えられていなかったところに、具体的な数値と根拠が示されました。その結果、ROEが10~20%程度の水準が優良企業の目安となっています。
例えば、日本の代表的な会社であるソニーは4.7%、トヨタ自動車は13.4%、ソフトバンクは23.69%となっています(すべて2018年度)。
ROEの平均とは?
ROEは業種によって平均の数値がかなり異なっています。例えば、建築業と石油・石油石炭業界・空運業・不動産業・サービス業が高い傾向にあります。
製品日本経済新聞の2017年の記事によれば、2016年度の日本の上場企業のROEは8.3%であり、3年ぶりに上昇したことが示されています。
日本企業はROEの改善を求められており、海外の会社のROEと比較すると8.3%という数値は決して高い数値とは言えません。
ROEの計算方法について
上では、ROEの意味について説明した後、ROEが高い業界と上場企業の平均的なROEを紹介してきました。以下では、ROEの具体的な計算方法について紹介していきます。
ROEの計算式とは?
ROEの計算式は基本的に以下のようになります。
・計算式:ROE(%)=当期純利益÷自己資本×100
・計算例:ROE(%): 8%=380億円(当期純利益)÷(4,750億円(自己資本))×100
ここで言われている自己資本とは、株主からの出資と配当されずに会社に留保された利益のことです。そのため、自己資本は「資本金」「資本剰余金」「利益剰余金」「自己株式」などに分類することができます。さらに、次の式によってもROEを求めることができます。
・計算式:ROE(%)=EPS(一株当たり純利益)÷BPS(一株当たり純利益)×100
※1:1株あたりの利益(EPS)=当期純利益÷発行済み株式数
※2:1株あたりの株主資本(BPS)=株主資本÷発行済み株式数
EPSとは、1株あたり利益額で収益性をみる指標です。当期純利益を発行済の株式数で割ることによって求めることができます。さらに、BPSは、1株あたりの株主資本を意味しています。
ROEの計算式の分解方法
ROEは上で説明したように求めることができますが、ROEを向上させるための方法がなかなか見えてきません。そこで、ROEを操作可能とするために、次の式のように分解します。
・ROE = 売上高純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ」
ROEをこのように分解することによって、ROEを向上させるためには何をするべきかがわかるようになります。つまり、ROEをこのように分解することによって、ROEを上げるためには、売上高当期利益率、総資産回転率、あるいは財務レバレッジを向上させる必要があることがわかります。
ROEの活用方法
上ではROEの教科書的な説明をしてきましたが、ROEは実際に経営に活かしていかなければなりません。そこで以下では、ROEの活用方法について簡単に説明していきます。
ROE・PER・PBRの関係とは?
ROEはPER(株価収益率)・PBR(株価純資産倍率)と密接な関係を持っています。ROE・PER・PBRの関係は次の式のようにあらわすことができます。
・PBR=ROE×PER
※1:PER(株価収益率)=時価総額÷純利益
※2:PBR(株価純資産倍率)=株価÷一株当たりの純資産
PERは株価収益率と呼ばれ、株価が「1株当たりの当期純利益(単に1株当たり利益、1株益ともいう)」の何倍になっているかを示す指標です。PERが10倍であると算出されれば、純利益の10倍まで買われていることになるので、投資した資金の回収までに10年かかることがわかります。一般に、PERが高い企業は利益成長の水準が高いと考えられることから、高く買われる傾向にあります。
一方、PBRは株価純資産倍率と呼ばれ、現在の株価がその企業の純資産に対してどれくらい高い、あるいは安いかを示す指標となっています。PBRの数値は、低いほうが割安と判断されます。1株当たり純資産は、いわば企業が解散する際の企業の価値と言えることから、PBRが1倍であるということは株価とこの解散する際の企業の価値が同じ水準と判断することができます。
この式をみればわかるように、PBRが低い結果になるということは、企業の収益性(ROE)も同時に低くなっていることが示されるので注意が必要です。ただし、それぞれの指標は何倍だから良いという絶対的水準があるわけではなく、業種によって水準も異なるので、同業種間・経営内容が似ている企業・ライバル企業などと比較することが大切となります。
ROEの注意点とは?
ROEを経営指標とする最大の問題点は、株主に重点を置いた経営となり短期的な利益の追求に走りやすいということです。ROEを高めるためには、大きく分けて、利益を増やすことと、自己資本を減らす必要があります。
また、純資産のなかの資本には自己資本と他人資本(借入金)があり、他人資本はいわゆる企業の借金であることから、自己資本と他人資本の割合のバランスをみる必要があります。たとえROEは自己資本に対する利益率を見る指標です。
しかし、会社には銀行や社債などによって資金調達を行った他人資本もあります。他人資本も使って企業は活動を行っているので、それによって経営状態は大きく左右されます。
そのため、ROEを用いて投資判断をする場合には、業種ごとの平均ROEをきちんと調べて、高いROEの銘柄については裏付けをきちんとるようにすることが大切です。
ROEの関連用語とは
ROEは企業の収益性をみるための重要な指標として広く受け入れられています。しかし、結局のところ、ROEだけをみて企業経営の巧拙を判断することはできません。
様々な収益性を判断するための指標と組み合わせて判断することが大切です。以下では、ROEと関連性の深い指標を紹介していきます。
ROEの関連用語①「ROA(総資産利益率)」
ROEと関連の深い指標に「ROA :Return On Assets(総資産利益率)」があります。ROAとは、企業が総資本の利用によってどれだけの利益をあげることができたかを示す指標です。
総資本には自己資本だけではなく他人資本も含まれています。この点がROEとの違いです。ROEは「ROE=当期純利益÷総資産×100」によって計算することができます。
ROEの関連用語②「ROI(投資利益率)」
もう一つ、ROEと関連の深い指標に「ROI:Return on Investment(投資利益率)」があります。ROIとは投下した資金に対して得られた利益の割合を示す指標です。ROIは企業の収益性を見る基本的な指標の1つで、通常、資金が効率的に運用されているかどうかを判断するための指標として活用されています。
ROIは次の計算式によって求めることができます。「ROI=利益÷資本×100」。ここで、利益の部分には経常利益・営業利益・当期純利益などを目的に応じて自由に使うことができます。
資本には平均総資産を当てはめます。この計算式が示しているように、ROIを向上させるためには資本を減少させるか、利益を増大させなければなりません。
まとめ
ROEや上で紹介してきたROA・ROIといった指標は企業の収益性をはかるための重要な指標です。そのため、ROEが何を意味しているのかをきちんと理解しておかなければなりません。
ROEをきちんと理解しておけば、投資しようとしている会社の収益性がどの程度あるのかを確認することができます。特にROEは企業の主な収益性をはかる最も重要な指標です。
ただし、ROEは業界・産業・国などによってばらつきがあることから、分析する際にはきちんとそれを考慮して比較することが大切です。単独企業のROEをみるのではなく、他の会社と比較することによってROEは意味を持ちます。その点を十分に理解した上で、株式投資にROEを活用してみて下さいね。
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